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『交響曲第一番』(佐村河内守/著) 10/11(原爆の記憶)

『交響曲第一番』
(佐村河内守/著 2007年10月31日/第1刷発行 講談社/発行所)



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「そして二度と音が聞こえない自身の状況に暗く思いをめぐらせ
始めたとき、ある単純な疑問を発したのです。

――自分では聴くことのできない、自分が作曲した音楽。
では、この作曲とは一体誰のためにあるのか?

そこで初めて

「音楽は他者のために書かれる」

という自明(じめい)の理に気づかされました。
これを認識できたのは、聴けない作曲家の必然です。

また、決定的なのは全聾になったことで、自身の音楽に
自身の血を明確に感じ取れるようになったことでした。

聞こえない耳の奥に聞こえる、鳴りやまない轟音(ごうおん)(耳鳴り)。
それは私が直接聞いたはずのない音。
父と母が、そして歴史が聞いた「原爆の音」。
それを私の血がいま、聞いているのかもしれません。

轟音の厚い壁のはるか先、その奥のずっと奥、深く沈み
こんだ頻闇(しきやみ)の森、冷たい霧に包まれた静寂の地――。

そこに聞こえない私だけが必要とする、私にとっての真実の
音、「闇の音」が棲んでいます。
私はこれからも、その音だけを求め続けるのだと思います。」



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by bunbun6610 | 2014-02-10 18:30 | 佐村河内 守

ある障害者から見た世界


by bunbun6610