聴覚障害者雇用の成功事例 - 株式会社エルアイ武田

ここでは、聴覚障害者雇用が成功した事例として、
その関連部分を抜粋し紹介する。

障害者雇用にも、キャリアアップがいかに重要である
かを示した事例だと思う。



===========================



啓発誌『働く広場』
(独立行政法人 高齢・障害・求職者
雇用支援機構/発行)




『働く広場』(2014年12月号)

●特集● 障害者雇用におけるキャリアアップの取組み

職場ルポ
『「働く障害者を愛する会社」を理念に』
- 株式会社エルアイ武田 -

より、一部抜粋。



「武田薬品工業株式会社の旧本社社屋、レトロな
煉瓦造りの道修町ビルにあるエルアイ武田本社
を訪ねた。
清掃グループは、聴覚障害の人たち19人と精神
障害の人たち2人で、道修町ビルのほか、近隣の
武田薬品工業株式会社のビルなどの清掃を担当
する。
勤務時間は7時30分から。
朝のミーティングでその日の業務を確認し、社員が
出勤し始める8時30分までに完了させる。
定年退職で世代交代が進み、一番のベテランは
取材の日休みだった勤務11年、チームリーダーの
O(元記事では実名)さんだ。」
(P5)


「入社9年目、同じくチームリーダーのTAさんが
気を付けていることは、

『例えば、カードをかざして入口のロックを開ける
とき、聴覚障害の人はエラーになっても音が
聞こえないので、正しい方法をしっかり説明して
います。
また、掃除機を壁に当てない、パソコンなどの
電源を抜いてしまわないようにと注意しています。』」(P5)


「サブリーダーのTUさんは入社5年目を迎える。

『耳が聞こえないので、歩いているお客さまに
対して邪魔にならないように、ぶつからない
ように気を遣っています。
狭いところで頭をぶつけないようにと注意して
います。』」(P5)


「株式会社エルアイ武田は1995(平成7)年、
親会社から転籍した50~60代の聴覚障害の
人たち10数人の清掃グループを中心に、
包材グループ、ドキュメントグループ、計34人
でスタートした。
昔の建物のため段差が多く、車椅子の人を
採用することは難しかった。

創業以来、障害者雇用の核となってきたのが、
事業部推進室業務部長のOMさんだ。
OMさんは、武田薬品工業株式会社の営業
部門の事務職として勤務していて、立ち上げ
にかかわった。

『手話の勉強をしていて、手話サークルの
お花見に清掃の方々を誘ったときの話を
社内報に載せました。
その記事を見た人事部長から、やってみないか
と誘われました。
当時は、障害者のお世話をすればいいという
感覚だったのですが、はまってしまいましたね』」(P5)


「清掃グループは当初、家庭の掃除の延長線上
のような日常清掃を行っていたが、10年目に、
日常の清掃では落とせないところの表面清掃
やワックスがけなども行う、定期清掃に取り組む
ことにした。
『仕事を増やすうえで、

「日常清掃はしますが、定期清掃はほかの業者で」

という契約はしてもらえません。
そこで、まず定期清掃の契約をとってから専門
業者さんに業務を委託し、そのなかで、座学から
実技のポリッシャーの回し方まで、掃除メンバー
の教育もお願いしました。
専門業者が4人1組で作業する中に聴覚障害の
メンバーが1人入り、次に2人と、半年かかって
エルアイのメンバーだけで行えるようになりました。
聴覚障害の人がどこまでできるか不安はあった
のですが、定期清掃を受注していくなかでビル
クリーニング技能士の検定試験に挑戦しました。
1年目の2011年に5人受けて2人が合格、
2人は実技は通って筆記が不合格、1人は緊張
して実技で止まってしまったのですが、いま4人
の障害者が資格を取り、後輩にノウハウを伝えて
います。』」
(P6~7)


「本社ではOさん、TAさん、TUさん。十三グループ
ではUEさんが、ビルクリーニング技能士の資格
を持っている。
TUさんは

『不安でしたが、先に資格を取った先輩に大丈夫
といってもらい、一生懸命練習しました。
ペーパー試験が難しかったのですが、取ることが
できてほっとしています』。

TAさんは、

『試験はドキドキしましたが、合格してよかったです。
資格を取った後は後輩に教えています。
全員が資格を取って、「健常者に負けない」と
アピールしたいと思います』。

2人は、今年度受験する入社4年目のサブリーダー、
YOさんの指導をしている。」(P6)


「『聴覚障害の“ボス”を抜擢』
会社として苦労したことは、清掃グループの聴覚
障害者同士と健聴者のリーダーとの人間関係
だったそうだ。

『健聴者のリーダーから怒られていることは
わかっても、何を怒られているかがわからない。
気の強い人はフーンと横を向きます。
2年目に健聴者のリーダーが退職するとき、
思い切って聴覚障害の“陰のボス的存在”の女性
リーダーに抜擢しました。
本人にも仲間にも戸惑いがあったと思いますが、
最初は大変でした。
リーダーの女性は自分のことはできても、
人の調整ができない。
リーダーの仕事は、その人の能力に合わせて
仕事を与え、その人の能力を伸ばすように工夫
していくのだと繰り返し説明しました。』

そんなときは健聴者と聴覚障害者で『ろうあ懇談会』
を何回も開催。
その際、手話ができるOMさんはあえて手話通訳
をしなかった。

『会社の人間が手話でやってしまうと、一方的に
会社から押し付けられたと思うので、手話通訳者
に中立の立場でコンサルタント的な役割を果たして
ほしいとお願いして、会社のいいたいことを伝え、
本人たちの言い分を聞いてもらいました。
ある時期から、トラブルが起こったらリーダーが
仲裁に入ったうえで管理者に報告、また当事者
たちを事務所に連れてきて話し合いをするように
なってきました。
こうした対応ができるようになって、ろうあ懇談会
を開かずにすむようになりました』」(P7~8)


「『それまで怒られるばかりで、自分たちのスキル
を上げていくことなど考えたこともなかったのに、
勉強の機会を与えてもらった。
ビルクリーニング技能士の試験に挑戦させて
もらい、資格を取った。
こうして、やりがいを感じてくれていることが、
清掃グループが続いている要因だと思います。
定期清掃の仕事を通して、仕事への向き合い方
が変わってくる人も多いですね。』

設立時の人たちが定年退職後も、聴覚障害者を
雇用してきたが、昨年はろう学校の新卒者が1人、
今年は3人入社して、世代交代が進んでいる。

『能力が低いのではなくて、聞こえないので
文章力が弱かったりして、事務系の仕事が
難しいこともあります。
かつて聴覚障害者の職場といわれた製造工場
の組立の仕事は海外に移転してしまいました。

「清掃は誰もしたがらない仕事と思っているかも
しれませんが、人に喜ばれる仕事で、資格もある」

と説明します。
職場は手話で話ができると聞いて、聴覚障害者
の方からハローワークに問い合わせがあるんです。
最近はトルコ、香港、台湾、中国の聴覚障害の
人も働いています』

と、OMさん。」(P8)


「どのグループも朝礼と終礼のミーティングを行い、
仕事中にわからなかったことを意見交換している。

『特に、聴覚障害者が多い清掃グループでは必要
なことです。
徹底的に話し合うなかで相手を知り、仕事を知り、
自分の仕事ができるようになります。』

月1回、各グループの代表が集まって、安全衛生
委員会を開く。
またグループ間研修を行い、忙しいときには応援
に入る体制をとっている。
昨年度から、当機構障害者職業総合センターの

『SSTを活用した人材育成プログラム(ジョブコミュ
ニケーション・スキルアップセミナー)の普及に
関する研究』の協力事業所として、社内における
SST(ソーシャルスキルトレーニング)にて、
障害を持ったメンバーのコミュニケーション能力は
不可欠。
やる気を出させるのも出させないのもリーダー次第』

とOMさん。」(P9)


「週1回、本社にて手話サークルを開き、十三グループ、
吹田グループでの発表会にむけて昼休みに
練習をしている。

『設立後まもなくプライベートな勉強会として始まり、
最初は聴覚障害のメンバーが知的障害の人たちに
手話を教えていました。
知的障害の人たちからサークルを続けてほしいと
いわれて、

『何でもやってもらうのではなく、わからないことは
前もって教えるので、自分たちでやりなさい』

とアドバイスしたら、知的障害のメンバーが交代で
講師になって続けています。
聴覚障害を持つ仲間たちとのコミュニケーションの
大切さがわかっているのだと思います。』(P9)


「OMさんは、

『清掃グループでの経験が障害者雇用のノウハウ
の源になっている』

と考えている。

『聴覚障害の方は、情報をきちんと伝えたら一生懸命
仕事をしてくれますし、知的障害の方も、わかるように
説明すれば一生懸命に働いています。
信頼が増せば、仕事を前向きにとらえてくれますね。』」(P9)


「『健常者、障害者も基本的には同じです。
特に知的に障害がある方は正直ですから、私たちの
いい面と悪い面が凝縮して現れている気がして、
私たちの鏡だと思っています。
働くうえで大切なことは、コミュニケーションです。
手話ができなくても、相手ときちんと話しをしたいと
いう気持ちを持っていれば、一生懸命読み取ってくれます。
まずその気持ちが大事です。
慣れてくると、ちょっとしたズレが大きくなってトラブルに
なったりしますので、コミュニケーションは健常・障害
を問わず、永遠のテーマだと思います』」(P9)




==============================




〔関連情報〕


独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
『障害者雇用支援リファレンスサービス
株式会社エルアイ武田』
〔2007年度作成〕




武田薬品工業株式会社 CSR活動
『障がい者の活躍の支援
エルアイ武田』






上の事例は、聴覚障害者を雇用した事例である。


反対に、下の企業は聴覚障害者を雇用しない企業である。



『聴覚障害者が、会社面接で落ちる理由』
〔2013-01-05 18:00〕




『面接で聴覚障害者が落ちた例 - M社の場合』
〔2013-12-16 18:00〕



『障害者雇用 - 日本ハウズイング株式会社 池袋支店』
〔2015-04-12 18:00〕



『障害者雇用 - 日本マクドナルド株式会社』
〔2015-04-17 18:30〕



相反する二つの事例を、よく比較してみてほしい。
何が違うのだろうか。

ちなみに、『面接で聴覚障害者が落ちた例 - M社の場合』
は、株式会社エルアイ武田の清掃グループと同じ職種
(ビルクリーニング業)だ。
聴覚障害者雇用の明暗を分けた原因は何かについて、
考えてみてほしい。




>「『例えば、カードをかざして入口のロックを開けるとき、聴覚障害
の人はエラーになっても音が聞こえないので、正しい方法を
しっかり説明しています。
また、掃除機を壁に当てない、パソコンなどの電源を抜いてしま
わないようにと注意しています。』」(P5)



>「サブリーダーのTUさんは入社5年目を迎える。

『耳が聞こえないので、歩いているお客さまに対して邪魔になら
ないように、ぶつからないように気を遣っています。
狭いところで頭をぶつけないようにと注意しています。』」(P5)



日本マクドナルドの某店長に対して、聞こう。

「熱いものを持って近づいた時、聴覚障害者がいると危険」

なのは、まず第一に、その危険なものを持って近づく者に、
配慮不足があるからではないだろうか?
その責任を、なぜ聴覚障害者だけに押し付けるのか?

今では、耳が全く聞こえない者でも、自動車運転免許が
取得できるように改正されたように、危険回避は双方の
努力で可能なのである。
なぜ、そんなに時代遅れの考え方にとらわれるのか、
こちらが聞きたい。



障害者雇用にも、キャリアアップ制度は必要である。
エルアイ武田の事例で気づいたポイントは、
下の4つである。

(1)目標を意識させること
  ・・・障害者でも育てること


(2)達成を意識させること
  ・・・育てた結果が、目に見える形になること


(3)意識の連続的改革
  ・・・障害者も使い捨てでなく、企業と共に成長すること


(4)健常者と障害者の共存繁栄
  ・・・障害者雇用による、シナジー効果を狙う挑戦精神を持つこと




社内で手話学習、手話コミュニケーションがある企業は、
特にダイバーシティ構想を持つ企業に見られる。


アクサ生命保険株式会社
『障害者雇用 - アクサ生命保険株式会社』
〔2015-04-28 19:00〕




日本ユニシス株式会社
https://www.unisys.co.jp/


アクセンチュア株式会社
http://doda.jp/challenge/report/002.html

http://www.accenture.com/us-en/pages/index.aspx


ダブル・ピー株式会社
http://www.wp1.co.jp/index.html


株式会社プラスヴォイス
http://www.plusvoice.co.jp/index.php


大阪ガス株式会社
https://www.osakagas.co.jp/company/csr/charter03/handicapped.html



株式会社デンソー
http://www.denso.co.jp/ja/csr/social/social/event/150705a.html


トランスコスモス株式会社
『トランスコスモス株式会社の障害者雇用
 - 手話などによる、聴覚障害への配慮例』
〔2014-08-12 18:30〕



聴覚障害者雇用成功へのキーワードはどれも、
「コミュニケーション」にあるようだ。
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by bunbun6610 | 2015-05-06 19:00 | 就労後の聴覚障害者問題B


ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

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