手話通訳者は要るの、要らないのの話

こういう話は、案外よくあるのではないだろうか。


ハローワークで懸命に仕事探しをしても、

「聴覚障害者を雇用したい」

と考えている企業は見つからなかった。

障害者枠求人票はたくさんあった。

「必要な合理的配慮については
お申し出下さい」

と書いてある求人票は増えていた。
しかしそれでも、聴覚障害者の立場で
応募前問い合わせをして確認すると、
応募することも難しいものがほとんど
だった。

給与や勤務時間等の条件を落としてみても、
見つけるのが難しいことには変わりなかった。

ほとんどの求人票が精神・知的障害者向け
のものとか、高スキルを持った障害者向け
だった。

「電話応対必須」

とか

「電話応対が出来る方が望ましい」

と書いてある求人票も多かった。
音声コミュニケーションの能力が必須だった
のだ。
それだけが理由で、聴覚障害者だけ、
はじかれてしまうのだった。
そんな時、もうどうにも我慢がならなくなって、
ハローワーク職員にこう言った。

「もう、自分で探すのは限界です。
精一杯の努力はしました。
だから、ハローワークで聴覚障害者も
応募できる求人票を見つけることは
できませんか?
そのほうが早く見つかると思います」

職員は、とうとう非公開求人票を持って来て、
見せてくれました。


ハローワーク職員;
「これは、本当は非公開の求人票です」

私;
「なぜ、非公開なのですか?」

ハローワーク職員;
「企業とハローワークの雇用指導官が
一緒になって調整中のためです。
どのようにマッチングを行うのか、
調整中のためです」

私;
「なるほど。
聴覚障害者は応募できるのですか?」

ハローワーク職員;
「できます。
●日と▲日に職場見学会があります。
見学会は予約制です。
申し込みますか?」


私;
「はい、勿論です。
でも、見学会には企業側が手話通訳者を
付けてくれるのですか?」

ハローワーク職員;
「よくわかりませんけど・・・」

私;
「それでは心配ですから、念のため、
こちらで手話通訳者を手配し、
派遣したほうがいいでしょう」

ハローワーク職員;
「そのほうが安心ですね」

私;
「わかりました。
そうします」


そして見学会に予約した後、
手話通訳の派遣センターに予約を
入れておいた。
ところがその後、急にハローワークから
FAXが届いた。


ハローワーク;
「▲日に予定しております××(株)の
職場見学について、事業所より手話通訳者
の同行不要との回答がございましたので
お知らせします。
不要の理由は、コミュニケーション面の確認
のためです。
つきましては、お手数をおかけしますが
本人手配の手話通訳者はキャンセル頂き、
単独で見学会にご参加お願いします。
なお、当日は手話の出来るスタッフが
見学同行いたしますので、安心してご参加
下さい」


こういう内容だったのである。
この内容の意味が理解できるだろうか?
聴覚障害者労働問題に精通している
専門家だったらわかるだろうが、
ハローワークの言っていることは明らかに
矛盾しているのである。
とりあえず、向こう(企業)は手話通訳者を
拒否しているのだから、それはキャンセル
するしかない。

疑問になったのは、

「コミュニケーション面の確認のため」

に、手話通訳者を拒否しているのに、

「当日は手話の出来るスタッフが見学同行
いたしますので、安心してご参加下さい」

という、おかしさである。

さらにもっと疑問に思ったのは、向こうの
手話の出来るスタッフとは、通訳がきちんと
できる能力のある者なのだろうか?
心もとない手話初心者がいい加減に
情報保障・通訳をして、それで聴覚障害者
が大事な就職活動で損をしたら、
非常に困るのである。
実際にそんなことが、過去記事にしっかりと
載っている。
理解できない人は、よく読んで欲しい。



『健聴者にだまされたこと (1)』
〔2011-08-04 00:39〕




『健聴者にだまされたこと (1)』
〔2014-08-20 18:30〕




『これでいいのか?
 健聴者が一方的に考えた
聴覚障害者情報保障の実例から』
〔2011-09-12 22:17〕




賛成はしなかったが、てっきり

「企業に手話が出来る人がいて、
手話通訳してくれるのではないだろうか」

と思っていた。
ところが、実際に見学会に言ってみたら、
何とハローワークの手話が出来る職員が
手話通訳をしていた。
(手話通訳者の資格を持つ人だったのか
どうかは、わからない)

2人いたが、どちらも本物の手話通訳者
ではなかったようだ。
なぜならば、本物の手話通訳者だったならば、
手話通訳に徹するはずだからだ。
彼らは結局、私に伝える必要がある音声
情報だけを手話にして通訳していた。
私に話していないことは、通訳していなかった。
これを本物の手話通訳者が見たら、
どう思うか?
当然、聴覚障害者への人権侵害行為に
当たっている。

残念だが、『障害者差別解消法』が施行された
後でも、こんなことがまだ繰り返されている
のである。





参考までにだが、手話通訳者派遣が断られる
理由には、下のような事例もあるそうだ。

手話通訳者のブログ
『手話通訳者派遣を断られるケース』
〔2015-11-08 22:06:52〕





ちなみにこの会社では

「手話が出来る人はいない」

という。

なるほど。
それで音声コミュニケーションが可能なのか
どうか、実際に確認してみたかったわけだ。
聴覚障害者であることを知っていながら。

あるいは、最初から眼中にはないけれども、
門前払いしたら企業名誉が傷つくことを恐れて、
職場見学の参加だけ認めたのかもしれない。
どうせ他の障害者とまとめて実施するから、
直ぐに断らなくても、面倒なことではない。

聴覚障害者に限ったことではないが、
要するに職場見学会と称したイベントを開いて、
なるべく多くの障害者を呼び寄せて、
こういう“偵察活動”“ふるいわけ(選別)”
をする思惑があったようだ。

それなのに企業の人はなぜか完全に、
手話通訳者に頼って、一方的に話すのみだった。
筆談は当然、なかった。

そういう企業が

「『手話通訳者は要りません』

と言う方がおかしい」

と思うのが、聴覚障害者側としては当然
だと思うのだが・・・・。


それでもまだ諦めてはいなかった。
そして、幾つか質問をしてみた。


私;
「今までに、ここで障害者が働いたことは
ありましたか?」

企業;
「あります。
知的障害者の方が一人いましたが、
辞められました」

私;
「聴覚障害者の雇用は初めてのようですが、
どのような方法でコミュニケーションを
されるのですか?」

企業;
「手話はできませんが、それぞれの障害に
応じて合わせます」

私;
「具体的には?」

ハローワーク職員;
「彼は今の職場でも、マスクをずっとつけたまま、
外さないで話しかける知的障害者と一緒に
働いているのですが、それでコミュニケーションが
できない、と言っていました」

企業;
「マスクはつけていただきます。
工場内では、マスクを外して話すことは
できません」

私;
「・・・・・」



仕事の内容は食品製造工場での製造業務で、
全員マスクをつけなければならないと知り、
愕然とした。
ということは、読話も無理。
筆談も工場の衛生上やら食品事故を防止する
理由で、筆談具を持ち込むことは限られており、
その場でのやりとりをするのは無理、
とのことだった。
こんな場合でも、手話なら問題はないが

「手話はできない」

で突っぱねられて終わった。
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by bunbun6610 | 2016-05-26 23:58 | 情報保障・通訳(就労)


ある聴覚障害者から見た世界


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