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ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

聴覚障害と“心の病”との関係

以前に


『ろう者のうつ病』
〔2011-10-04 02:34〕




『聴覚障害者の職場放棄』
〔2012-09-08 18:33〕



という記事を書いた。


会社面接に行っても

「身体の調子はどうですか?
病院には行っていますか?」

と、必ず聞かれる。

この質問だけでなく

「過去に、心の病気とかになって、
病院に行かれたことはありますか?」

という、露骨な質問をしている会社もあった。
別に、聴覚障害者だけに限った質問事項ではない。

しかし、聴覚障害者の場合は、
本当にその質問に当てはまってしまっている
人も少なくない。

その面接質問をした企業は、聴覚障害者を
多数雇用している会社だった。

だから、聴覚障害者の中にはそういうふうになって
しまう人もいる、という情報も把握していたのだろう。

テレビでも出ていたから、聴覚障害者の弱点も
わかっているに違いない。
しかも、長く働いている聴覚障害者もいるらしい。
ということは、そこは一応、聴覚障害者雇用の
成功モデルと言えるだろう。

とは言っても、やはり、そういう心の弱点が少しでも
見え隠れする聴覚障害者がいたら、会社はその人を
落としてきただろう。

そういう厳しい選考をしての雇用なのだろうから、
成功したとも言える。
つまりそれは、ほんの一握りの、完璧・優秀な
聴覚障害者を集めた話なのだと思う。

面接は決して、求職者と会社との「お見合い」の
場ではない。
そこはギャンブラーの対決の場と同じで、
本当は「騙し合い」をする場だ。

求職者側としては、生活のために何が何でも
働きたいのだから、自分の過去にそんなことが
あったとしても、面接ではそれを隠し通そうとする
に決まっているだろう。

だがそれでも、詳しく聞き込みをされて、
最後には本当のことをポロッと言ってしまったり、
不安要素を滲み出してしまっていたりする場合
もあるのだろう。

だから面接官は、一応はこの質問を入れてみる
価値はある、と思っているのかもしれない。


実は私も、“うつ病”という診断になるとまでは
いかなくても

「会社に行きたくない」

気分になったり

「胸がムカムカして、仕事に集中力がなくなってきた」

などの原因で、会社を休んだことは何回かある。

いずれも、理由を正直に言わずに会社を休んだ。

「朝起きた時から、頭が痛いので」

などと言っていた。

だから、会社のほうも

「そのぐらいならば、誰にだってある」

と思い、気にしないのだろう。

このように、聴覚障害者は自分の心に不調が見える、
とハッキリ分かっていても、会社には隠したがるので、
その原因についても、周囲は理解できない。

そこから、いわゆる“聴覚障害者への誤解”と言われる
ようなことが起きることも少なくない。

例えば

「聴覚障害者は、耳が聞こえないだけだ」

とか、軽く見過ぎている場合は、かなりたくさんある。

ある意味、“聴覚障害者の自業自得”なのだけれども、
会社に知られると

「次の雇用契約更新はなくなるかも・・・」

と不安になり、一層怖くなってしまう。

あるいは

「自分がまだダメな人間だからだ。
もっと頑張らなくては・・・」

などといった、過度な自己反省心が無理に働いて
いる場合もあるだろう。
本当は一人で抱え込んでいる問題ではないのに、だ。

もう一つの大きな原因として挙げられるのが、
やはりコミュニケーション障害による、
健聴者社会からの孤立だ。
ほとんどの健聴者が、これに気づかないのだ。


私はほぼ普通にしゃべれるのだが、それでも、
周囲の健聴者からは、コミュニケーションを
疎まれている、と強く感じている。

それで自己嫌悪になることはないが、
周囲の人を激しく憎悪してしまうことはある。

勿論、そう思ってしまう自分の感情を
コントロールしなければならない。
それが大変なのだ。
大変なエネルギーがいる。
そのことが何となく自分の体からにじみ出て
しまっているのかどうかわからないが

「自分はますます疎外されている」

と思い、自分から周囲の人と距離を
置いてしまう。

実際よく、他の人からは

「あなたは話しかけにくい人、という印象がある」

と言われる。
毎日がその繰り返しなので、自分と周囲の
人々との距離は、どんどん離れていくのを
実感している。

けれども、周囲の健聴者は

「彼は聴覚障害者なのだから、どうでもいい」

と思っているのだ。

これが進むと、その聴覚障害者の心理状態は
危険域に入ってしまう。
私もよく、発狂寸前になり、いつでもどこでも、
突然、わめき散らしてしまうことがある。

けれども、会社の中でそれは絶対に出来ない。
だからその時は、自分の全エネルギーを
使ってでも、自分の病的心理を、理性的心理
が抑えこもうとするのだ。

けれども、それをずっと続けることは難しい。

結局、会社を辞め、また転職を繰り返すことが
多くなってしまうのだ。

だから履歴書を見られただけで

「何か不安要素がある」

と見破られ、面接にも進めなくなる場合が
多くなるのだ。

会社に

「このことを理解してほしい」

と求めたくても、それは無理な話だ。
働かなくてすむようになるまではずっと、
我慢するしかない。

だから私は、自分のブログで


「こういう問題点が、聴覚障害者にはあります」

と伝えて、これを研究し支援する人がもっと
増えてほしい、と思っているのだ。

正直、会社の人には読まれたくない話だ。
だが、知ってもらわなければ、この問題は解決
できない。



〔関連情報〕

『就労前の聴覚障害者問題
 - 音声コミュニケーション妥協は「歩み寄り」ではない』
〔2015-02-01 20:00〕




特に、ろう学校の関係者にはお願いしたいこと
がある。
それは、卒業生に転職歴をやたらとつくって
しまわないように、社会人になるための指導だけ
でなく、若いうちから自分の聴覚障害をしっかりと
受容させ、そして社会に出たら、彼らが自発的に
障害のことを他者にきちんと伝え、協力を得ていく
術を生徒に身につけさせたほうがいい。

どんなに優秀な才能がある聴覚障害者でも、
それが出来ない人は、社会で受け入れられる
のは難しいのではないだろうか。

障害者雇用は、決して難しい仕事ではない。
単純な仕事ばかりである。
ゆえに、企業側でも、能力よりも協調性が重んじ
られている場合が圧倒的に多いものである。(※)


(※)
『『障害者求人の特異性「オーバースペック?」』』
〔2013-08-16 18:30〕





たとえ、他の障害者と一緒に働くことになっても、
パートナーが聴覚障害者でない限りは、
圧倒的多数の健聴者とうまくやっていかなければ
ならないのだ。
そのプレッシャーに一人で耐え抜くことは困難だ。

企業側だけでなく、学校側までもがそんなことを
一人の聴覚障害者に期待するのは、
あまりにも酷だと思う。

人間は、一人では生きてゆけないものだ。
そこをよく考えて、必要なことをよく吟味し、
学校教育に取り込んでいただきたい。




〔2015年7月26日追記〕
(参考情報)


「働く広場2015年5月号」
(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構)
P10~11
『聴覚障害者のコミュニケーション支援 Vol.1
職場コミュニケーションの現状と課題』
https://www.jeed.or.jp/disability/data/works/book/hiroba_201505/index.html#page=13

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by bunbun6610 | 2015-03-19 19:00 | 就労後の聴覚障害者問題B