それぞれの聴覚障害者に合わせた情報保障を求めること


この話は、当ブログ

『ろう者の前にあるバリア(障壁)の正体』
〔2016-03-30 19:30〕

の続きになります。

ある日突然、人事部のM課長が、
仕事中に私のところにやって来て

「ちょっと話をしたいので、
別の部屋に一緒に来てもらえるか?」

と言いました。

「やっと、あのメールの返事が来たのか」

と直感でわかりました。

M課長;
「労働組合に通訳者の派遣センターを
教えてもらい、そこに依頼しました」

私;「通訳者は、手話のほうですか?
 それとも、要約筆記のほうですか?」

M課長;「要約筆記です」

私;「ありがとうございました。
安心しました」

M課長;「じゃ、これで…」

たったこれだけの話でした。
ただ、M課長は以前のような、言いくるめたり、
自分の考えを押し付けてくることはしなく
なりました。
最後に

「それから、これ(メールの〔cc:〕にズラーッと
大物人物の名が並んでいる様)は、
それぞれの人の立場もあるから、
…気をつけて」

と言いました。

何を言いたいのでしょうね、健聴者のこの言い方は。
こういう言葉遣いを、あるろう者は

「健聴者は『察する文化』なんだ」

と言っていましたが、まさに自分からは
ハッキリと言わない態度で、
もしもの解釈の違いが起きたら、
相手に責任転嫁したがる、
という感覚の言い方ではないでしょうか?

とにかく、こういう言い方では後になって、
いろいろと誤解が起こる原因になると
思いますけど。

結論をハッキリ言ってしまえば、

「こういうことは今後、やめてほしい」

ということなのだろう。
それでは私だって、納得しません。
だから、逆上するに決まっています。

M課長は、本当はこう言うべきだった、
と思います。

「私が間違っていました。
申し訳ありませんでした。
今後は、私も態度を改めますので、
むやみに社長や常務にまで、
〔cc:〕でメールを送ったりしないで下さい」


ところで、2回目にして、やっとM課長は
正しく対応してくれたわけですが、
その理由を探ってみたい。

なぜなら、この事例は、聴覚障害者労働問題
の解決の糸口になりそうだからです。

一部分を黒塗りにして、1回目と2回目の
メール文を公開します。
会社側からはこれに対して、メールでの
回答は一切していません。
やはり、裁判を警戒しているからだと思われます。


【1回目のメール文】
M 様

お疲れ様です。

『■対策セミナー』についてですが、
これには手話通訳がつく、ということになっています。
しかし、このような話では、手話通訳が不得手な
聴覚障害者もいます。
Mさんはこの点については、ご存知でなさそうです。

通訳について、現在、労働組合を通して、
聴覚障害者の母語や、使用場面、使用目的にも
合わせた情報保障・通訳の手配を要望しています。

しかし、まだ時間がかかるところのようです。

今回の通訳者準備では、要約筆記通訳の手配は
できませんでしょうか?


また、×××のセミナーも、
同じ理由から、自分の参加意向は伝えませんでした。

今後、きちんとした情報保障・通訳の準備を要望します。

なお、下記アドレスの講座は参考です。

 →http://www.jinken.or.jp/archives/5961

通常、聴覚障害者には、手話か要約筆記通訳の
どちらかを選択できるようになっています。
ろう者と難聴者、中途失聴者などは、
それぞれ、母語が異なっているからです。

情報保障の選択ができないと、
いろいろな問題がありますので、
真剣にご検討をお願いいたします。

次のことも、当社の聴覚障害者の雇用と同じ問題
による裁判例です。


 
http://www.47news.jp/CN/200904/CN2009040801000197.html

三菱UFJと聴覚障害の行員和解 「障害に配慮を」大阪地裁
大阪市に住む重い聴覚障害者の女性(40)が、障害への配慮がなく昇格の機会が奪われたとして、勤務先の三菱東京UFJ銀行に約700万円の損害賠償を求めた訴訟は、銀行が普段から意思疎通を保つことなどを条件に、大阪地裁(中村哲裁判長)で和解が成立したことが8日、分かった。
 コミュニケーションが難しいケースもあり、職場で孤立しがちな聴覚障害者が働きやすいよう企業に努力を求める内容で、女性の弁護士は「和解条項に沿って、女性に適切に情報が提供されるよう配慮してほしい」と話している。
 和解は3月23日付。条件は(1)平等な昇格の機会を保障するために普段から意思疎通を保ち、具体的な指導や助言をする(2)働きやすい職場へ異動(3)会議や研修では書類を用意するなど情報提供に努める(4)銀行が解決金120万円を女性に支払う―など。
2009/04/08 10:53 【共同通信】




 →http://kansaigodo.blog42.fc2.com/blog-entry-311.html

聴覚障害で差別 女性行員と和解 三菱東京UFJ銀行

聴覚障害で差別 女性行員と和解 三菱東京UFJ銀行ーMSN産経ニュース2009年4月8日
三菱東京UFJ銀行に勤務している聴覚障害者の女性(40)=大阪市=が、昇格や昇給で差別され精神的苦痛を受けたとして、同行を相手取り約700万円の損害賠償を求めた訴訟が、解決金120万円を同行が女性に支払うことなどを条件に大阪地裁(中村哲裁判長)で和解したことが8日、分かった。和解は3月23日付。

 和解条項には、解決金のほかに、平等な昇格機会を保障するために普段から意思疎通を保ち、具体的な指導や助言をすることや働きやすい職場へ異動させることなどが盛り込まれた。女性は現在も同行で勤務している。

 訴状などによると、女性は先天性の聴覚障害があり、平成3年に旧三和銀行に入行。その際、必要な時は通訳をつけるなどの約束をしていたが、その後、手話や筆談の通訳などの配慮はなされなかった。さらに昇格や昇級に必要な試験や研修への申し込みを拒否されるなどし、同期入社の社員と比べ低賃金に据え置かれるなどしたため、平成17年12月に提訴していた。

2005年.12月.30日に書いた UFJ銀の女性行員、「聴覚障害で差別」と銀行提訴 が和解になったということですね。
よかったと思います。





【2回目のメール文】
M 様 (再送信)

下記の件のご回答は、いかがになりますでしょうか?

今年度の全社的な取り組みとして、
コミュニケーション向上への取り組みもあるようですが、
もしも通訳のミスマッチが起こると、
会社責任によるコミュニケーション方法のミスマッチと
言えませんでしょうか?

今年■月頃に、●本社でコンプライアンス部のS氏らに
説明したことが、また起こると思います。
聴覚障害者差別問題についても、
何ら改善にはなっていないことになると思います。

直属上司(M係長)からは

「人事の返事はどうなりましたか?
一応、あなたは手話通訳のある△月×日(●)に
しておきました」

と指示を受けております。

期日が近づいておりますので、
ご回答をお願いいたします。


1回目も2回目も、内容は変わりなく、
本来なら1回目だけでも、充分な説明になっている
と思います。

したがって、M課長が2回目で渋々、
対応するようになったのは、
やはりメールの〔cc:〕が異なっていたからだと
わかります。

M課長は、会社の人事権を持つ人か、
少なくともその影響力を持つ人です。
1回目のメールの〔cc:〕には、
(人事部長を除いては)M課長より格下の
人物ばかりでした。

しかし、2回目のメールの〔cc:〕では、
M課長より格上の人物が、
少なくとも5人(代表取締役社長及び
常務取締役、人事部長)はいます。
さらに、コンプライアンス部メンバーも
2人加わっています。
おそらく、このことがM課長の行動に
結びついたのだと思われます。

私は以前、別の会社にいたときにも、
同様の手段で、自分よりも格上の相手を
土俵に立たせたことがありますし、
他のろう者も同じやり方で、
自分の意見を会社に聞いてもらっている
事例を知っています。

つまり

「直属上司に言ってもダメだったら、
その上の人に、
それでもダメだったら社長に言え」

という戦術です。
ガマンできなくなって自分から辞めるくらいなら、
この手を試してみてはいかがでしょうか?
もちろん、リスクも大きいと思いますがね。

しかしもしも、会社の人に言ってもダメなようなら、
どうするか?
これは会社ぐるみでやっていると、
明らかにわかるので、
もう打つ手はないでしょう。

でも、どうしても納得できなかったら、
自分の会社の地域を管轄している法務局に言い、
自分に換わって会社へ助言を与えてもらう、
という方法はあります。

よく

「ハローワークに相談するといい」

とは言われていますけれども、
ハローワークは「我々には強制力はない」と言い、
なかなかやりたがらないし、
もともと企業にもナメられている存在なので、
相談しても効果なんてありません。

法務局も強制力はありませんが、どちらかと言えば、
法務局に言わせたほうがマシだと思います。

これが無理ならば、あとは人権擁護団体に相談し、
会社に助言してもらうぐらいしか、方法はないと
思います。

ですから結局、一番の方法はやっぱり自分の力で、
会社の中で解決すべきで、その方法を持つこと
だと思います。

以上、あなた自身の聴覚障害者労働問題解決
のための、ご参考になれば幸いです。

ついでに、私のこのメール作戦が
影響したかどうかはわかりませんが、
Aさん(ろう者)も同じ日に
手話通訳付きセミナーへの振替参加が認められ、
ろう者、中途失聴者のそれぞれに対応した、
2種類の通訳が用意されることになりました。

会社で、聴覚障害者の母語に合わせて
2つの通訳が準備されるというのは、
私も始めて聞くことです。
良い結果になりました。

会社に対し、このような完璧な情報保障を
求めていくことは大変ですが、
それでも諦めないことが大事なのでは、
と思います。
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by bunbun6610 | 2016-03-31 19:00 | Z1.クレジットカード会社
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ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610
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