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ろう者の特性を生かした職業とは?(実例;イギリスのグラスゴーにあった造船所や、神奈川県厚木市のリサイクル処理場)

聴覚障害者新聞に、こんな記事が載っていた。

「長州五傑の一人である山尾庸三氏がイギリスのグラスゴー
へ造船技術習得のために行った折、
造船所内のろう者が手話でコミュニケーションを取っていた
だけでなく、ろう者でも分け隔てなく働くことのできる環境を
知ったことから、帰国後、明治政府へ

「盲学校と唖学校の二校を創立し、一校毎に男女別々に」

などと記載した建白書を提出。
明治十一年、京都盲亜院が設立されろう教育が始まったが、
明治十三年、ろう教育国際会議で口話法が有効だとする
決議が採択され、日本でも昭和八年に手話が禁止

しかし手話は引き継がれ、脈々と生き続けて現在に至っている。
2006年国連で障害者権利条約が成立し、
日本国内でも批准に向け国内法の整備が進み、
障害者総合支援法に「手話は言語である」と明記されたが、
聴覚障害者が情報を得るのにまだまだ多くの障壁がある。」



〔関連記事〕
京都盲唖院について
『「教育をしない者の罪」 教育に捧げた人生 ―古河太四郎 生誕170年―』
[ 2015-05 -21 19:30 ]





特に、イギリスの造船所の話を聞いて思い出すのが、
『みんなが手話で話した島』(アメリカのヴィンヤード島)と、
函館出身のろう史研究家が話していた、
イギリスの造船所で働いていたろう者の話。

話が被るけれども、イギリスの造船所では当時、
健聴者もろう者も平等の条件で働いていた、という。
今の時代では信じられない話だった。

その造船所では「リベット打ち」という作業が行われていて、
打ち込んだリベットの数が作業員の給料に反映され、
ろう者のほうが給料が多かった、という。
なぜそうなったのかというと、平等な労働条件の中で、
ろう者のほうが労働生産性が高かったからだという。
それには、聴覚障害の長所も関係していたそうである。

ろう史研究家のろう者は面白いことに、
次のように解説していた。

「リベット打ちという作業をする場合、自分が出している
作業音だけでなく、あちこちからその音が聞こえてくる。
つまり、『うるさい』作業環境になる。
それで健聴者は時間が経つと嫌になってきて、
途中で作業を休んでしまう。
けれども、ろう者は耳が聞こえないから、
そんな悪環境でも平気でどんどんリベット打ちを続ける。
イギリスでは給料は打ち込んだリベットの数に応じて
配給されるので、ろう者には給料が高い人もいた、という。
それで事業所にとっても、ろう者はどんどん業績を
上げてくれる人材だったから、ろう者も採用していたのである」


日本にも似たような話がある。
神奈川県厚木市にあるリサイクル処理場でも、
ろう者を集めた職場が作られており、そこも同じようなことを
話していた。
彼らは、騒音が激しい場所でも、全くそれを苦にしない。
コミュニケーションも手話だからだ。
聴覚障害者のそういう長所に目をつけて雇用を進めている
事例もある。


それだけでなく、聴覚障害者には集中力がすごい人がいる。
そのため、間違いがなく正確な作業をする人がいる。

さらに、健聴者は掃除のような単純な仕事を任されると、
すぐサボり出したり、周囲の誰かとおしゃべりを始めて、
ダラダラとやっていたり、場合によっては手が止まってしまう
人もいる。
しかし、聴覚障害者は手が速いだけでなく、
視覚に頼っている分、気づき(観察力)もすごい人がいたりする。
これらも「手話」という、動く言葉を使う人たちの特性だからだ。
だから、「障害」を全てマイナスと決めつけてしまうのも、
場合によっては考えものだろう。

そして手話言語法制定の意義は、こういう面にも関係してくるだろう。




野呂一氏(ろう史研究家)作成 スライド資料より。

山尾庸三の業績2
ネピア造船所
(イギリス・グラスゴー市内)


『山尾庸三は造船技術を習得したかった』
●慶応2(1866)年秋、山尾庸三はグラスゴーへ

◆グラスゴーは産業革命の発祥地

 ◆薩摩藩留学生によるカンパ(16両)のおかげ。


●ロベルト・アンド・サンズ社のネピア造船所で仕事。

 ◆Robert Napier & Sons Shipyard
 (1843年創設、1900年廃業)


●夜間はアンダーソンズ・カレッジで造船技術を学ぶ。



『多くのろう者がなぜ造船所にいたのか?』

マイケル・モス教授(グラスゴー大学、ビジネス史専門)
による解説では、

◆昔は船に打ち込んだリベットの数で給料が決まったため、
皆が必死でたたき続け、造船所内は常に大音響であった。

◆何年も働くと耳が遠くなる人が多く、
造船所内では健常者同士も手話を使っていた。
造船所では聾唖者も十分に仕事ができた。

・「asahi.com MYTOWN山口」の記事から引用
2005/07/08


『みんなが手話で話した島』のヴィンヤード島に似た話だ。

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【追記(参考記事)】(2023827日)

「掃除」の仕事の尊さ

2023 06 20

「掃除」の仕事の尊さ : 蒼穹 -そうきゅう- (exblog.jp)

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聴覚障害者に向いている職業 (案1)ろう者たこ焼き職人

2015 03 30

聴覚障害者に向いている職業 (案1)ろう者たこ焼き職人 : 蒼穹 -そうきゅう- (exblog.jp)

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by bunbun6610 | 2018-06-09 21:41 | 『手話言語法』の制定へ

ある障害者から見た世界


by bunbun6610