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聴覚障害者への過小評価、不当評価

『聴覚障害者差別
 - 聴覚障害者への過小評価、不当評価』



当ブログ

『聴覚障害者の職場放棄』
〔2012-09-08 18:33〕



で述べている、聴覚障害者がすぐ退職していって
しまう原因の一つが、実はこれなのである。

聴覚障害者でも、会社側の雇用条件を全て飲めば、
飲食業界などでは働かせてもらえる場合は、よくある。

ただやはり、採用にはなっても、雇用条件に著しい
不利(差別)がつくケースが多いのだ。

例えば、募集要項に「調理」や「調理補助」とあった
から応募したことがあった。

それなのに

「洗い場でもいいですか?」

と言われた。

洗い場もやるのは勿論いいが、

「あなたの場合は耳が聞こえないから、
それだけ」

という意味に感じられた。

あるいは

「最初は皆、洗い場ですけど、
それでもよいですか?」

と言われ、働いてはみたものの、結局は自分だけ、
ずっと洗い場しかやらせてもらえなかった、
というケースもあった。

なかには、後輩の健常者や、障害のある健聴者も、
彼らが未経験者であるにもかかわらず、
最初から調理場で、皆と一緒の仕事をしていた。

それで、経験もあり調理師免許を持っている
私は洗い場、という差別もあった。
超有名ホテルで、実際にあった聴覚障害者差別事例だ。


ハローワークでの求人票には「食材の運搬」と
なっているのに、面接へ行くとシェフ自ら

「従業員食堂の清掃や、食材の補充などをして
いただきます」

と説明していた。

「それならばやらせていただきます」

と言った。

だが実際に入ってみると、その仕事は一日8時間
労働のうちの2時間だけで、後はずっと、
一人作業での洗い場だった。
つまり、仕事の大半は洗い場だった。

ところが、そのことは求人票には書いていないばかりか、
シェフとの面談でも一切、説明されなかった。
それで、もう一人のろう者は、すぐ辞めたとも考えられる。
「騙された」という気持ちがあったのは、私も同じだった。

シェフは

「この仕事のことを言うと、誰も入ってきてくれなくて、
ウチは困っているから」

という理由で、隠していたのだとわかった。
他の障害者には障害の状況を考えても、
能力的に無理だと分かっていたので、
なかでも身体能力が高いと言われている、
聴覚障害者をターゲットにしていたのだ。
それでこの会社は、聴覚障害者2人を
いっぺんに雇った。

ところが、一人はたった二日で辞めて
しまったので、その後は私一人に負担が
かかってしまっていた。

会社は、もう一人のろう者と交替で
やってもらう予定だったそうだが、
一人がすぐ辞めてしまったので、
一日300食の従業員食堂の洗い場作業を、
一人で毎日やらされていたのだ。

時々、健常者が交替する事もあったが、
皆嫌がっていた。
それどころか、パティスリーの洗い場の人までも、
私の仕事場にわざわざ来て

「この洗い物もやってほしい」

と、余計に仕事を持って来るようになってきた。
頑張れば頑張るだけ、そういう状況になるだけで、
一向に昇進も昇給もなかった。

上司は大変喜んでいて

「よくやってくれている」

と評価していたが。

昼食時間に、一旦交替しなければならない
時がある。
食事が終わった私が交替すると、洗い場には
洗い物がたくさん溜まっていた。
だから

「健常者はなぜ、こんなに仕事が遅いのか」

と思った。

だからやる気の面でも能力的にも、自分のほうが
優れていると、一目でわかった。

優秀でも、聴覚障害だと

「調理の仕事がしたい」

という希望は、結局無視されてしまうほうが多く、
最終的に

「洗い場での一人作業」

になることが、よくある。

なぜだろうか。
理由は、簡単だ。
差別があるからだ。

聴覚障害というハンディは、大きい。
しかしその差別は、社会がつくりだしたものなのだ。



〔参考情報〕


『優秀なろう者が辞めたのはなぜ?』
〔2013-06-01 18:00〕



『職場内障害者授産施設 第二篇
 (39)上司の差別的扱い』
〔2015-03-04 22:41〕







【追記】




昔、「すかいらーく」でアルバイトをしたこと
があった。
当時、私は調理師免許を持っていたが、
洗い場担当になった。
店長の判断だった。

店長から言われたことがあった。

「足の障害を持った大学生アルバイターが
いるので、洗い場だけでなく、
忙しくて彼がピンチの時には、
洗い場の仕事をしばらく中止して、
彼をサポートしてほしい」

と言われた。

店長の指示としては、当然ではある。
客を待たせることは出来ない。
注文が来たら、可能な限り速く、
オーダーをさばかなければならない。

洗い場スタッフまで一時動員して、
オーダーをさばかなければならないほどの、
忙しさだった。

当時、バブル経済全盛期だった。
その時期での「すかいらーく」はファミレス御三家
(他はロイヤルホスト、デニーズ)と言われ、
人気絶頂期でもあった。
入店ピークの時間帯は、物凄く忙しかった。

足の障害を持った大学生は、デザート係を担当
していた。
ソフトドリンクとかパフェ、クレープなどを作る
仕事だった。
狭いスペースでの作業なので、動く必要がない
仕事だった。
それと、恐らく義足なのだろうから、
重いものは持てない。
洗い場の仕事は無理なのは明らかだった。
皿を大量に持ち運ぶ最中、つまづいたり、
バランスを崩して落としたりすると、
店に大きな損害を与えてしまうことになる。

そういうことも十分に起こりえるから、
彼はデザート係を任命されたのだろう。

一方、聴覚障害者は「身体障害者」という
区分でも、一般的な意味での身体障害者
とは言えない。
耳が聞こえない、という障害がある以外は、
健常者と違わない。
労働力としては、仕事内容によっては
健常者並だとも言える。

そこに目をつけて聴覚障害者を雇ってみた
のが、その店長だった。

お互いに、異なる障害をカバーし合うという点は、
確かに素晴らしいかもしれない。
だがこの場合は、障害者をモノとしか考えて
いないような気もするのだ。
労使関係では、それが当たり前なのだろうが。


店長の指示通りにやってみたが、
これが想像を絶するほど大変だった。
洗い場だって、一人で全部の食器類を洗浄
しなければならないから、少しでも中止すると、
どんどん溜まる。
そんな最中に

「デザートを手伝うことを優先して」

と言われたのだから、無理があった。

彼は、健常者と同じスピードで仕事をすることが
できなかった。
本当なら、他の人に替わるか、もう一人入れる
しかなかった。

彼を辞めさせるか、それとももう一人雇うか。

後者は経営上、無理な判断だ。
それで私に、半ば無茶苦茶な指示が来たのだ。

そんなことを「差別」とは、言いたくない。
できるだけの協力はした。
でも、きつ過ぎた。

辞める時には

「時給を100円アップしてあげるから、
辞めないでくれ」

と言われた。
でも、そんな問題じゃなかった。


でも、これと全く同じことが、
世界的にも超有名なホテルRに入った時にも
あった。

それだけではない。
聴覚障害者は精神障害者との間でも、
著しい格差がある。


『職場内障害者授産施設 第二篇
 (39)上司の差別的扱い』
〔2015-03-04 22:41〕



『職場内障害者授産施設 第二篇
 (41)精神障害者を甘やかす職場』
〔2015-03-09 22:03〕



『VIP障害者 - 障害を隠す障害者』
〔2014-04-17 18:30〕



「聴覚障害者にも特別扱いしろ」

なんて言うつもりはない。
だが、聴覚障害者一人に負わすなど、
我慢にも限度がある。

なぜ聴覚障害者だけ、常にこういう運命に
ならなければならないのか。
by bunbun6610 | 2015-03-25 18:30 | R.リッツカールトン東京

ある障害者から見た世界


by bunbun6610