語音明瞭度と感音性難聴障害

耳鼻科医の診療日記
『語音聴力検査』
〔2010-12-13 01:24〕




>「音自体の聞こえの程度というのは、純音聴力検査で
分かるわけですが、さらに語音聴力検査も追加して行う
意義としては、

「難聴の原因となっている障害部位の推定」、

「純音聴力検査の結果の信頼性の確認」、

「補聴器を付けた場合、効果があるかどうかの推定」

などがあります。」





この部分は、先天性の聴覚障害者に多い「感音性難聴
障害」を理解する上で、非常に重要だ。
特に「補聴器を付けた場合、効果があるかどうかの推定」
は、伝音性か感音性かの区別要素になりえるのかも
しれない。

当然、健聴者の、正しい聴覚障害者理解にも、役立つ。


補聴器を装用しないよりは、したほうが聞こえるのは
当たり前だろう。
この部分は

「(補聴器は)純音聴力を上げるための効果がある」

という意味だ。

しかし、伝音性難聴者には補聴器の装用効果が期待
できても、感音性がひどい人の場合は、ひどくなるほど
補聴器をつけても、言葉まで聞き分ける効果までは、
あまり上がらない。
これが語音明瞭度のレベルの違いなのである。
今、「レベル」という言葉を使ったが

「感音性聴障害になってしまうと、レベルに関係なく、
あまり改善が期待できない」

ということだろうと思われる。

医者も補聴器メーカーも、ある意味、
さじを投げてしまっているのだ。

つまり、音が聞こえるかどうか(純音聴力のレベル)と、
語音明瞭度のレベルは別であり、正比例するとは
限っていないのである。
これが、健聴者には理解しにくい特徴なのだろう。


実際に、聴覚障害2級のろう者が話していたのだが

「補聴器をすれば音は聞こえるけれども、
何を言っているのかまでは、わからない」

と言っている。
そういうことになってしまうのである。
その原因が、語音明瞭度の問題なのである。
ところが、聴覚障害の等級は、ほとんど聴力レベル
で決まってしまい、語音明瞭度のほうはあまり考慮
されていないようだ。
このことが、健聴者には一層理解しにくくしてしまう
のだろう。



『身体障害者福祉法における聴覚障害者の程度等級』



健聴者が「聴覚障害」を理解しにくくなってしまう原因
も、ここにあるのである。
伝音性は聴力レベルに比例するので理解しやすくても、
感音性は個人差が大きいせいか、理解しにくいようだ。





>「聴力正常な場合や伝音難聴では、ある程度音を
大きくすると語音は100%近くまで間違わずに聞き取る
ことが出来ます。」



健聴者や、耳が遠くなってきたおじいさんが補聴器を
装用すると効果がある、ということだ。
でも、それだけではない。
幼少期から聞こえていて、音声を聞き分ける訓練(聴能
訓練)に、どれだけ成功していたか、が非常に重要だと
思う。

このことについての詳細は

『聴覚障害者の、言葉の推測力』
〔2015-03-29 18:30〕



を読まれるとよいと思う。

この場合は筆談だったが、それでも、これなどは一部の
言葉がわかるだけで、相手が言いたいことの意味を推測
できてしまう例だ。
実際の装用者である聴覚障害者からすれば、これが可能
になるだけでも、補聴器は役に立つと言える。




>「それに対して感音難聴では、いくら音を大きくしても
最大語音明瞭度が上がらなくなります。
聞き取りやすい音の大きさの範囲が狭くなって、それ以上
音の大きさを大きくすると、むしろ言葉の聞き取りが悪く
なってしまうのです。」



簡単に言ってしまえば

「伝音性難聴ならば補聴器の効果は期待できるが、
感音性難聴の場合は、それほどの効果は期待でき
にくくなる」

ということだ。
それで、耳鼻科の医学では、一般論として次の結論
を出している。





>「補聴器を装着する最も大きな目的は、人の話を聞き
取ると言うことです。
ですから、いくら音が大きく聞こえても語音の聴取がうまく
いかなければ補聴器はあまり役に立たないと言うことに
なります。

目安として最大語音明瞭度が50%以下ですと補聴器
を付けても満足な結果が得られないことが多いようです。
ですから語音聴力検査によって予めどの程度補聴器が
役に立つのかということも判りますし、片側だけに
補聴器を付ける場合にはどちらの耳に付けた方がいい
かの指標ともなるのです。」



実際は、どうだろうか。
低い語音明瞭度であっても役に立つか、立たぬかは、
実はケースバイケースなのである。

下の本を読んでみてほしい。


『『「耳の不調」が脳までダメにする』(中川雅文/著)』
〔2014-07-29 18:30〕



聴覚障害者の言葉の推測力は、周りの人も
驚くほどスゴイ。
勿論、人によるが。

ろう学校ではなく、普通学校で育った聴覚障害者
のほうが、日本語推測力は高いかもしれない。

しかし、あくまでも過去に聞いたことがある音の、
経験的知識を用いているだけなので、
これから全く新しい言語を学ぶといった場合には、
いくら優れた人でも、これは使えない。

たとえば、全く知らない

「ギリシャ語の会話練習をしましょう」

なんてことになったら、全然わからないのである。
新しい仕事を覚えるために、新しい言葉を聞いても、
それは当然、推測不可能になる。
聴覚障害者だけ、どんどん落ちこぼれていくだろう。

言葉のイメージ力を出すには、音が少しでも聞こえる
ことのほかに、その言葉を知っていること
(その音声情報の知識が脳にあること)が重要なのだ。


(それを私は「音の世界を持っている聴覚障害者」と呼ぶ。
そして反対なのが「音の世界を知らない聴覚障害者」
と「音の世界を捨てた聴覚障害者」だと考えている。
同じ「聴覚障害者」と呼ばれていても、全く違う存在だ。)



ここは重要だから、しつこく、何度でも繰り返そう。

世の中には、

「耳が聞こえる者は言葉がしゃべれて、
耳が聞こえない者は言葉がしゃべれない。
あるいはしゃべれても発音がおかしい」

と思っているバカが腐るほどいる。

だから逆に

「耳が聞こえないのに、なぜしゃべれるのか?」

と言う健聴者がたくさんいる。

だが、言葉を正確にしゃべる能力というものは、
必ずしも耳が聞こえることや、声が出せる能力が
あればできる、というものではない。
それが出来るのは、脳が発語能力や、言葉を学習
していることや、様々な身体器官との連携システム
が完成していなければならない。
だから、逆に言うと、それらが完成している人は、
耳が聞こえなくなっても、かなりしゃべれる。

脳性マヒの障害者に言語障害の人が、よくいるらしい。
聞こえるのに、うまくしゃべれないそうだ。

例えば、下の記事にも、そのことが書いてある。


『『車椅子からウィンク 脳性マヒのママが
つづる愛と性』(1/2)』
〔2013-09-16 18:00〕



言語障害は、聴覚障害者特有の障害だとは、
限っていないのである。




「それでは、現実に口話をマスターしたろう者はいったい
どれほどいたのだろうか?
それはごく少数だった。
しかもその大半は、聴力を失う前に音声による話し言葉
をすでに使ってきた人たちが、難聴者、あるいは補聴器
の使用者だった。
聴こえる世界と、そうでない世界を自由に行き来できた
からこそ、口話も学習できたといえる。
そうでなければ、リップ・リーディングのマスターは至難
の業だった。」

『米国社会から見た手話』
〔2014-05-31 18:30〕
より、引用。




聞いたことがない言葉を聞いても、何て言っているのかは、
正確に聞き取れる健聴者は段々とわかるようになっても、
感音性難聴障害の人には難しいだろう。


そこで、私の経験に基づく、医者も知らない結論を
言おう。


語音明瞭度検査の結果が劣っているからといって、
言葉が理解できない、補聴器も役に立たない、
ということになるとは限らない。
(聞き取れているわけではないのだが)


言葉の理解は、脳やその他の器官(特に視覚)の
働きなどでも補えるので、決して語音明瞭度だけに
依存するわけではないのである。


人は必ずしも、相手の話すことの全部の言葉を、
ちゃんと聞き取って、言葉を理解しているわけでは
ない。
それは、聴覚障害者も同じだ。





〔関連記事〕

『感音性難聴障害と語音明瞭度検査(聴覚検査)』
〔2014-03-15 18:30〕



『語音明瞭度 - 医師(健聴者)の誤解』
〔2014-05-23 18:30〕






〔参考情報〕

大分県聴覚障害者センター
社会福祉法人 大分県聴覚障害者協会
『学習部屋 聴覚障害者への配慮に関する質問』

Q1 聴覚障害者にどんな配慮をしたら良いでしょうか
Q2 聴覚障害者は唇の動きで話の内容を理解できるのでしょうか
   また、相手が読話(どくわ)しやすいためにはどうすればいいの
Q3 聴覚障害者との筆談の注意点は?また、筆談の欠点は?
Q4 音の伝わるしくみ
Q5 聴覚障害者・難聴者・ろうあ者はどのように違うのでしょうか
Q6 ろう者は補聴器を付ければ、ことばが理解できるのですか
Q7 伝音性難聴・感音性難聴・混合性難聴の特徴を教えてください
Q8 高齢難聴者とコミュニケーションは?

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by bunbun6610 | 2015-03-31 18:30 | 聴覚障害


ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

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