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ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

花燃ゆ - 第5話 『志の果て』

NHK大河ドラマ
『花燃ゆ』



第5話 『志の果て』


文;「もしうちが、獄につながれたとしたら、
それでも母上は会いに来てくれますか?
うちが戻るんを、待っとってくれますか?」

滝;「文。
あなたがどんな姿になっても、
人様からどんなひどいことを言われても、
母は必ず、あなたを待ってますよ。
そして『お帰り』と言うてあげます。」

文;「母上・・・。」

滝;「待っとるだけなら、お金はかからんしね。」








〔野山獄での場面①〕

吉村善作;「あれが富永有隣(ゆうりん)じゃ。
あれでも、かつては、明倫館の秀才と
うたわれた男だそうじゃが。
ハハハハ!」

吉田寅次郎;「富永・・・。」

富永;「俳句だと?
町人の遊芸(ゆげい)ごときに、
気をようしおって!」

吉村;「あぶれ者のたわ言なんぞ、
聞く耳持たんわ。」

富永;「ええ! 何じゃと? 何じゃ!」

吉田;「すばらしい。ん?
獄の中にあって、なお、周りを罵倒して
やまんとは。
近々、ぜひ。」







〔岩倉獄での場面①〕

金子ツル(重輔の母);「帰ろう。
ここから逃げよう。」

金子重輔(しげのすけ);「わしは逃げん。」

ツル;「重輔!」

重輔;「下田の奉行所で先生が、こう言われたんじゃ。
『我らは、逃げも隠れもせん。
罪を恐れ、逃げるような武士は、長州には一人もおらん。
私も金子も、長州の武士にござる。」



〔回想〕
重輔;「お頼み申す!
ペリー提督!
わしをメリケンに連れていけ! ホープ!」

(ペリー提督の服に着いていたボタオ(ボタン)を
引きちぎる)


寅次郎;「金子君。」

重輔;「うっ・・・ああ! ああ~!」

寅次郎;「金子君。」

重輔;「うっ・・・ああ~! ああ~!」

寅次郎;「金子君!」

寅次郎;「ボタオじゃ。」

重輔;「ボタオ?」

寅次郎;「西洋の着物に使う飾りじゃ。
これを使(つこ)うて、バラバラの布と布を
つなぎ止める。
我々のようですね。
もし、君がいなかったら、今の私はここにはおらん。
これは、取って置きなさい。
この先、どんな苦難に襲われようと、
今夜の我々の絆があれば、
志は必ず果たせます。
その証しに。」



〔岩倉獄での場面①に戻る〕

重輔;「これは、わしの宝じゃ・・・。
何度でも、何度でも、また先生と、
また海を渡るんじゃ・・・。」

ツル;「もう、そねな事せんでええ!」

(ツルは、泣き崩れる)

ツル;「家に帰ろう。
母と一緒に、静かに暮らそう。
なっ?」

重輔;「次の船は、いつ来るんかのう・・・。
今度こそ、海の向こうへ渡りたいもんじゃのう・・・。
先生・・・。先生・・・。」

ツル;「お前をこねぇにしたんは、誰?」




〔野山獄での場面②〕

(寅次郎が有隣に、本を差し出す)

有隣;「何じゃ、それは。」

寅次郎;「ご意見を伺いたいんです。
富永様の。ぜひ。」

有隣;「嫌じゃ。」

寅次郎;「富永様は、わざわざ、ご自分を
卑下するように振る舞い、垣根を作って
おられる。
そのような構えは、ご無用でござる。
どうぞ、ご教授を。」

有隣;「ならば、教えて進ぜよう。
わしの学の真髄を。」

寅次郎;「はい。」

有隣;「生きて、腐って、呪え。
ここで語る学問など、何の意味もない。」

寅次郎;「いいえ!
こんな所だからこそ、功利を排した
真の学問ができるはず。」

有隣;「ならば、聞く。
お前には、共に海を渡ろうとした弟子が
いるそうだな。」

寅次郎;「金子は弟子ではない。
友です。」

有隣;「友!
いいか?
その友とやらは、お前がここで、
真の学問とやらを語っている間に、
向かいの獄で、たった一人、
虫けらのように死んでいくんじゃ。

お前がどんなに学ぼうとも、
ここにおる限り、
お前は友一人の命も救えん。
それが、お前にとって、まずは学ぶべき、
まこと。
まごう事なき現(うつつ)!
お前の学問とは、所詮、紙の上の幻じゃ。」

(有燐は、寅次郎が差し出した本を奪い、
引きちぎる。
そして、寅次郎ともみ合いになる。)

有隣;「ええぞ、ええぞ!」

福川;「吉田!」

有隣;「ええぞ!
腹の立つ事を言われりゃ、殺しとうなる。
殴りとうなる。
人とは、そういう生き物なんじゃ。」

寅次郎;「違う!
人とは・・・人の本性は善じゃ!
明日の己を、己で切り開く事ができる
唯一のものじゃ!」

有隣;「人とは、悪じゃ!
その証拠に、たった今、お前はわしを殴ろうと
したではないか。
恥じる事はない!
心のままに生きればよい!
生きて、腐って、呪え。
生きて、腐って、呪え。」





〔野山獄での場面③〕

寅次郎;「文か。」

文;「はい。」

文;「金子様が亡くなりました。
金子様は、最後の最後まで、兄上と共に
海を渡る夢をみておられました。
何度でも挑んでみせると。
教えてつかぁさい。
何で金子様は、死ななくてはならなかったん
ですか?
何で国禁を犯してまで、兄上は海を渡ろう
としたんですか?」

寅次郎;「あの夜、俺たちは光を見たんじゃ。
目指す船の先に、新しい日本があると。」

文;「見えたんは、異国の光だけですか?
うちには、大切な方たちがいます。
兄上が国禁を犯したあと、梅兄様は、
お役を免じられました。
寿姉様も、ご城下での暮らし向きが立ち
ゆかず、私たちを助けてくれるもんは誰も
なく、父上がお腹を召してわびようと
なされました。
私たちを守るために。
兄上の見たもんが新しい国の光だという
んなら、何でそれは、私たちを照らしては
くれんんかったんでしょう。」

寅次郎;「それは・・・。」

文;「金子様は、寅兄様が殺したんです。
己の欲に、己を慕う者を巻き込んだ。」

寅次郎;「違う!
俺は金子と生きたんじゃ。
夜の海を二人、大義のために、
大義に生きようと、ひたすらに・・・。」

文;「ならば、証しを見せてつかぁさい!」

寅次郎;「証し?」

文;「あの夜、兄上の目指した光が、
ただの私事ではない、もっともっと、
ふとい大義の果ての志やったというんなら、
志は死なない!
たとえ一生、牢の中にあろうとも、絶望はない!
金子様は、生きて幸せやったんやと・・・。
暗い獄の中で・・・金子様はずっと、
ボタオを握りしめていました。
兄上との大切な思い出を。」




映画『ブルベイカー』と似ている。

刑務所を追放される所長・ブルベイカーに、
クームスが

「(あんたが)正しかった」

と一言、静かに、しかし力強く宣言した。
クームスは前には、覚悟を決めて告発し
殺害されたエイブラハムを見て

「あんたは危険なヤツだ。
人間、死んじまったら終わりなんだぜ」

と、ブルベイカーに言っていた。
そのクームスが、変わった。


まだ本当の「志の果て」ではない。
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by bunbun6610 | 2015-02-08 10:25 | NHK大河ドラマ『花燃ゆ』