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フツーと、人間の多様性

『だいじょうぶ3組』(乙武洋匡/著)

http://www.amazon.co.jp/%E3%81%A0%E3%81%84%E3%81%98%E3%82%87%E3%81%86%E3%81%B63%E7%B5%84-%E4%B9%99%E6%AD%A6-%E6%B4%8B%E5%8C%A1/dp/4062162997


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「『うん、たしかに。
『できないことがあるからヘン』と言うなら、
わたしはピアノも弾けないし、跳び箱だって上手に跳べない。
それにさかあがりだって……。
そうしたら、わたしのカラダだってヘンだってことになる』

『うーん、そうだけどさ、でもやっぱり手足がないって
フツーじゃないじゃん』

『べつにフツーじゃなくてもよくね? 先生は先生で。
てか、何がフツーとかよくわかんないし』

赤尾は、黙って聞いていた。
ときおり、窓際にすわる文乃に目をやったが、
とくに議論に参加する様子はなく、
クラスメイトの意見をただじっと聞いていた。

意見が出尽くしたところで、赤尾が引きとった。

『フツーという言葉の意味、むずかしいね。
さっきの意見だったけど、じゃあ、フツーって何だろう?』

担任から新たに投げかけられた質問に、
子どもたちは必死に考えをめぐらせた。

『ほとんどの場合は、ってことかな』

『みんなが、とか……』

最後は、教授が“らしく”まとめた。

『こう言ったら、わかりやすいんじゃないかな。
たとえばこのクラスにひとりだけ外国人がいたら、
『日本人であること』がフツーになる。
だけど、逆に外国人のなかに日本人がひとりだけいたら、
『外国人であること』がフツーになる。
というか、その場合は『日本人=外国人』だよね』

『そうか、圧倒的に数が多いことが
“フツー”ってことなんだ!』

陽介がさけんだ。
では――と、赤尾が質問を重ねる。

『じゃあ、フツーじゃない人の立場ってどうなるんだろう。
みんなとちがうからヘン。
ひとりだけだからダメ。
そういうことになるのかな?』

この担任の意見に対しては、子どもたちの間から
反論が相次いだ。

『それはおかしいよ。
みんなとちがったって、べつにいいと思う。
その人はその人だもん!』

『その人だって、好きでみんなとちがうふうに
なったわけじゃないから、仕方ないよ』

『いまの話だと、先生のカラダだってちっとも
フツーじゃないってことになるけど、
でも先生は先生だし、全然ダメじゃない』

子どもたちの意見をひとつひとつ深くうなずきながら
聞いていた赤尾は、最後のまとめとして話を始めた。

『障害者という言葉、みんなも聞いたことあるよね。
先生も、そのうちのひとり。
でも、世の中には先生のように手や足に障害がある
人だけじゃなくて、目が見えなかったり、
耳が聞こえなかったり、
いろいろな障害を持った人がいる。
ほかにも、みんなとは感じ方がちがったり、
同じように考えることができなかったり、
“多くの人とはちがう人”がたくさんいるんだ』

文乃は、じっと聞いている。

『障害だけじゃない。
さっき公彦が外国人の話をしたけど、
肌の色がちがうこともあるだろうし、
話す言葉がちがったり、
信じている宗教がちがったり、
人にはいろんなちがいがある。
それが、多くの人とちがっていたときに、
ぼくらはその人のことを『ヘンだ』とか
『フツーじゃない』と言ってバカにしてしまう
ことがあるよね。
それが、どういうことなのか。
今日の授業でみんなが感じたことを、
ワークシートの三番のところに書いてみてほしい』」

by bunbun6610 | 2013-04-06 18:00 | 『だいじょうぶ3組』

ある障害者から見た世界


by bunbun6610