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難聴の接客員を見て

ある居酒屋のランチに出かけました。
そこでおじいさんが店員をやっていました。

よく見ると、おじいさんは両耳に目立たない、
耳穴式補聴器を装用しています。
難聴者で接客をしているのを、初めて見ました。

小さな居酒屋なので、自営業に間違いありません。

調理場には娘さんらしき女性が一人奮闘していました。
そして、8人くらいのお客さんがいっぺんに入ってきました。

難聴の接客員は、お客さんたちにおしぼりとお茶を
出しましたが、おしぼりが足りなかったらしい。
そこでお客さんたちは足りない分を、
自分で店のおしぼりウォーマーから出していきました。

普通、こういうときは

「おしぼりがふたつ足りないので、お願いします」

とか接客員に言うものだろう。
それが、勝手に取っていくものだから、
このお客さんたちは常連で、
接客員が難聴者だと知っていたのだろう。

接客の仕事をしているというのに、
おじいさんに笑顔は全くありません。
おしぼりが足りていなかったことも、
お客さんが勝手に持ち出していくのを
チラッと見てわかったようでしたが、
自分のミスを何とも思っていないようでした。

この光景を見ていて

「自分ももし、このおじいさんの立場だったなら、
同じ態度をとっていただろう」

と思いました。
仕方がないのだと思いました。

でも、本当はそう思うようではいけない、と思う。

お客さんは耳の遠い接客員に言ってもムダだから、
自分でおしぼりを取ってやった、
と思っているだろう。
つまり、親切でしてやっているつもりなのだ。
おじいさんに対して、悪気は全くない。

けれど、本当にこれでいいのだろうか。

私も、自分以外の聴覚障害者のことを知らなかった頃は、
おじいさんのようにしていました。
何につけても「仕方がないのだ」と。

でも、聴覚障害者団体と関わるようになり、
そこでいろいろな聴覚障害者と知り合うようになってからは、
自分の考え方も変わってゆきました。
むしろ「仕方がない」で済ますのは自分が甘いのだと思う。
自分にだって責任はあるのだ、と。
そして我慢するだけではなく、他にもっと良くする方法が
あるのだということを知り、
少しずつ理解を求めようとするようになりました。

しかし、人間社会で孤立したままの難聴者は、
なかなかそうはできないようです。
難聴者は、もっと聴覚障害者の先輩と出会って学び、
自分の障害をオープンにし、理解してもらう姿勢を持ってほしい、
と思う。
しかしいろいろな理由があって、これがなかなか難しいようです。(※)

(※)【参考記事】
当ブログ
『障害イコール恥という感覚』
〔2011-10-22 19:27〕




コロッケさんの下の言葉、いいですよね。

障害を受け入れた時から、
自分の人生が始まると思うんです。


当ブログ
『ものまねタレントのコロッケさんも、難聴(5)』
〔2011-09-30 22:49〕参照。
by bunbun6610 | 2012-10-01 21:23 | 聴覚障害者労働問題・相談

ある障害者から見た世界


by bunbun6610