味(技術)を盗む (3)自己訓練して味を盗む

『味(技術)を盗む (3)自己訓練して味を盗む』


職人世界では、これがまともなやり方だろう。
三國清三氏がやっていた方法だ。


『三國清三 - オテル・ドゥ・ミクニ〔東京・四谷〕
オーナー・シェフ』
〔2015-04-05 18:30〕




これには、自己訓練が必要だ。


『味(技術)を盗む (1)メモ魔になる』
〔2015-04-06 18:30〕




で述べたような、単なるデータ収集だけでは、
料理や菓子を味見して、その味を盗むことまでは
無理だ。

盗めるようになるためには、データに自分の味覚経験
を積んだ実績を投影させなければならない。

例えば、少し前にNHK連続テレビ小説『マッサン』


で、亀山政春がウイスキーのブレンド研究で、
数種類の原酒の香り、味を試していた(ティスティング)。
そんなふうに、味覚と嗅覚を使う分析官になるつもりで、
真剣に修業したほうがいい。

あのようなことは当然、料理人もパティシエも
やっている。
パティシエなら、洋酒も非常に多く使うので、
店にある酒は全部試しているのだ。
酒だけではない。
名称を覚えるだけではなく、その特徴を自分の
舌と鼻で覚える。
この訓練は一朝一夕にできるものではない。

それだけではなく、私は有名店にも行って、
よく料理や菓子を食べていた。
そういう味覚の訓練・修業も、美味しいものを
作れるようになるためには大切なのだ。

つまり、味を盗むため、そして美味しいものを
作れるようになるためには、味覚と嗅覚を使って、
イメージ・トレーニングをすることが必要だ。
その能力が、実力を左右すると言っても過言
ではない。


料理人なら、ソーシエ(※)が料理し終わった後、
ソース鍋にソースを残している場合がある。


(※)ソーシエとは(コトバンクより)
「【料理人】より

…【鈴木 晋一】
[ヨーロッパ]
 フランス料理がヨーロッパ中を席巻して久しく,
おおむねどの国においても,大所帯の調理場では,
19世紀末ころ大料理長オーギュスト・エスコフィエ
(1846‐1935)によって確立された組織に準拠して,
次のような職分を受け持つ。
肉料理全般とそのソースはソーシエsaucier,
魚料理全般とそのソースはポアソニエpoissonnier
の担当であるが,肉・魚・家禽(かきん)・野鳥獣などの
ローストやグリル,揚物はロティスールrôtisseurが
担当する。
また野菜料理,ポタージュや卵料理はアントルメティ
エentremétier,材料の購入・保管・仕込み,冷たい
オードブルはガルド=マンジェgarde‐manger,
菓子・デザートはパティシエpâtissier(場合によって
はこれは料理人の中には数えないこともある)で
分担する。…」




そんな時は「しめた」とばかりに、それを味見する。
何が入っていて、どういうふうにつくったのかは、
修業者ならば誰でも、事前に真剣な眼差しで、
ソーシエの動きを全て見ている。
その結果が、この味になるのだと、自分の舌で
記憶する。
味の記憶は、レシピ以上に大切なのである。
自分の味を創り出す場合にも、この確かな記憶力、
イメージ再生力がなくてはならないからだ。
新しい味も、必ずその上に築かれる。

以前に述べてきた『味(技術)を盗む』
〔(1)から(2)まで〕は、単なる味のコピーに
過ぎない。
だが、これは才能と努力がなければできないことだ。


残念なことに、この味を盗ませない先輩が多い。
ソースが用済みになると、さっさと水で流したり、
わざとゴミ箱に捨ててしまう先輩もよくいた。

それでも私は、ゴミ箱の中に入ったソースや料理の
味見をしていた。
ケーキも、切れ端でもよく拾って食べていた。
盗むためには、そういう“泥臭い執念”も必要だろう。

そういう意味では、ブラジルのサッカー選手などと
似ている。

覚えるため、盗むためには、徹底的にハングリー
になることだ。

だから私は、『包丁人 味平』の話だけでなく、
アントニオ猪木やタイガー・ジェット・シン、
『あしたのジョー』の話もしたのだ。
これらは決して、私の修業時代と無関係の話ではない。
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by bunbun6610 | 2015-04-08 18:30 | 聴覚障害者版サムハル

ある聴覚障害者から見た世界


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