カテゴリ:NHK大河ドラマ『花燃ゆ』( 11 )

ろう者の「幸せ」とは?(花燃ゆ - 第23話 『夫の告白』)

花燃ゆ - 第23話 『夫の告白』



NHK大河ドラマ
 『花燃ゆ』

http://www.nhk.or.jp/hanamoyu/





文;(声で)
「敏。どうしたん?」

敏三郎;(筆談と身振りで)
「下関に行く」

文;(声で)
「下関・・・何しに?」

敏三郎;(筆談と身振りで)
「奇兵隊に入る。」

文;(声で)
「奇兵隊? 敏が?」

(全員坐って、百合之助が敏三郎の持って来た
手紙を開く)

梅太郎;(声で)
「高杉殿からじゃ」 

(百合之助が手紙を読む)

百合之助;(声で)
「『送られた図面、すばらしく。
その才能、我が隊でも役立ててほしい』と。」

文;(声で)
「どういう事?」


(敏三郎は、自分で描いた地図を出して見せる。)

周囲から;(声で)
「あんた、すごい!」

文;(ほとんど声だけで)
「でも、奇兵隊 入るいうんは、異国と戦うっちゅう
事よ。」

敏三郎;(「やる」の身振りで)
「戦える」

文;(身振りも少し交えているが、ほとんど声だけで)
「でも、大砲の音も、鉄砲の音も聞こえんかったら・・・。」

敏三郎;(身振りで)
「僕は目がいい」

梅太郎;(声で)
「そうは言うてものう・・・。」

(敏三郎は、またも悔しそうにする。
そして、筆談メモに書いて見せる)

文;(敏三郎が書いた筆談文を、声で読む)
「『何の役にも立てんなら、僕は、
どうして生きているんじゃ。』・・・」

百合之助;(身振りと声で)
「わかった。
行って来い。」

(敏三郎は、満面の笑みを見せて喜ぶ)

滝;(身振りと声で)
「いけん!
いけん!
母は許しません!」

(滝は立ち上がって、一人で去る)





聴覚障害者の読者ならこのシーンを見て、
気づいただろう。
『声が支配する世界』というものに、だ。

本当ならば、まず健聴者が敏三郎に
筆談を提供することが必要なのに、
健聴者は誰もしないのだ。

そして声を出せず、耳も聞こえない敏三郎が
筆談と身振りを交えて、一生懸命に
コミュニケーションを取ろうとしているのだ。
かなりの大変さだったろう。

それは、おかしいといえばおかしい。
だが健聴者には、気づかないのだ。

彼らは皆、敏三郎の読話能力等に依存し、
敏三郎にも、もっとわかりやすくなるような
コミュニケーションにするための努力をして
いないのだ。

今でも日常的にある聴覚障害者との
コミュニケーションは、この数百年前にあったと
されるコミュニケーション方法と、
大差ないのである。


次のストーリーも、健聴者ならではの考え方である。



百合之助;
「まだ怒っとるんか。」

滝;
「あの子が戦なんて。
皆様にきっと、ご迷惑をかけます。
望まれとるんは、兵として戦う事ではない。
あくまで、奇兵隊の手伝いじゃ。」

滝;
「でも、あの子は・・・。」

百合之助;
「高杉殿は、耳の事も分かって、それでも、
来いと言うてくれた。
ありがたい事ではないか。
寅と同じ目をしとったな・・・。
役に立ちたいと。」

滝;
「だから、たまらんのです。
もし・・・もし敏まで、先に逝ってしもうたら・・・。
あねな知らせを聞くんは、もう、たくさん。」

百合之助;
「それでも、寅の弟じゃ。
こねな、こまい家に閉じ込めるんが、
敏の幸せかのう・・・。」




多分、当時はこのドラマにある百合之助のようには、
誰も考えていなかっただろう。
やはりテレビドラマだからこその、美談演出だろう。




このストーリーが、どこまでが史実通りなのか
どうかは、わからない。
でも下のような、敏三郎に関する資料がある。


男的充実LIFE
『杉敏三郎生涯と亀太郎の松陰肖像画の秘密
…難聴障害のろう者/大河ドラマ花燃ゆ』

〔2015/1/4〕



私がこの資料を読んで、非常に気になった点は


>「吉田松陰を除く杉家の家族は皆晩年の記録が多く
残っており、生前の事細かな出来事の記録と談話が
あるのですが、末っ子の敏三郎に関しては彼に対する
記述は本当に、本当に少ないです。
たくさんの書籍や歴史書を見ても、杉家の中で敏三郎
の所だけ非常に簡易的で、内容もほぼ同じ。
他の家族の情報量からすれば、敏三郎だけ完全に
抜け落ちていると言っていいほどです。」


という部分だった。

テレビドラマでは、身振りなどで家族とコミュニケーション
が通じていた、敏三郎の様子が描かれていた。

しかし、本当はそうではなかったのかもしれない。
敏三郎よりも軽度の難聴障害であったはずの私でさえ、
無口でほとんどコミュニケーションもできない青年期を
過ごしていたのだから。
これがろう者の場合だと、ほとんどそんな話をよく聞く。
そうすると、このテレビドラマの敏三郎描写は、
かなり疑わしいことになる。

だから、その後に続く下の情報も、確かだと思われるの
である。


>「取材する側も松陰のことばかり聞いて、敏三郎の
ことに関して誰も知りたがらなかった、或いは取材や
研究過程で誰も記録に残そうとしなかったのかも
しれません。」



なぜ、こう書いてあるのか。
これは健聴者が推測し、書いたに違いない。

私から見れば、やはりこれは、敏三郎が周囲の健聴者
とのコミュニケーションに、かなりの不自由を感じていた
からだと思われる。
だからこそ、資料も書けず、敏三郎の分だけ、ほとんど
何も残せなかったのではないだろうか。
つまり「差別的状況があった」のが原因、ということだ。

松陰に愛され、精神的影響を与えたともいわれる敏三郎
のことが、こんなに語られていないのは、それ以外に
考えられないだろう。
それを伝えないこのドラマ『花燃ゆ』は、偽善でさえある。

彼らは、当時にあったはずの「ろう者への差別的状況」
という事実を隠してドラマを仕立て、自分勝手に鑑賞して
楽しんでいるだけなのである。
健聴者の大好きな障害者というアイテムを利用した
「お涙頂戴」パートで、視聴率を稼ぎたいだけなのである。
あれはNHKならではの、テレビお得意の美談演出だろう。

そして


>「ただ、彼に対する記録が少ない最も大きい理由は、
数少ない敏三郎の資料の中にあった、当時の様子を
記した下記一文に集約されます。


自ら聾唖(ろうあ)常人にあらざることを悟りてより以来は
他家に出入りすることなく、常に静座して縫糊(ほうこう)
の業をなし、祖霊祭奠(さいてん)の事をなす
関係者人物略伝 全集・十二


縫糊(ほうこう)というのは、恐らく書物の袋綴じの事で
ページを折りつけて糊付けすることを指しているのでは
ないかと思います。
これでお金を稼いで仕事をしていたのでしょう。
つまり、自分自身が難聴で普通の人とは違うということを
悟って以来、他の家に出入りすることはなく、常に静座
して書物の袋綴じを仕事とし、ご先祖様にお供えなどを
していた、と。
敏三郎は終生嫁は貰わず、明治9年(1876年)に病没
しました。享年32。」




このような締めくくりになるのも、当然と言えば当然だろう。




ここからは、私が本当のことを話したい。
あるろう者(Deaf)講演会でのことである。
そこで外国には、ろう者の兵がいることが
紹介されていた。
そのことに引っ掛けて、講演者は次のように
話していた。

「ろう者も兵隊になれる国は、幸せだろうか?
日本では、なれないよね。
あなたなら、この国をどう思うだろうか?」

これを聴いた、ろう者の聴衆はざわついた。

私は

「確かに、ろう者でも兵隊になれるほうが、
真に自由な社会であって、
その社会で暮らすほうが、ろう者にも幸せ
かもしれない」


と思った。

なかには

「兵隊にならなくて済むんだから、
ろう者は幸せだな」

と思った人もいたかもしれないが。

NHKも脚本家も、このような話を知っていた
可能性があるだろう。
テレビの美談づくりにも、異なる世界での
取材が欠かせないはずだ。





〔関連情報〕


『NHK大河ドラマ『花燃ゆ』 ろう者・杉 敏三郎』
〔2015-01-11 22:03〕




『花燃ゆ - 第9話 『高杉晋作、参上』』
〔2015-03-08 13:30〕




『花燃ゆ - 第15話 『塾を守れ!』』
〔2015-04-12 22:52〕

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by bunbun6610 | 2015-06-10 19:00 | NHK大河ドラマ『花燃ゆ』

永久保存版『二十一回猛士(吉田松陰)』

松下村塾学び館
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永久保存版『二十一回猛士(吉田松陰)』
(株式会社ザ・メディアジョン/発行)
http://www.amazon.co.jp/%E4%BA%8C%E5%8D%81%E4%B8%80%E5%9B%9E%E7%8C%9B%E5%A3%AB-%E5%90%89%E7%94%B0%E6%9D%BE%E9%99%B0-%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA/dp/4862501745
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吉田松陰の『留魂録』の重要性は、当ブログ

『松陰神社(世田谷区若林)』
〔2015-05-17 18:30〕
解説(世田谷線「松陰神社前駅」)
『吉田松陰と世田谷松陰神社』


をお読みいただければ、わかると思う。

これはイエス=キリストとも似ている。
違う点は、イエスは自分で書いた物を
何も残さなかった。
聖書は、預言者や、後に「友」と呼ばれた
弟子たちが書いたからだ。

しかし、松陰は遺書代わりに『留魂録』を書き、
残された友たちへ託した。

その『留魂録』全文が、この本に収められている。



「私の人としての価値は、棺のふたが閉められて、
初めて評価されるべきである」(第3章)


「一度敗北したからといって、くじけるようでは
勇士とはいえない。
どうか頼む。本当に頼むぞ。」(第13章)



また、テレビドラマではあまり目立たない存在だが、
松陰の愛した弟・敏三郎の写真も収められている。
それはテレビドラマではまだ見たこともない、
刀を持っているポーズなのだ。
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by bunbun6610 | 2015-05-17 18:45 | NHK大河ドラマ『花燃ゆ』

松陰神社(世田谷区若林)

松陰神社
(東京都世田谷区)



〔関連情報〕

NHK大河ドラマ
 『花燃ゆ』

http://www.nhk.or.jp/hanamoyu/





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解説(世田谷線「松陰神社前駅」)
『吉田松陰と世田谷松陰神社』



長州藩の志士吉田松陰が幕府の弾圧「安政の大獄」に連座し、
江戸伝馬町獄で処刑されたのは、安政六年(1859)十月二七
日のことでした。

松陰は死に際し、

【身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも、留め置かまし大和魂】

と詠みました。
自分の肉体は亡んでも、志だけはこの世に留めておくのだという
決意を込め、三十歳の若さで散ったのです。

松陰の志を継いだ高杉晋作や久坂玄瑞等の門下生たちは、
尊皇攘夷を唱え、ついに二百数十年間続いた幕府を倒し、
維新の大業を成し遂げました。

松陰の遺骸は最初、千住小塚原に罪人として埋められましたが、
文久三年(1863)一月、高杉ら門下生の手で、長州藩の所有地
だったここ世田谷若林に丁重に改葬され、その後明治十五年
(1882)、松陰神社が建立され現在にいたっています。



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大鳥居
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吉田松陰先生像(大熊氏廣作〔鋳造:平成25年 ブロンズ〕)
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松下村塾
(雨戸開放は、土日祝日  午前9時~午後4時半)
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松下村塾(内部)
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松下村塾(内部)
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吉田松陰先生像(松下村塾敷地)
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松陰先生墓(吉田松陰先生他烈士墓所)
歴史上の有名な人物のお墓というのは、
それだけ大きさや造りが立派なものが多いが、
松陰先生のお墓は他と変わらない。
ただ、真ん中にある。
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解説(松陰神社)
『吉田松陰先生他烈士墓所』



文久三年(1863)正月。高杉晋作、伊藤博文、山尾庸三、白井小助、
赤根武人等は、松陰先生の亡骸を千住小塚原回向院よりこの世田谷
若林の大夫山の楓の木の下に改葬し、先生の御霊の安住の所とした。

同時に小林民部、頼三樹三郎も同じく回向院より改葬。

その数日後、来原良蔵の墓を芝青松寺から改葬。

同年11月、福原乙之進を埋葬した。

禁門の変後の、長州征伐の際に幕府によって墓は破壊されたが、
木戸孝允等の手により明治元年(1868)に松陰先生以下の墓を
修復し、更に綿貫治良助を埋葬、中谷正亮を芝青松寺より改葬、
長州藩邸没収事件関係者の慰霊碑(井上新一郎建立)を建てた。

その後、墓所修復の話を聞いた徳川氏から先生墓所前の石燈籠と
墓域内の水盤が、謝罪の意を込めて寄進された。

明治8年、来原良蔵妻和田春子を埋葬。

明治37年、桂太郎が長州藩第四大隊招魂碑を建立。

明治42年、遺言により野村靖を埋葬。

明治44年、野村靖夫人野村花子を埋葬。

昭和33年松陰先生100年祭にあたり松陰墓域の柵を修復した。



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境内の石燈籠(32基)
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絵馬「志」
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御社殿
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by bunbun6610 | 2015-05-17 18:30 | NHK大河ドラマ『花燃ゆ』

花燃ゆ - 第18話 『竜馬! 登場』

花燃ゆ - 第18話 『竜馬! 登場』



NHK大河ドラマ
 『花燃ゆ』

http://www.nhk.or.jp/hanamoyu/



花燃ゆ 白熱教室
第21回 友に綴った最後のメッセージ!『留魂録』





〔参考情報〕

日本の歴史をわかりやすく解説
『安政の大獄とは?』
『吉田松陰とは?』





杉 百合之助;
「春 夏 秋 冬。
すべて過ごして、寅次郎は悔いなく逝った
んじゃろう。」





寺島忠三郎;
「君の志は、何ですか?
(松陰)先生と食う飯は、いっつも、うまかった。」

品川弥二郎;
「いっつも、わしらの事を、友と。」

入江九一;
「草莽崛起(そうもうくつき)。
事をなす者は、今後、名もなき者の中から出てくる。
身分も位も関わりない。
奮励努力した者が必ず、志を成し遂げる。
じゃから、共に励もう。
そう、最後の手紙に・・・。」





坂本竜馬;
「もし・・・。
もし、おまん(文)の兄上(松陰)に会えたなら、
聞きたいことがあったのう。

フレーヘードゆうて、何じゃ?
兄上が書いた文にあったそうじゃき。
『フレーヘード。声高く叫ばねば』と。
異国の言葉で『自由』。
つまり、何物にも、とらわれない。

よう分からんけんど、まっこと、えいもんに思える。
この堅っ苦しい国のどこにあったろう。
きっと、はるか海の向こう、天の向こうにかぁらん。

おまんは、さっき

『兄上は消えた。
おらんくなった』

と言うたけんど、自由になった。
そうは思えんかや?

兄上は、今、フレーヘードじゃき。

それに、もう、おまんらあのもんだけやない。
長州だけのもんでもない。
吉田松陰は、みんなをつなぐ。
この国の志ある者みんなを。

死してなお、生き続ける。
それが吉田松陰。
まっこと、男の中の男。

わしも、やるき。
何物にもとらわれん。
我がなす事は、我のみぞ知る。

フレーヘードじゃき。」





久坂玄瑞;
「文。
俺は・・・種にならんと。
一粒の籾(もみ)として、次の種にならんと
いけん。」

文;
「もし、同志の中で、私の心を継いでくれる
人がいたら、その実は、空ではない。」

寅次郎(回想);
「どうか、一粒の籾として、次の春の種と
なれますよう。」

玄瑞;
「そうじゃ。先生が残された。
俺たちは、ここ(松下村塾)で先生にまかれた
種じゃ。
単なる籾殻か、米粒であるかは、これから
何をなすかで決まる。」






NHKのテレビドラマはさすが、
誰もが感動してしまうようにつくってある。

昭和時代の義務教育においても、
吉田松陰のことは、名前と「松下村塾」の
ことぐらいしか、教わらなかったと思う。

(それは、私が難聴だったせいで、
授業の話が聞こえなかったせいかも
しれないが)

このドラマの物語は、キリストの12人の弟子、
十二使徒の話を借りてつくったシナリオなの
かもしれない。
それほど共通点のある物語展開だ。



薩摩藩と長州藩は当時、犬猿の仲だったと
言われる。

第一次長州征伐の時は、薩摩藩・西郷隆盛が
幕府軍の参謀をつとめたらしい。
その西郷を長州藩の攘夷派へ傾かせたのは、
薩摩や長州の人でもない、幕府の勝海舟や、
土佐藩の坂本竜馬の影響があったことは、
司馬遼太郎の著書『竜馬がゆく』などでもわかる。
だから

(薩長同盟が成立したのは)
「本当に、利害関係だけだったのかな?」

と、ちょっと分からなく思う。

武士が、この時代から既に政治家と同じように、
利害関係だけで動いていたのだったら、
歴史を学んでも何も感動しない。
テレビがつくった部分もある、ということもありえるが。


維新の志士たち
『薩長同盟』



『薩長同盟の理由
~なぜ薩摩藩と長州藩が手を結んだのか
/西郷隆盛・桂小五郎・坂本竜馬~』

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by bunbun6610 | 2015-05-04 13:25 | NHK大河ドラマ『花燃ゆ』

花燃ゆ - 第17話 『松陰、最期の言葉』

花燃ゆ - 第17話 『松陰、最期の言葉』



NHK大河ドラマ
 『花燃ゆ』

http://www.nhk.or.jp/hanamoyu/



花燃ゆ 白熱教室
第21回 友に綴った最後のメッセージ!『留魂録』





〔参考情報〕

日本の歴史をわかりやすく解説
『安政の大獄とは?』
『吉田松陰とは?』



松陰神社
(東京都世田谷区)





安政6年(1859)10月26日
前原一誠が小田村伊之助に『伏見要駕策』を
漏らしたために、寅次郎は江戸の伝馬町牢に
入れられていた。
入江や野村も、岩倉獄に入れられていた。

高杉は江戸の牢に入れられている寅次郎に、
硯を届けた。
これで、友たちへの「最期の言葉」を、寅次郎が書く。
それが『留魂録(りゅうこんろく)』という文書だった。
寅次郎の、最期の言葉だ。


7月9日

梅田雲浜(うんぴん)と密会した目的、理由、
及び、京の御所にて、ご公儀を批判する落とし文が
あったことについて、寅次郎を取り調べる。

この時に、寅次郎は「死罪に当たる罪を犯している
ことを告白した。
それが、ご公儀には引っかかったが、それは寅次郎
が井伊大老をおびき寄せる作戦だった。

引っかかったご公儀は、その罪について知りたがった。
そこで寅次郎は


寅次郎;
「ご老中、間部(まなべ)様を京にて待ち伏せ、
死を覚悟して、おいさめしようとした事でございます」

ご公儀;(びっくりして騒ぎ出す)
「なんと! 間部様を!?
待ち伏せて・・・おいさめ?」

寅次郎;
「いかにも。」

ご公儀;
「おいさめし、ご老中が聞く耳を持たなかったら、
どうするつもりであったのだ!?
刃(やいば)を向けるつもりであったのか!」

寅次郎;
「ふっ。
そこまでは考えておりませなんだ。」





その話を家臣から聞いた井伊は、
寅次郎をさらに厳しく取り調べることを命じる。



10月5日

寅次郎への取り調べが再び行われた。
奥の部屋に姿を隠した井伊がいた。


ご公儀;
「重ねて尋ねる。
その方、ご老中・間部様と刺し違えようとした
のではないか!」

寅次郎;
「刺し違えるなど申した覚えはございませぬ!
おいさめしようとしただけでございます!」

ご公儀;
「ご老中をおいさめしようなどと、そもそも、
ご公儀に対して不敬とは思わぬか!」

寅次郎;
「なれば、天子様のお許しも得ず、メリケンとの
条約を結んだ井伊様こそ、不敬の至りでござる!」

ご公儀;(激怒して)
「貴様、何を申すか!」
「無礼であろう!」

井伊;
「控えよ!」

ご公儀;(静まり)
「申してみよ」

寅次郎;
「徳川家が200年以上の長きにわたり、
この日本国を太平に保たれてきたは、
公方(くぼう)様が徳をもって治められてきた
からに相違なく。
しかし今、幕府は、この国の未来を憂えて
立ち上がった者たちを、次々に捕らえ、
拷問し処刑している。
徳ではなく、力で政を押しつけんとする
井伊大老に、この国の未来を託す事が
できましょうや!」

ご公儀(石谷);
「それ以上申せば、ただでは済まさんぞ!」

寅次郎;
「己の命など!」

寅次郎;
「若き日、私は日本国中、あらゆる土地を
歩き回りました。
どの地にも人がいて、暮らしがあり、皆、
己の幸せを信じて、懸命に生きていた。
その営みを脅かすものがあるならば、
異国であろうとご公儀であろうと、
私は戦いを挑む覚悟にございます!」

井伊;
「吉田寅次郎。」

(井伊が寅次郎の前まで出てきて、姿を見せる)

井伊;
「ならば言おう。
国を混乱に陥れているのは、お前たちの方では
ないか。」

寅次郎;
「我らはただ、我らの思う一歩を踏み出し、
国を救いたいと思うておるのみ。」

井伊;
「その一歩とは、攘夷か?」

寅次郎;
「異国の大筒に脅され国を開いては、
いずれ日本国は、異国の思うがままに
されてしまいます。」

井伊;
「なればこそ、国は強くならねばならん。
異国に国を開き、異国の手を借りてでも。」

寅次郎;
「草莽(そうもう)の声に耳をお傾け下され!」

井伊;
「秩序を欠いては、国は国でなくなる。」

寅次郎;
「もはや、この国は、ただ一握りの者たちでは
持ちこたえられませぬ!
万人が力を尽くし、守らねば。
徳をなくした政の果ては亡国にございます。」

井伊;
「許さぬ。」

寅次郎;(不敵に微笑み)
「もとより。
命など惜しんではおりませぬ。」

ご公儀;
「引っ立てい!」

獄吏たち;
「はっ。」

獄吏たち;
「立て。
こっちだ。」

(寅次郎は井伊をずっと睨んで、
引っ立てられていった。
井伊の表情には屈辱感がにじみ出ていた)



10月27日

寅次郎は、万が一のために、『留魂録』を2部作成した。
そのうちの一部は、同じ獄の囚人・沼崎吉五郎に

「長州の者に渡してほしい」

と頼んだ。



(一方、萩の村塾で)

前原;
「時々、考えておったんです。
17の時、馬から落ちておらんかったら、
私はどのような道を歩んでおったんじゃろうかと。
じゃが、今日、分かった。
つまずきも苦しみも、皆、己じゃ。
じゃからこそ、先生と巡り会い、こうして、
皆とも出会えた。
ただ言葉を交わし、顔を見合わせるだけの事が、
これほど力になるとは。」

文;
「前原さん・・・。」

前原;
「できれば、これからも皆さんと共に。」



10月27日

寅次郎、江戸で処刑される。
しかし、井伊大老の前で、思う存分に語った
寅次郎には、もう何の悔いも迷いもなかった。



寅次郎;
「今私は、死を前にして、心安らかです。
今更、誰を恨もうという気もありません。

それは、命について、こう悟ったからです。
春には種をまき、夏に苗を植え、秋に実り、
冬には蓄える。

人にも、同じように四季があります。

人の命とは、歳月の長さではない。
10歳で死んでいく者は10歳の中に。

20歳で死んでいく者は、20歳の中に。

それぞれ春夏秋冬があり、実を結んでいる。

私は30歳ですが、収穫の時を迎えたと
思っております。

もし、同志の中で、私の心を継いでくれる人が
いたら、私の実は空ではない。
どうか、一粒の籾(もみ)として、次の春の種
となれますよう。」


「井伊直弼(いい なおすけ)による安政の大獄は、
吉田寅次郎の処刑をもって、幕が引かれる事と
なった。(終)」


「松陰の最期は堂々たる態度で、幕府の役人も
感嘆したといいます。
死ぬ直前まで、家族や友人、そして国を案じて
いた松陰。
その志は多くの志士たちに受け継がれ、
維新の原動力となるのです。」




家族に残した『永訣(えいけつ)の書』には

「親思ふ こころにまさる親ごころ
けふの音づれ
何ときくらん」
(寅次郎の、故郷で自分の帰りを待つ両親を思いやる歌)



新約聖書の、ある話を思い出す物語だった。
http://www.rikkyo.ac.jp/aboutus/philosophy/spirit/chapel/chaplain/2006/04/0417.html

なぜ、こんなことができるのかと思う。

本当に「信じる」だけで、ここまでできるか?
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by bunbun6610 | 2015-04-27 18:30 | NHK大河ドラマ『花燃ゆ』

花燃ゆ - 第16話 『最後の食卓』

花燃ゆ - 第16話 『最後の食卓』



NHK大河ドラマ
 『花燃ゆ』

http://www.nhk.or.jp/hanamoyu/






〔参考情報〕

日本の歴史をわかりやすく解説
『安政の大獄とは?』
『吉田松陰とは?』




百合之助;
「標(しるべ)やったんじゃ。」

亀;
「標?」

百合之助;
「文にとって寅次郎は、道を照らす掛けがえのない
明かりじゃった。」

亀;
「塾のお世話も賄いも、文さん、それは楽しそう
じゃったもんねぇ。」

百合之助;
「今、文は何より、己のよりどころを見失うとるん
かもしれんな。」





標。
道を照らす、掛けがえのない明かり。
それが、光のことではないだろうか。
証しではないだろうか。

文が寅兄に


「ならば、証しを見せてつかぁさい!」

『花燃ゆ - 第5話 『志の果て』』
〔2015-02-08 10:25〕


と叫び、求めていたものではなかったか。
それがいつの間に、すぐそこにあったではないか。

それを思えば、松下村塾は教会にも似ている。

聖書の中にも、似たようなことが記されている。
神の栄光を見たいと、しきりに民が神に求めていた。
それに対し

「私の栄光は、それで十分である」

と、むしろ民に満足させられない部分があった。
そういう、目立たない、目には見えない何か
なのだと思う。
だから寅次郎は

「花が・・・、花の香りがする・・・」

と、しきりに言っていたのではないか。

高須は

「その花は、高いところで咲いているので、
隠れて見えない。
けれども、香りを感じることはできる」

と語っている。

あの物語には、そういう意味があるように思う。
この物語は、極めて聖書的だ。




江戸奉公所から召喚状が来たことを知らされた
寅次郎は、自分の意見をぶつけるチャンスと考え、
進んで受け入れた。


百合之助;
(文に)「お前の叫びごときで揺らぐ兄ではない。
寅次郎はとうに覚悟を決めておる。
この上、お前が背負うことではない。」

文;
「ですが・・・。」

百合之助;
「お前は、兄ではない!
我らは、我らを生きねばならん。
たとえ、寅次郎をなくしたとしても。」







梅太郎;
「できんと言うた兄を恨むか?」

文;
(「いいえ」と、首を横に振る)

梅太郎;
「己を偽り、思うところを語れん寅など、
それはもう寅ではない。」







高須 久子;
「至誠 而 不動 者 未 之有也
二十一回猛士」
(至誠にして動かざるは、いまだ、これ、あらざるなり
孟子)

至誠を尽くせば、人は必ず動く。
変わることができる。

あのお方(寅次郎)は、何も揺らいでいないのです。
獄にあっても、家にあっても、あの人の魂は、何も。」

文;
「そのために、身を滅ぼす事になっても?」

高須;
「誰も、あの方を滅ぼす事なんて、できませんよ。
己の志を、江戸のほかならぬ、ご公儀の面前で、
思いの丈、述べることができるのです。
あのお方にとって、それ以上の幸せがありますか?」

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by bunbun6610 | 2015-04-20 18:30 | NHK大河ドラマ『花燃ゆ』

花燃ゆ - 第15話 『塾を守れ!』

花燃ゆ - 第15話 『塾を守れ!』




NHK大河ドラマ
 『花燃ゆ』

http://www.nhk.or.jp/hanamoyu/






(寅次郎が閉じ込められている野山獄にて)

敏三郎;
(手話)「僕がやる」

寅次郎;
「何を・・・。」

(敏三郎は自分で持ってきた、寅次郎が教え子たちに
送った手紙『伏見要駕策』を見せる)

寅次郎;
「伏見要駕策・・・。」

敏三郎;
(手話と筆談)「僕も塾生だ。
兄上の味方だ。」

寅次郎;
「味方・・・。」

敏三郎;
(手話と筆談)「みんなが寅兄に背を向けても、
僕は寅兄を信じる。」

寅次郎;
「信じる・・・」

敏三郎;
(手話)「(僕が)一番悲しいのは、声が届かん事。
(僕が)一番悲しいんは、(みんなに)伝えようと
しても、受け取ってもらえん事。
寅兄の声は、僕が受け取る。
僕が行ってくる。」

寅次郎;
「敏・・・。」

敏三郎;
(手話)「きっとうまくやれる。
せわぁない。」

(敏三郎の表情が固くなり、そして立ち上がって去る)

寅次郎;
「待て・・・。待て。
待て! 敏三郎!」

(後ろから呼びかけても、敏三郎には分からないので、
急いで)

寅次郎;
「福川様! 福川様!」

福川;
「何じゃ?」

寅次郎;
「弟を止めて下され!
敏三郎!」

(敏三郎が戻ってくる)

寅次郎;
「敏・・・。
行ってはならん。

敏三郎、大事な仕事を頼む。
家に戻って、母上に伝えてくれ。
差し入れのつるし柿、ありがとうあんしたと。

さあ、柿を一緒に食べよう。
ほぉべたがほろけるぞ。」

(しかし敏三郎は、尊敬する兄にもそう言われた
ことに残念そうで、涙を流した)






まるで、聴覚障害者がよく使う「オウム返しのマジック」
みたいなコミュニケーションだな。

兄の立場の苦しさを理解していたのが、
同じ経験をしてきた敏三郎だったのだ。
なるほど、それならば

「松陰は弟・敏三郎から精神的影響を受けていた」

という話は、理解できる。





文;
「・・・英雄になんか、ならんでええから・・・。
そのまんまの、ただの兄として・・・。
どうか・・・どうか、どうか、帰ってきてつかぁさい。」

寅次郎;
「ただの・・・兄として・・・」

文;
「みんな、寅兄が大好きなんです。
どうか帰ってきて・・・。
生きてつかぁさい。
私たちと一緒に。」

寅次郎;
「酷な事を言うのう・・・。
それは、僕の人生ではない。

文。
兄は死にたいんじゃ。
こねな僕でも、死んでみせれば、心を動かして、
立ち上がる人間もおるじゃろう。
僕がそうしてみせなければ、どれだけ待った
ところで、志を持った者たちが決起する事は
永遠に来ん。
僕はもう・・・死ぬ事でしか生きられん。」

(伊之助に)
寅次郎;
「いつになろうと、君は僕を止める事しかできん。
死ねん人間だからじゃ。
君も、久坂たちも。

『死ぬ覚悟はある。
じゃが、むだ死にはせん』。

そねな事はうそじゃ。

『時が来る。
今ではない』

そう言い続けて、何をなす事もなく、
人生が終わるんじゃ。
声をあげん者に、声が届かん者の気持ちは
分からん。
事をなさん者に、失敗した者の気持ちは分からん!
伊之助! いつだって、お前は、はたで見物する
だけじゃ。
お前など、友ではない。
藩の犬め。
お前など、友ではない!
口先だけは立派なことを言うて、何の行動もなせず・・・。
そういう人間を、僕は最も憎む・・・。

僕も同じじゃ。
僕は、僕を憎む!
何の役にも立たん!
世のため、人のために・・・何も!」




まるで、旧約聖書の預言者たちみたいな人生だ。
預言者たちは、神の命令に嫌々ながらも従い、
預言者としての働きをなそうとした。
周囲の多くの人から、嫌われたりもした。
そして、死んでいった。

だが、それが世を変える者たちの宿命―。


日本にも「天命」という言葉がある。
寅次郎たちのような苛酷な天命は、
誰にでも与えられているのではない。

暗殺されたリンカーンもそうだと思う。
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by bunbun6610 | 2015-04-12 22:52 | NHK大河ドラマ『花燃ゆ』

花燃ゆ - 第10話 『躍動! 松下村塾』




花燃ゆ - 第10話 『躍動! 松下村塾』




NHK大河ドラマ
 『花燃ゆ』

http://www.nhk.or.jp/hanamoyu/





小田村伊之助;「何かできるというんなら、
いつでもやってみたらええ。」



吉田松陰(寅次郎);「吉田(稔麿〔としまろ〕)
君の志、しかと受け止めた。
身分の上下、くだらん建前・・・。
すべて、この志の前では一文の価値もない。
古い考えに縛られてはならん!
思うように、あらがえ。
諸君! 狂いたまえ!」



松陰;「僕が、この世で一番恐れているもんが
何か分かるか?
・・・何事もなさん事じゃ。
そして、なそうとせん事じゃ。
志の果てに迎える死以外で死にとうはない。
断じて。」
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by bunbun6610 | 2015-03-10 22:58 | NHK大河ドラマ『花燃ゆ』

花燃ゆ - 第9話 『高杉晋作、参上』



花燃ゆ - 第9話 『高杉晋作、参上』

副題;『君は、何を志しますか?』




NHK大河ドラマ
 『花燃ゆ』

http://www.nhk.or.jp/hanamoyu/





〔関連情報〕

『NHK大河ドラマ『花燃ゆ』 ろう者・杉 敏三郎』
〔2015-01-05 21:09〕





【ろう者は目がいい】

村で相撲があり、高杉晋作が見物に来ていた。
そこにたまたま、敏三郎も来ていた。

審判が大笠山の勝ちを告げた。
ところが、その判定に敏三郎が異を唱えた。

「ろう者は目がいい」

というのは、ろう者と関わっている世界では、
実はよく知られている話だ。

敏三郎;「大笠山の足の方が先に着いた」

手話が分かる者が通訳したが、
大笠山の威圧的な態度に、
誰も文句を言わなくなってしまう。
敏三郎はそれでも、手話で大笠山に異議を
言う。

しかし、大笠山は手話が分からず

大笠山;「ふん。話にならん。
ハハハハハハ。」

と言って、無視する。

今度は高杉が黙ってはいない。

高杉;「俺も確かに、この目で見た。
お前の足が先に着いた。
ずるして勝って、嬉しいか?」

ビッグマウスが災いした高杉に、
大笠山から相撲対決を迫られる。
高杉が力士とまともに相撲ををしても
勝ち目はないので、当然ずるして逃げる。

高杉と敏三郎に、こんな接点があったのは、
本当なのだろうか。



【君は、何を志しますか?】

久坂玄瑞;「お前の人生がつまらんのは、
お前がつまらんからじゃ!」

吉田松陰(寅次郎)「高杉君。
君の志は何ですか?
僕の志は、この国をよくする事です。
志があれば、罪人でも生きるんは楽しい。
やる気が尽きる事はない。
志を立てることはすべての源です。
・・・(中略)・・・
志は誰も与えてくれません。
君自身が見つけ、それを掲げるしかない。
君は、何を志しますか?」


また本作では、障害者問題にかかわる話もあった。


杉 文;「何しよるん?!
家のお金で、こねなとこ来て!
この人(高杉)は、面白がっとるだけ。
この人とは、つきおうちゃいけんの!
あんた(敏三郎)、まだ何も知らんし、
何にでも染まりやすいんやから!」

高杉;「まるで子ども扱いやな。」

文;「あなたは黙っとって。
何も知らんくせに。
この子は、ずっと私が守ってきました。
字も教えて、お風呂にも毎日入れて。
こねに、こまい時から、私が守ってきたんです!
あんたのせいで、敏が悪い道に落ちてしまう!
帰るよ、敏。」

しかし、敏は立ち上がろうとしない。

文はさらに強く、指差しで命令する。

文;「帰るよ!」

そして今度は腕ずくで帰そうとする。
が、敏三郎は、文の手を振り払う。

敏三郎;(手話)「きらいだ。
姉上が、きらいだ」

文;「えっ・・・?」

敏三郎;(手話)「俺は、もう子どもじゃない。
子どもじゃない。」

文;「敏・・・。」

高杉;「お前は、弟を知らん。
その悩みも、思いも。
敏三郎の方から、俺に会いに来た。
強い男になりたいと。
戦になったら戦える男になりたいんだと。
その金を元手に稼ごうとしたんじゃ。
塾のために。

自分は仕事の口ももらえん。
ならば、本を買うて、得意の写本で
稼ごうとしたんじゃ。
お前の弟を、守られるだけの身にすんな。
姉が好きだから、こいつは苦しいんじゃ。
あんたの望む、かわいい弟を演じる事が
苦しいんじゃ。

敏三郎は、もう男じゃ。
自分の頭で、国のために家のために
役立つ事を考えとる。
お前の兄上の言葉を借りりゃあ、
志を持つ立派な男じゃ。」

文;「あなたに何が分かるんですか。
帰るよ、敏。
帰ろう。」

敏三郎は、それでも応じない。
仕方がなく、文だけ帰った。
しかし、文にとってはショックだった。

その後、敏三郎と文は理解し合えて、
仲直りするのだが。


障害者だって、仕事はやっぱり、
もらえるまで我慢しているのではなく、
自分で獲りに行くものだろう。
そのための主張を、もっとすべきだろう。

それとも、国がつくった障害者雇用促進法で、
我慢していればいいのかな?


当ブログのタグに「小山内美智子」氏がある。
小山内氏の著書は名著なので、是非読んでほしい。
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by bunbun6610 | 2015-03-08 13:30 | NHK大河ドラマ『花燃ゆ』

花燃ゆ - 第5話 『志の果て』

NHK大河ドラマ
『花燃ゆ』



第5話 『志の果て』


文;「もしうちが、獄につながれたとしたら、
それでも母上は会いに来てくれますか?
うちが戻るんを、待っとってくれますか?」

滝;「文。
あなたがどんな姿になっても、
人様からどんなひどいことを言われても、
母は必ず、あなたを待ってますよ。
そして『お帰り』と言うてあげます。」

文;「母上・・・。」

滝;「待っとるだけなら、お金はかからんしね。」








〔野山獄での場面①〕

吉村善作;「あれが富永有隣(ゆうりん)じゃ。
あれでも、かつては、明倫館の秀才と
うたわれた男だそうじゃが。
ハハハハ!」

吉田寅次郎;「富永・・・。」

富永;「俳句だと?
町人の遊芸(ゆげい)ごときに、
気をようしおって!」

吉村;「あぶれ者のたわ言なんぞ、
聞く耳持たんわ。」

富永;「ええ! 何じゃと? 何じゃ!」

吉田;「すばらしい。ん?
獄の中にあって、なお、周りを罵倒して
やまんとは。
近々、ぜひ。」







〔岩倉獄での場面①〕

金子ツル(重輔の母);「帰ろう。
ここから逃げよう。」

金子重輔(しげのすけ);「わしは逃げん。」

ツル;「重輔!」

重輔;「下田の奉行所で先生が、こう言われたんじゃ。
『我らは、逃げも隠れもせん。
罪を恐れ、逃げるような武士は、長州には一人もおらん。
私も金子も、長州の武士にござる。」



〔回想〕
重輔;「お頼み申す!
ペリー提督!
わしをメリケンに連れていけ! ホープ!」

(ペリー提督の服に着いていたボタオ(ボタン)を
引きちぎる)


寅次郎;「金子君。」

重輔;「うっ・・・ああ! ああ~!」

寅次郎;「金子君。」

重輔;「うっ・・・ああ~! ああ~!」

寅次郎;「金子君!」

寅次郎;「ボタオじゃ。」

重輔;「ボタオ?」

寅次郎;「西洋の着物に使う飾りじゃ。
これを使(つこ)うて、バラバラの布と布を
つなぎ止める。
我々のようですね。
もし、君がいなかったら、今の私はここにはおらん。
これは、取って置きなさい。
この先、どんな苦難に襲われようと、
今夜の我々の絆があれば、
志は必ず果たせます。
その証しに。」



〔岩倉獄での場面①に戻る〕

重輔;「これは、わしの宝じゃ・・・。
何度でも、何度でも、また先生と、
また海を渡るんじゃ・・・。」

ツル;「もう、そねな事せんでええ!」

(ツルは、泣き崩れる)

ツル;「家に帰ろう。
母と一緒に、静かに暮らそう。
なっ?」

重輔;「次の船は、いつ来るんかのう・・・。
今度こそ、海の向こうへ渡りたいもんじゃのう・・・。
先生・・・。先生・・・。」

ツル;「お前をこねぇにしたんは、誰?」




〔野山獄での場面②〕

(寅次郎が有隣に、本を差し出す)

有隣;「何じゃ、それは。」

寅次郎;「ご意見を伺いたいんです。
富永様の。ぜひ。」

有隣;「嫌じゃ。」

寅次郎;「富永様は、わざわざ、ご自分を
卑下するように振る舞い、垣根を作って
おられる。
そのような構えは、ご無用でござる。
どうぞ、ご教授を。」

有隣;「ならば、教えて進ぜよう。
わしの学の真髄を。」

寅次郎;「はい。」

有隣;「生きて、腐って、呪え。
ここで語る学問など、何の意味もない。」

寅次郎;「いいえ!
こんな所だからこそ、功利を排した
真の学問ができるはず。」

有隣;「ならば、聞く。
お前には、共に海を渡ろうとした弟子が
いるそうだな。」

寅次郎;「金子は弟子ではない。
友です。」

有隣;「友!
いいか?
その友とやらは、お前がここで、
真の学問とやらを語っている間に、
向かいの獄で、たった一人、
虫けらのように死んでいくんじゃ。

お前がどんなに学ぼうとも、
ここにおる限り、
お前は友一人の命も救えん。
それが、お前にとって、まずは学ぶべき、
まこと。
まごう事なき現(うつつ)!
お前の学問とは、所詮、紙の上の幻じゃ。」

(有燐は、寅次郎が差し出した本を奪い、
引きちぎる。
そして、寅次郎ともみ合いになる。)

有隣;「ええぞ、ええぞ!」

福川;「吉田!」

有隣;「ええぞ!
腹の立つ事を言われりゃ、殺しとうなる。
殴りとうなる。
人とは、そういう生き物なんじゃ。」

寅次郎;「違う!
人とは・・・人の本性は善じゃ!
明日の己を、己で切り開く事ができる
唯一のものじゃ!」

有隣;「人とは、悪じゃ!
その証拠に、たった今、お前はわしを殴ろうと
したではないか。
恥じる事はない!
心のままに生きればよい!
生きて、腐って、呪え。
生きて、腐って、呪え。」





〔野山獄での場面③〕

寅次郎;「文か。」

文;「はい。」

文;「金子様が亡くなりました。
金子様は、最後の最後まで、兄上と共に
海を渡る夢をみておられました。
何度でも挑んでみせると。
教えてつかぁさい。
何で金子様は、死ななくてはならなかったん
ですか?
何で国禁を犯してまで、兄上は海を渡ろう
としたんですか?」

寅次郎;「あの夜、俺たちは光を見たんじゃ。
目指す船の先に、新しい日本があると。」

文;「見えたんは、異国の光だけですか?
うちには、大切な方たちがいます。
兄上が国禁を犯したあと、梅兄様は、
お役を免じられました。
寿姉様も、ご城下での暮らし向きが立ち
ゆかず、私たちを助けてくれるもんは誰も
なく、父上がお腹を召してわびようと
なされました。
私たちを守るために。
兄上の見たもんが新しい国の光だという
んなら、何でそれは、私たちを照らしては
くれんんかったんでしょう。」

寅次郎;「それは・・・。」

文;「金子様は、寅兄様が殺したんです。
己の欲に、己を慕う者を巻き込んだ。」

寅次郎;「違う!
俺は金子と生きたんじゃ。
夜の海を二人、大義のために、
大義に生きようと、ひたすらに・・・。」

文;「ならば、証しを見せてつかぁさい!」

寅次郎;「証し?」

文;「あの夜、兄上の目指した光が、
ただの私事ではない、もっともっと、
ふとい大義の果ての志やったというんなら、
志は死なない!
たとえ一生、牢の中にあろうとも、絶望はない!
金子様は、生きて幸せやったんやと・・・。
暗い獄の中で・・・金子様はずっと、
ボタオを握りしめていました。
兄上との大切な思い出を。」




映画『ブルベイカー』と似ている。

刑務所を追放される所長・ブルベイカーに、
クームスが

「(あんたが)正しかった」

と一言、静かに、しかし力強く宣言した。
クームスは前には、覚悟を決めて告発し
殺害されたエイブラハムを見て

「あんたは危険なヤツだ。
人間、死んじまったら終わりなんだぜ」

と、ブルベイカーに言っていた。
そのクームスが、変わった。


まだ本当の「志の果て」ではない。
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by bunbun6610 | 2015-02-08 10:25 | NHK大河ドラマ『花燃ゆ』


ある聴覚障害者から見た世界


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