日本語、手話 ~新しい言葉、新しくなる言葉

テレビのテロップみたいなもので

「JK(女子高生)」

とあった。
それを初めて見るまでは、JKの意味が
よくわからなかった。
日本語の女子高生を「JK」と言うのには、
驚いたというか、唖然としてしまった。

世の中は変わるものだ。
言葉も、変わっていったり、次々と新しい
言葉が出てくる。

人が生きている世界なのだから、
それは当然だろう。
しかし私は、その世界でもあまり変わらずに
生きているようだ。
「現代人」というよりは「生きた化石」なのかも
しれない。

それは、耳から情報が入らないせいもある。
新しい情報は、まず耳から入る場合が多いものだ。
それが定着しないと文字情報となって、
出てこないような気がする。


ちょっと前に、電車の中で、若い聴覚障害者
のカップルを見たことがある。
そのカップルをしばらく見ていたら、
しきりに手を動かしていた。
カップルのほうは、JR綾瀬駅で下車した。
その駅からは、都立葛飾ろう学校が近くにある。

ということは、難聴者ではなく、ろう者なのかも
しれない。
けれども、彼らの手話は速いのなんのって・・・。

それに、私たちの世代が使っている手話とは、
明らかに違うものだったように思う。

キュードスピーチという、聴覚障害者が使う話法
かもしれない。



『本校のキュードスピーチと口形文字』



『コミュニケーション方法』


『誤解されるバイリンガル教育』



『私たち(ろう者)の話を聞いて
第2回「家族とのコミュニケーション」』



あのカップルがもし、あの時にキュードスピーチを
使っていたのだとすれば、実際にじっくり見たのは
初めてだ。
音声日本語をしゃべるのと同様に、口がパクパク
動いていた。
それでいて、手も右手だけで、指文字やら使って
いるように思えた。
だから、日本手話ではないと思う。

手話・筆談以外にも、そんなコミュニケーション方法
があることに驚いてしまった。


もう一つ、興味深いエピソードがある。
手話講習会では、手話指導の資格を持ったろう者
が指導している。
手話講習会が終わると、今度は

「酒話(しゅわ=手話)会」

をやるところもある。
酒話会というのは、手話を習うところではない。
自分の好きな手話を使ってもいいところだ。

勿論、自分で考え出した、独創的な手話を使う
ろう者はたくさんいる。
冗談で使う手話が、その典型だ。

ところが、ろう者に誘われて一緒についてきた
受講生は

「ここで、ろう者講師を独り占めして、
個人レッスンを受けたい」

とばかりに、ろう者に質問攻めをした。
手話講習会でも、よく

「わからない手話があったら、ろう者にたずねて
みましょう。
指文字を覚えれば、その時に役立ちます」

などと教わっていると思う。

それで、何人もの受講生が酒話会について来て、
ろう者に指文字で質問攻めにしていた。

ある時は

「(指文字)『に/ん/じ/ん(人参)』

って、手話でどうやって表しますか?」

と質問していた。

ろう者は答えた。

まず「赤」を表して、次に両手でCLを使い、
人参の形状を表現した。

私も、その手話を使っていた。



【CL〔類辞(classifieres)〕については、
下の記事を参照】

『聞こえない赤ちゃんのための
 はじめての日本手話CL絵本「ボール」』
〔2015-02-12 00:18〕



『手話のダイグロシア』
〔2011-06-21 00:16〕




ところが、受講生は隣の健聴者と声で相談し、
それから私たちにスマートフォンから動画を
出して見せて

「でも、インターネットで調べたら、
『人参』はこんな手話でしたよ」

と言ってきた。

受講生が見せてきたそれを見ると、確かに違う。
しかも、それは私たちが初めて見る手話だった。

左手で指文字「に」を表し、同時に右手でCLを
使い、人参の形状を表現していたのだ。


古くからある手話では、人参の特徴である「赤」
が表されるが、新しい手話では指文字に依存
しているようだ。

ろう者は、一度は「なるほど」と言った。
だが、やはり

「それは、私たちの手話じゃないよ。
最近では、スマホのアプリで、色々な手話表現が
インターネット動画に投稿されているから、
そういうのもあるんだね。
でも私たちは、そんな表し方は初めて見たよ。
ウソだと思うのなら、他のろう者にも聞いてみて
ごらん」


それで受講生は、他のろう者にも聞き回ってみた。

結局、インターネット動画に投稿されていた手話は、
誰も使ったことがない、見たことがない、という。

ろう者の伝統的手話(日本手話)の場合は、
「人参」は「赤」という表現の後にCLを使っている。
つまり、二度の表現がある。

しかし、動画の手話は指文字とCLの合成表現で、
一度で表している。
だからこれも、若い人が考えた手話なのかもしれない、
と思われる。
その方が時間短縮になり、伝達が速くなるからだ。

「手話が面倒でなくなった。
おまけに、簡単になったので、覚えるのも速く
なって便利。
早速、広めてみたい」

と、投稿者は思ったのかもしれない。

しかし、現在はまだまだ賛否両論、というより、
最近考案された手話に、疑問を持つ人が多い
ことも事実だ。





〔参考情報〕


指文字で質問してみたが、うまくいかなかった事例には、
下の記事もある。

『手話の聞き方』
〔2012-01-12 21:08〕

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by bunbun6610 | 2015-03-24 18:30 | 手話
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ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610
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