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蒼穹 -そうきゅう-

通訳者の仕事



日本手話を楽しもう
『通訳者の仕事』
〔2015-03-19 10:00:00〕





先日、Eテレ『ろうを生きる 難聴を生きる』
というテレビでもあったが、
医師の藤田保氏(中途失聴者)は、聴覚障害者外来
に力を入れている。


『“働く”を見にいこう! 聞こえない医師・藤田保さん』
(医師 藤田 保 琵琶湖病院)
〔2015年3月29日(日) [Eテレ] 午後7時30分~7時45分
[再放送] 2015年4月3日(金) [Eテレ] 午前11時45分~〕





手話通訳者に話し言葉そのものを通訳してもらう
だけでなく、健聴者医師が診る場合と同じように、
音の情報も詳しく伝えるように、手話通訳者に
依頼している、という。

どういうことかというと、患者の声の調子とか、
話しぶりなども、患者の状態をチェックするための
情報として、貴重なのだという。

声の調子(抑揚など)が落ちついているのか、
いない様子なのか。
興奮しているのか、いないのか。
怒った口調なのか、穏やかな口調なのか。
静かな口調なのか、落ち込んだ口調なのか。

話し言葉をそのまま訳すだけでは不十分で、
そんな情報が健聴者医師には何となく分かっても、
聴覚障害者医師にはわからないのではいけない、
という話だった。


同じような話を、以前にも他の聴覚障害者からも
聞いたことがある。
その人も、中途失聴者で、ライターの仕事の時、
パソコン要約筆記を利用していた。
インタビューする相手の言葉を通訳するだけではなく、
周囲の音情報から分かる雰囲気も伝えてほしい、
と通訳者に要望していたそうだ。
やはり、音の世界を知っている中途失聴者ならでの
心配りだろう。

「自分は聴覚障害者だから」

で済ますのではなくて、健聴者ともフェアに、
そして自分は失聴前と変わらずプロとして、
その仕事をやり遂げたかったのだと思う。

そんな話もあるのである。


私も会社面接で、手話通訳者を利用する。
その事前打ち合わせをした時だった。



「今日の面接では、私は話すことができるので、
あなたは会社の人が話した時だけ、私に手話通訳を
して下さい。
ですから、私の隣に坐るのではなく、できるだけ
面接官の隣で手話通訳をして下さい。
面接官の質問に私が答える時は、読み取りの通訳は
要りません」

手話通訳者
「わかりました。
でも、もし面接官が聞き取りづらい様子だった場合は、
私が読み取り通訳もします」


「そうですね。
ではもしも、面接官が聞き取りにくい場合は、
私も手話をしますので、読み取り通訳もお願いします」

手話通訳者
「わかりました」


こういうこともある。
こういうことは、互いの信頼関係の上に
成り立っている。

大切なのは、通訳者が利用者の主権侵害を
しないことだ。
主権はあくまでも、利用者にある。
通訳者も人間として対等だが、通訳者の仕事や
決定権が、利用者より上(先)になってはいけない。


まれにではあるが、相手から音声があるのに、
通訳者が通訳せず、二者で音声会話をして
しまっている場合もある。

確かに、相手の健聴者が私にではなく、
手話通訳者に聞いていたのだから、
それでいいのかもしれない。
どうせ、私には関係のない話だったからだろう。
だが、それでいいのだろうか。

耳の聞こえない人が、自分の目の前で、
耳の聞こえる人同士で好き勝手に話しているのを
見たら、どう思うだろうか。
それが自分の依頼した通訳者がしていたら、
どう思うだろうか。




ちなみに、通訳者の心構えとして、下の言葉も参考
にならないだろうか。


「うまい字幕というのは、最後まで字を読んだという
意識を観客に抱かせないもの。
もし字幕に意識がいくなら、それは字幕が下手なの。
だから、字幕をやって

『どうだ、うまいだろう!』

と思うことはないですね」

『戸田奈津子、通訳を始めたきっかけは
映画評論家の故・水野晴郎さん』
〔2014-12-09 21:25〕




これは字幕翻訳者の事例だが、
手話・要約筆記者でも、
同じなのではないかと思うが。

上手い手話・要約筆記通訳があるとしたら、
多分、こういうものなんだろうな、と思う。
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by bunbun6610 | 2015-04-02 01:09 | 情報保障・通訳