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ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

職場問題解決策 - 聴覚障害者との上手なコミュニケーションとは

『健聴者が筆談で失敗した事例』


出社したら、皆が見る予定表にバツ印が
つけてあった。
そして

「何度言ったらわかるの!
書き直せ!」

と書いてあった。
(「何度」かと言うと、これで二度目であった)

予定表は、今でこそ皆で書き込んでいるから、
この怒りの文言は、誰が誰に対して言って
いるのか、全然わからない。
それに、この文言の意味自体が、
私にはわからなかった。

そして、9:00ギリギリになって職場に
もどってきたYさんが

「ね、『こうして』って言っているの」

と伝えてくれた。
Yさんには意味がわかるらしい。
なるほど、これで大体わかった。


予定表には6枡あるので、6つの曜日しか
書けない。
月曜日から書き始めたとして、日曜日まで
書いていたら、次ページの最初の枡は
日曜日になってしまう。

そして、それを続けて書いていたら、
さらにその次のページの最初は土曜日に
なってしまう。

S上司は、最初の枡は常に月曜日に
しておきたかったのだ。


日曜日は要らなかった。

それで、S上司はカンカンに怒っていた、
というわけだ。

予定表に日付等を書き込んでいたのは、
私だった。


こうなった事情を理解するためには、まず、
過去にさかのぼって、順番に説明しなければ
ならない。

それは、もともとは、障害者パートタイマー
の仕事の予定を書くためのものだった。

初めはAさん、Sさんと私の3人分があって、
それぞれ専用で使い分けられていた。

ところが、AさんもSさんも退職すると、
それは私の分だけになっていた。

つまり、今使っている予定表は、私の予定表
という実態になっていたのだ。

しかし、その約2ヵ月後になって、
Yさんが入社してきた。

それからは、その予定表は各人ごとに持つの
ではなく、共用する、という実態に変わった。

ルールの説明はなく、よくある“暗黙の了解”
みたいになっていた。

それから2ヵ月ほどが過ぎると、今度は、
それまで全く関係のなかったS上司まで
割り込んできて、そしてこう言った。

「これは、皆が使う予定表だから、
あなたの書き方ではダメ。
私の言う通りに書いて!」


と、文句を言ってきた。

「書き方の条件は何ですか?」

と聞いた。
S上司は筆談で

(A)月曜日から日曜日まで、抜かさずに書いて。

(B)祝日も抜かさずに書いて。

私;「でも、土、日、祝日は、障害者は休みですよ」

S上司;「いいの! それでも抜かさず書いておいて!」

と伝えたので、私はその通りに書いた。

私;「わかりました。
こうすればいいのですね」

S上司;「そうそう」


こういう封建的な会社で長く生きてきた老人には、
合理的理由なんて言っても、通じないことは
わかっている。

上の命令は絶対。
楯突くと、ろくなことはないこともわかっている。
だから私は

「わかりました」

と言って、その通りにした。


それで、しばらくは落ちついていたのだが、
ある日になって再び

「何度言ったらわかるの!
書き直せ!」

と、S上司から二度目のお叱りを受けた、
というわけだ。

S上司が最初に説明した通りに書いていたら、
ずれてしまう。
それに気づいたS上司は怒ったわけだ。


しかし、その間違った指示をしたのは、
他の誰でもない、S上司だったのである。

だから私は、S上司からミスの責任を押しつけ
られる形となった。


皆さんは、手話サークルやろう者講演会などで、
今の高齢ろう者から

「自分が罪を被って、我慢していた」

という話を聞いたことがないだろうか。
実は、これもそのことなのである。


私も実際、Yさんに言われるまで全く気が
つかなかった。
S上司が間違っている以上、そうなるのが
当たり前だったのだから。

つまり、これはコミュニケーションのすれ違いが
起きていた事例である。
原因を明かせば、本当はS上司は


「(A’)予定表は最初が月曜日、最後が土曜日に
なるように作成しろ!

(B)祝日があっても、それを抜かすな!

そして、

(C)次の週は、また新しいページに月曜日から
土曜日まで、同じように書いて!」


としたかったのだ。
ところが、S上司は最初の説明で間違えてしまった。
〔(A’)を(A)にしてしまっていた〕
しかも、S上司はその間違いに気づけなかったのだ。

だから、私も最初に注意を受けた時に理解したのは、
(A)(B)の部分だけだった。
本当は(A)は間違いで、(A´)が正しい。
さらに、S上司は最初の説明で(C)を言わなかった。

だから、このすれ違いの原因は、S上司のコミュニ
ケーションの取り方に問題があった。
それで私は、S上司が書いた文言の横に

「こうなったのは、S上司のコミュニケーションの
取り方に問題があったからなのでは?
違いますか?」

と書いて、S上司の机上に置いた。
その後、S上司は何も言わなくなり、無視していた。
S上司は自分の恥に、気づいたのだろう。

だけども、これは、こんなに長い文章にしなくとも
良かった。

「日曜日だけ抜かして書け。
こういうふうに書くんだよ」


と筆談し、一回やって見せる。
そして次ページに、次の週を書かせてみて、
聴覚障害者が正しく理解したかどうか、確認する。
こうすれば良かったし、簡単だったのだ。


これは、手話通訳と同じく、なるべく余計な言葉は
省いたほうが、よくわかる例である。
S上司の、日本語の遣い方の問題でもある。

聴覚障害者との筆談の場合で、健聴者がよくやって
しまうミスは“しゃべりながら書くこと”だ。

その時に、しゃべっている内容と少し違うことを
書いてしまっている場合があるようだ。
つまり、健聴者はしゃべり言葉と同じことは書いていない。
筆談に集中しないで、しゃべりながら書いていると、
書くほうは止まってしまったり、大事なことを省いて
しまっている場合がある。

これでは、後になって聴覚障害者のほうが気づく。
損をするのは聴覚障害者のほうだ。
さらに「ミスが多い」とか「バカだ」と言われる。
私も散々言われたことがある。
上司からの評価も低くされてしまう。
だからろう者は「罪を被る」と証言しているのだ。

ところが、問題の張本人である健聴者のほうは、
それに気づいていないのである。
だから、こういうすれ違いが起きるのだ。

当然、このツケを払わされているのは、
実は聴覚障害者のほうなのである。

こういう場合に“罪を被る”のは、いつも聴覚障害者
のほうなのだ。

こういう場合、やはり聴覚障害者のほうが、
冷静に物事を見ている。

健聴者は自分の胸に手を当ててみて、
静かに反省すべきだろう。


筆談の場合には

①正確な知識

②論理的思考に基づく、正確な文章力

③正確なコミュニケーション力

が必要だと思う。
頭を使うものなので

「誰にでも簡単にできる」

というものではないだろう。
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by bunbun6610 | 2014-12-15 18:30 | 就労後の聴覚障害者問題E