警察署の保護室の中で、わかったこと

ロバート・レッドフォード主演の映画『ブルベイカー』
をご存知の方はおられるでしょうか?
刑務所での実話をもとに映画化した社会派作品です。

 →http://movie.walkerplus.com/mv7963/



CINEMA REVIEW 【斎藤智文】 [2012.03.27]
CINEMA REVIEW(39・完) 腐敗を糺す勇気、妥協しない正義感
「ブルベイカー」
Brubaker



ブルベイカーは、ある刑務所の新所長として、
就任することになりましたが、
その前に自ら囚人になりすまして刑務所に潜入し、
刑務所の不健全な実態を内部から知りました。
そして、たった一人で、ここの改革を始めた人です。

私の警察署保護室での初体験は、
ブルベイカーのそんな体験を、
自分もちょっとしたような感じでした。

ある日、私は電車の線路で飛び降り自殺を
図ろうとし、迷惑行為にもなったので、
警察署に保護されました。

そして、翌日まで保護室に入れられました。

冷たそうな部屋で、部屋の電燈は24時間
つきっぱなしです。
時計も何もない部屋で、
朝なのか昼なのか夜なのかもわかりません。
コンクリート製の壁と、強化プラスチック製の
全面透明の窓だけです。

保護室の中は、自分一人でいるのが
当たり前の環境なので、
私はそれまでの悩み事は何も考えません
でした。

不思議なもので、そこにいる限り、
私は今までのように、人間関係で悩むことも
ありませんでした。

孤独は、健聴者ならば誰でも嫌なはずです。

しかし私にとっては、まるで、
自分が聴覚障害者であることを
忘れられるような環境でした。

不思議なことに、ここにいるほうが、
会社にいるよりも居心地が良いと感じていた
のです。

山本譲司氏が書いた刑務所のことを
描いた本があります。


『累犯障害者』(山本譲司/著者)

http://www.amazon.co.jp/%E7%B4%AF%E7%8A%AF%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85-%E5%B1%B1%E6%9C%AC-%E8%AD%B2%E5%8F%B8/dp/4103029315

「「これまで生きてきた中で、ここが一番
暮らしやすかった……」
逮捕された元国会議員の著者は、
刑務所でそうつぶやく障害者の姿に
衝撃を受けた。
獄中での経験を胸に、「障害者が起こした
事件」の現場を訪ね歩く著者は、
「ろうあ者だけの暴力団」
「親子で売春婦の知的障害者」
など、驚くべき現実を次々とあぶり出す。
行政もマスコミも目を瞑る「社会の闇」を
描いた衝撃のノンフィクション。」



累犯障害者は

「刑務所の中のほうがいい」

と告白していますが、
私も保護室の中に入ったら、
その理由がわかりました。

社会で暮らしにくい障害者の気持ちは、
私にもわかります。
社会にいれば次第に圧迫感を受け続ける
ことになり、やがて罪を犯してしまいます。
そして刑務所に入りますが、
そこがそんなに辛いとは思わないのだろう。

むしろ、彼らにとっては刑務所の方がずっと、
居心地がいいのかもしれません。

皆厳しい規則に従って服役するのが
当たり前、そこでの生活は誰でも孤独なのが
当たり前なのだから、差別とか、不公平感
は全く感じないのかもしれません。

それで文句も出ないし、もしまたシャバが
苦しくなったら、また軽い罪を犯してでも、
ここへ戻ってくるだろう。
つまり、累犯障害者問題は社会問題なのだ。

その障害者が一方的に悪いからでは
ありません。
社会が障害者を受け入れないことにも
原因があるからだ。

しかし、健常者だったら「刑務所にいたい」
とは思わないだろう。
それまで自分が築き上げてきたもの
一切と別れなければならず、
家族ともほとんど会うことができない。
健常者ならば、生まれて初めて経験するような、
辛い孤独感を味わうことになる。

それでも、心の平安のために刑務所に入る
とはいえ、障害者も含めてどんな人にも、
ひとつだけ犯してはならない罪があると思う。
それは殺人だ。

相手を殺したら気が済むと思っていても、
他人の命は誰も償うことはできません。

刑務所で後悔し何らかの償いをしたくなっても、
その苦しみに耐えられるだろうか。
刑務所から出られなければ、償うという行為
さえ、できないとわかるだろう。

そして自分の気持ちは結局、
誰にも理解されず死刑になるのか、
という孤独にも苦しむのではないだろうか。


〔参考〕
障害理由に「刑猶予を」 窃盗事件公判で弁護側
 福岡地裁


他人のアパートに侵入し現金を盗んだとして
窃盗などの罪に問われた福岡県内の男の
被告(63)の初公判が23日、福岡地裁
(高原正良裁判官)であった。

被告は先天的に全く耳が聞こえず言葉も
話せない障害があり、過去にも同様の罪を
繰り返して19回の有罪判決を受け、
20年以上も刑務所に入っている。

今回の事件の捜査で新たに軽度の知的障害
があることも判明した。

深刻な障害がありながら、周囲の支援が
不十分で服役を繰り返す被告をどのように
処遇するべきなのか。

判決は6月13日に言い渡される。

起訴内容には争いがなく、検察側は

「障害を考慮しても前科が多い」

として懲役2年を求刑。

弁護側は

「被告は刑事司法と福祉のはざまで
こぼれ落ちた。
社会内で生活するため最善の方法を
検討すべきだ」

と執行猶予付きの判決を求め、
結審した。

被告は昨年9月に福岡市博多区の
アパートに侵入、現金3万円を盗んだ
として、今年3月に起訴された。

弁護側によると、被告は1人暮らし。
別に暮らす家族にも障害がある。
障害者の年金8万円を受給しているが、
福祉サービスは受けていない。

金銭管理ができず、別居の弟に任せて
おり、起訴された事件は現金が手元に
なくなったため起こしたという。

初公判は手話通訳人が被告にすべて
のやりとりを訳す形で進行。
被告は起訴内容を認め、質問には

「被害者にお金を返さないといけない
ことは分かる」

「仕事がしたい」

と手話で述べた。
しかし時折、手話通訳人の手話をただ
繰り返すだけで質問に答えられず、
審理が進まない場面もあった。

検察側は、傘を使い鍵を外す手口などに
触れ

「大胆で慣れた犯行。
相当期間刑務所に入所すべきだ」

と主張。

弁護側は

「責任能力は欠如していないが、
健常者と同じではない。
刑事施設での矯正は期待できず、
福祉施設への入所が必要。
なぜ罪を繰り返すのか、
社会全体で考える必要がある」

と訴えた。

2011/05/24付 西日本新聞

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by bunbun6610 | 2016-08-12 19:30 | 就労後の聴覚障害者問題Z1


ある聴覚障害者から見た世界


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