職域差別の法律相談(2)

 ―「想定外」ではなく「想像力の欠如」がもたらした結果―

20■■年■月■日

行政書士の人から

「あなたから手数料を取るのは、気が引けますよ」

と言われました。

重度身体障害者には、貧困層が多いということを
知っているのでしょう。
それに、裁判は勝たなければ、それなりの報酬も
取れません。

アメリカ映画とかサスペンスドラマとかで

「カネは幾らでも出すから、勝たせろ」

というセリフが出てくる話もありますが、
金がない人は裁判はできないのかというと、
そうとも限りません。
お金がない人には、法テラスというものがあります。

しかし、この法テラスは他にも条件があって、
それは

「勝てる見込みがないとは言えない事件」

であることです。
弁護士に相談しても

「勝てる見込みがない」

と逃げられたら、
やっぱり弁護士なしで一人でやるしかありません。


聴覚障害者への差別(職域差別を含む、多くの間接差別)は、
六本木ヒルズ回転ドア事故と、驚くほどよく似ています。

事故は、有識者から「隙間事故」とも呼ばれています。
隙間とは

「誰も考えもしなかった領域」
「誰も関わろうとしなかった領域」

といった意味で、今流行っている言葉で言えば「想定外」です。

健聴者の何気ない行為が結果として、
聴覚障害者への間接差別になっていることなど、
全く考えてもいないことです。

そしてある日突然、我慢ができなくなった聴覚障害者に

「差別です」

と言われたら、言われた健聴者は「想定外だった」と
思うでしょう。
そして健聴者は「想定外は言い訳になる」と思って
いるのでしょう。

しかし実際は「想定外」ではなく、健聴者の
「想像力の欠如」に過ぎないのです。
今まで、人間としての思いやりが欠如した
行動を取っていただけに過ぎません。
すでに常識になっているのだから、
非難されないと思っています。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というやつです。
こなると、やられているマイノリティーのほうは、
一人では非難しづらくなるものです。


裁判で争う事件には、民事事件と刑事事件があります。
刑事事件は、刑事責任の追及えあって、
検察と個人または団体が争います。

六本木ヒルズ回転ドア事故は、遺族が民事事件として
訴訟を起こすこともできましたが、刑事事件になりました。

当時、社長が六本木ヒルズ安全対策本部長でしたが、
社長が「すぐに対応しなさい」と部下に命じていたの
だから、刑事責任を問えなくなりました。
その責任を個人に問う、というのも酷という判決に
なったのです。

事故前は、危険だと十分には気がつきませんでした。
事故後、会社は最大限の努力をし、改善努力をしました。
これも結果的に、温情的な判決に結びつきました。
業務過失致死罪による懲役1年6ヶ月(執行猶予3年)
の判決でした。


障害を持つ労働者に対する差別の場合は民事事件
として、最終的に会社に改善を求めるとか、
慰謝料を請求する目的が考えられます。

慰謝料はこれからも働き続ける障害者にとって、
決して職場問題の解決にはならないので、
せいぜい妥協案でしかありません。

それでは仮に勝訴を勝ち取ったとして、
裁判所から改善命令を出してもらったとしても、

「仮に裁判所が改善命令を出しても、監視機関はどこに
あるのか?」

「また改善のプロセスや、結果の評価は誰が公正に
行いえるのか?」

そういった難問が残っています。

やはり勝訴したとしても、本当に聴覚障害者にとって
よい方向へ向かうのか、極めて難しく、不透明です。
結果、あまり改善しないことも予想されます。


弁護士から「慰謝料を数十万円にしたら?」という提案が
ありました。
そうしたら今度は、会社だけでなく周囲の人からも、

「なぜそんなに要求するのか?
原告の聴覚障害者は、
幾ら何でもやり過ぎではないか?」

という評判になってしまう恐れもあります。
これでは勝訴して慰謝料も勝ち取り、
会社に残れたとしても、
居づらくなってしまいます。

勝訴できたとしても、社内での信頼関係が損なわれ、
雇用契約を打ち切られてしまうリスクが高くなります。
これでは負けに等しい。

では逆に

「慰謝料を会社を休んだ分の賃金に相当する1~2万円
とする」

では、会社は裁判を起こされる前に

「払って、さっさと終わらせた方がいい」

と考えるだけかもしれません。
そうなったら、おそらく反省なんてないでしょう。
自分の雇用契約更新を止められる可能性も
濃厚になります。

会社は、理由のない支払いには応じられないけれども、
裁判を避けたい、面倒がるという性格はあると思います。

裁判所としては、原告が会社の上司個人を相手に
争っても、このケースでは「使用者責任」と見ます。

しかしそれでも、使用者がもみ消し、見過ごし、
対応拒否といったことがなく、
むしろ積極的に対応している事実があると、
それも責任を問えない理由になります。

そうなると、勝訴するのは途方もなく難しい。
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by bunbun6610 | 2015-06-05 19:00 | Z1.クレジットカード会社


ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

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