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ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

感音性難聴障害者の語音明瞭度の実際 「4階?」 「溶解」


『<佐村河内氏>聴覚診断
 最も軽い6級に該当せず手帳返納』
〔2014-03-07 23:52〕



>「「右耳が約49デシベル、左耳が約51デシベル
以上でないと聞こえない」。」



>「「向かい合って大声で話せば聞こえる
補聴器をつければ日常生活に支障はない
全ろうとは大きく違う。」」




果たして、本当にそうだろうか。

確かに、医学的には全ろうとは大きく違う。
しかし、音や環境によっては、難聴者にも
“聞き取れない”“聞こえない”場合はある。

聞き取れない音があるから、語音明瞭度
検査で“異変”が顕れるのである。

医師は、何のためにこの検査をするのか、
自分でわかっているのだろうか。
このことを理解していないのではないだろうか。
信じられない説明だと思う。

少なくとも、この説明ではあまりに単純過ぎる。
誤解が広がるのも無理もない。


例えば、下の事例を見ていただきたい。



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『感音性難聴障害と語音明瞭度検査(聴覚検査)』
〔2014-03-15 18:30〕



「疑問に思った体験は、実は聴覚障害者の私にもあった。

パティシェの仕事をしていた時、よく「冷蔵庫」とか
「冷凍庫」という、よく似た言葉が、先輩の口から
飛び出してくる。
この2つの言葉は非常によく似ていて、感音性難聴の
私は、聞き分けることが難しかった。
それに悩んでいた私は、ある日、先輩に相談したのだ。

私;「先輩が「これは冷蔵庫に入れて」とか、
「冷凍庫に入れて」とか指示しますが、
僕はこの2つの言葉を正確に聞き分けることができません。
だから、冷蔵庫なら「あっち」(指差しで)とか、
「冷凍庫」なら「こっち」(指差しで)とか、
ジェスチャーを交えて指示してもらえると、
コミュニケーションが確実になる、と思うのですが・・・」

先輩;「何で、そんなことしなくちゃならないの?
私たちは、あなたのために、聞き取れなかったら何度も何度も、
繰り返し言うから」

これには内心、呆れてしまった。
私の障害について、先輩は正しく理解してくれなかったからだ。」

『バリバラ団の「がんばらなくていい!」に賛否両論』
〔2014-02-15 18:30〕
 より。)




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〔関連記事〕

『語音明瞭度 - 医師(健聴者)の誤解』
〔2014-05-23 18:30〕



こういうことは何も聴覚障害の手帳を持っている人に
限らず、手帳を持っていない難聴者にもあるだろう。(※1)


(※1)事例

『社会福祉難民の難聴者』
〔2014-07-27 18:30〕



『聴覚障害者心理 - “障害者”として半人前の難聴者』
〔2014-05-22 18:30〕


勿論、佐村河内氏も、その一人であることは
間違いないだろう。

なぜそれがわかるのかというと、日本の聴覚障害
の認定基準は異常に高いので、もう一目瞭然
だからだ。
手帳のない50~70dB未満ともなれば、
就職・就労後で、かなり苦しむことは明らかだ。


『身体障害者手帳のない聴覚障害者(難聴者)は、
どうやって就職するのか?』
〔2013-01-16 18:00〕



それなのになぜ

補聴器をつければ日常生活に支障はない。」

と言い切れるのだろうか。
全く信じられない。
これが、どれほどの誤解を生むのか、
全く理解していない軽率さだ。
現実とは大きく乖離した、医学的偏見だと思う。
「れいぞうこ」か「れいとうこ」かがわからないだけで、
仕事は続けることができなくなるというのに。


会社面接での苦労は尋常ではないし、
運良く入社できたとしても、
そのうちに難聴のことは必ず気づかれる。
それで、

「アンタ、もう辞めてほしいんだけどなぁ」

と言いたい顔を、あからさまに見せられる。
だから、仕事はできても、長く続かないものだ。

こんな死活問題になるのに、なぜ

「日常生活に支障はない」

のだろうか。


さらに、一部の医師の意見も、驚くべき内容だった。

『語音明瞭度 - 医師(健聴者)の誤解』
〔2014-05-23 18:30〕



>「>「(追記の追記)
この記事を読んだ耳鼻科医の方から、語音聴力
検査に関して事実誤認があるのではないかという
ご指摘をいただきました。
佐村河内氏は右耳の語音明瞭度が71%ですが、
文章の理解力という点では90%以上になっている
のではないか

騒音などで聞き取りにくい時はあったでだろうが、
会見の際も右耳を通して情報は入っていたのでは
ないかということです。」」




やはり医師にも、感音性難聴者の語音明瞭度の
実際を理解していない人がいるのではないか、と思う。


語音明瞭度が71%なら、文章理解度が90%以上
だという証拠・根拠は?


情報が入っているからといって、理解できるという
証拠・根拠は?



下がってしまう語音明瞭度を補うのは、聴覚障害者
の読話能力だったり、予測・推測力だろう。
聴覚障害者は、視覚情報を最大限に活用する能力
もある。
それと併せて、特有のコミュニケーション術を使う
ことによって、当てることは可能だ。

しかし、予測・推測力が使えない状況だと困難になる。

その場合は、視覚情報で補う。
他人から見れば「90%以上の理解度」に見える
場合もあれば「ほとんどダメ」と見える場合もある。
それを証明できる出来事もある。

だから、聴覚障害者は就労後に問題が起きている
のである。


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感音性難聴障害者の語音明瞭度
の実際 - 「4階?」 「溶解」


ある時、総務の人が台車でやって来て、
段ボール箱に入った荷物を載せようとした。

私も手伝おうと思ってそばへ行き、箱を載せた。

そして

「どうするのですか?」

と尋ねた。
総務の人は、作業を続けながら言った。
すぐ隣りから話しかけられたのだが、
口は見えなかった。


総務;「よ●か▲・・・」

私;「4階へ運ぶのですか?」

総務;「よ●か▲・・・」

私;「4階ですね」

総務;「よ●か▲・・・」


その時、周囲を見渡すと、みんな仕事をしながら
ニタニタと笑っていた。

「ヘンだな。
もしかして、また僕の聞き間違いがおかしい
のかな・・・?」

そう思っているうちに、D上司からマジックペンを
渡された総務の人が、段ボール箱に

「溶解」

と書いた。

私は

「ああ、そうか。
廃棄するのか。
それならこれは1階のゴミ捨て場だろう」

と理解した。

そして、1階まで運んで無事、作業を終える
ことができた。

「4階」と「溶解」も、なかなか聞き分けづらい
言葉だ。

これも、感音性難聴の聴覚障害者の、語音明瞭度
検査で出題されたら、私は何回も間違えただろう。
ちなみに、どの言葉が間違えやすいかは、
個々の聴覚障害者の聴覚特性により、違うらしい。
つまり、データにも個々の特徴が顕れるようだ。

なぜ、こんなに簡単な単語でも聞き間違えるのか、
健聴者は理解できないかもしれない。

実を言うと、語音明瞭度検査ではヘッドフォン
をさせられて聞き取った場合の測定値なのである。

それは、聴覚障害者が補聴器を装用での実生活
での聞き取り状況より、はるかに高い数値になり、
大幅に違っているはずだ。
健聴者には、この意味がわかるだろうか。
これは極めて重要な部分だ。

難聴者がデシベルダウン運動(※2)で訴えるのは
なぜなのかというと、ここに事情がある。


(※2)
『デシベルダウン運動』
〔2013-09-29 19:00〕



つまり、難聴者の実情を理解していない基準値認定
を国がしている、ということだ。

ほとんどの場合、ただ「聞こえる」か「聞こえない」かの
二極思考だけで判定し、その間にある難聴障害は
認めようとしない点は、矛盾がある。

つまりここに、社会がつくり出した“差別的状況”が
あるのである。
これが

「障害の社会モデルを認めようとしない」

ということであり

「社会がつくり出した障害」

なのである。

そういう意味で、難聴者の場合はろう者などとは違い、
二重の障害を負わされているであろう。
それをよくわかっているのは、日本ではおそらく難聴者
だけだろう。

外国ではすでに認めている国が多数なのであるから、
難聴者も障害者手帳を持ち、障害者福祉を受けられるのだ。

それに対し日本では、難聴者には何もない。(※3)



(※3)
『社会福祉難民の難聴者』
〔2014-07-27 18:30〕




語音明瞭度というのは、健聴者や全聾者にとっては、
理解しにくい要素(障害の特性)なのではないか、と思う。
私がもし健聴者だったならば、やはり理解できなかった、
と言い切れる。(※4)



(※4)
『週刊文春の佐村河内氏批判について』
〔2014-03-14 21:31〕





2014年3月7日の佐村河内氏謝罪会見の映像がある。


『【イカり】キレる佐村河内守【ゴーチ】』
〔You Tube 2014/03/09 に公開〕





この映像を見ると、神山氏との質疑応答に入ってから、
急にカメラのフラッシュがにぎやかになっている。
ということは、この時から会場も騒がしくなってきた
ようだ。
佐村河内氏もこの時に入ってから、聞き取りづらくなった
様子が見える。
それでコミュニケーションが上手くいかず、会場から
笑われるシーンもある。

ということは、佐村河内氏はやはり、聞き取ることに
頼っていて、手話通訳はしっかりと読み取れていない
のだろう。

本当に手話通訳が十分読み取れるならば、
聞こえは一切関係なくコミュニケーションができるはず
だからである。
やはり、佐村河内氏は

「手話通訳はあまり読み取れない、軽度難聴者」

という可能性が濃厚だと思う。



軽度の難聴といえども、この環境でも検査時の
語音明瞭度をそのまま保てるとは考えられない。
(語音明瞭度検査は普通、ヘッドフォン着用で行われる)

取材用カメラのフラッシュがものすごく多くて、
難聴者にはこの会場で人の声を正確に聞き分ける
のは難しくなる。
雑音がひどい、苛酷な環境だということは容易に
わかる。
話し手がマイクを使用していても、
機械音や響く音が苦手な難聴者もいる。

仮に佐村河内氏が補聴器を使用したとしても、
まだハンディ(障害)が残ることは明らかだろう。
彼は軽度の難聴であるが、それでも障害がある
ことには変わりない。



次のニュース記事を見ると、健聴者でも聞き取れ
ない場面があることがわかる。


『日中首脳会談
 習国家主席が見せた「笑顔なき握手」めぐり波紋』

〔フジテレビ系(FNN) 11月10日(月)18時20分配信〕
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20141110-00000474-fnn-pol


>「ところが、安倍首相は、習主席に何かを話し
かけたものの、習主席は何も答えず、
視線を正面へ向けた。
笑顔はなく、どこか、ぶぜんとした表情だった。
この時、安倍首相が何を話したのかは、
カメラのシャッター音で、聞き取ることは
できなかったが、会談後の日本側の説明
によれば、

「公式にお会いすることが非常にうれしい」

と話したという。」




これは健聴者が書いた記事だが、これでさえ

「カメラのシャッター音で、聞き取ることはできなかった」

とある。
難聴障害のある人ならば、なおさらであろう。
このような場所では、語音明瞭度は測定値よりも、
さらに落ちるのが当たり前である。

ある医師は、そこまでは考慮しないで、
単に医学的な立場として説明したに過ぎない
のではないだろうか。

それを世間が理解しないで、難聴者の実情を
誤解しては困るだろう。
このことも、難聴者への理解を、さらに困難に
してしまっただろう。

もちろん、補聴器装用で、懸命な社会復帰を
果たしてきた、全聾者・中途失聴者にとっても。(※5)



(※5)
『<聴覚障害者>佐村河内氏問題で「誤解される」と会見』
〔2014-03-27 21:09〕








【追記】(2014年12月14日)


『「4階?」 「溶解」 - 読話は
可能だったか?』


もし、相手の口が見えたら・・・と考えてみた。
自分で鏡を見て、読み取れるかどうか、試してみた。


単音での「ん」は、口を結んで発音するので、簡単だ。
「う」も単音ならば口をすぼめるので、わかりやすい。
つまり、「ん」と「う」の区別は容易だと思っていた。

しかし、

「よんかい」と、他の音と続けて発音した場合と、
「ようかい」も、他の音と続けて発音した場合を
比べてみると、わずかな違いしかわからない。
つまり、酷似しているのだ。

普通の速度で発音しても区別は難しくなるし、
「早口」になると余計に困難になる。

口が見えるだけではダメだと思う。
かなり近くでよく見ていても、難しいことが分かる。

他の音と続けて言うと、「ん」でも、
口を結ばなくなってしまうからだ。
その場合、口は完全には結ばなくなり、
口の中で舌と歯を一瞬閉じただけで
発音するからだ。
だからこれでは、「う」と似てしまう。

「う」の口をすぼめる速度も、速くなると難しい。

つまり、区別するには語音明瞭度がモノを言う。
耳のダンス細胞(※6)のほうが圧倒的に
優れているのだ。



(※6)
『『「耳の不調」が脳までダメにする』(中川雅文/著)』
〔2014-07-29 18:30〕



『感音性難聴障害の秘密 - 有毛細胞とは』
〔2014-04-16 18:30〕




こうした言葉も理解できるには、やはり

「聞き取れるかどうか」

が大切だ。
これが、語音明瞭度の重要性だろう。


「れいぞうこ」か「れいとうこ」か、
健聴者からすれば

「たったそれだけのこと」

かもしれないが、聴覚障害者にとっては、
それが聞き取れないだけでも、
もう行動することができなくなってしまう。

これでは、たとえ語音明瞭度が90%で
あっても、意味がないのだ。

「日常生活に支障はない」

とは、とても言い切れるものではないだろう。

医師の見解は、聴覚障害者の感覚とは、
大きくかけ離れているのではないだろうか。


以前にも、当ブログのどこかの記事で話したことがあるが、
私の場合は医師から

「高い音のほうが聴こえる」

と言われている。
しかし、それは標準純音聴力検査の結果だけでの結論
であって、実際は高い声を出す人が苦手なのである。
原因は医師が、語音明瞭度検査を軽視したからだろう。

こうした矛盾が生じるのは、やはり医師の意見の
無意味さを物語っているのではないか。

これが補聴器調整士だったら、こうは言わない。
可能な限り、聞き取れるまで調整してくれる。
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by bunbun6610 | 2014-12-09 18:30 | 聴覚障害