2014年度 上司評価シート

会社から突然、重大そうな封筒をもらった。
中を開けてみると『2014年度 上司評価シート』が
入っていた。

「部下の立場から見て、これまでの3人の上司を
評価してください」

というものだった。
それにより、上司の異動も含めて、今後の組織
運営にも反映させる可能性がある、という。
だから、軽々しく評価表を書くことはできない。
責任の重いものだった。

勿論、上司にはその内容を知られることはない、
という。
評価表を見ることができるのは、常務取締役とか、
関係部署内の者だけらしい。

「2014年度」とあるが、今まではこのようなことは、
少なくとも障害者に対してまでは実施されていな
かった。
そもそも、健常者は誰しも、障害者のことなど
ほったらかしにしている者がほとんどだから、
その状況で抜き打ち調査みたいに突然、

「障害者も上司を評価せよ」

なんて命令が来たら、どんな評価になることやら・・・。

いや、これこそ、その上司の素性がよくわかる
方法なのかもしれない。
ひどい上司だったら、なかにはボロクソに書かれる
上司もいるのではないだろうか。

ただし、この調査票は匿名式ではない。
誰が書いたのかも、開封者にはわかるように
なっている。

私の場合は、聴覚障害を持つ社員が私一人しか
いないこともあって、理解が少ない。
その立場から正直に言わせてもらうと、やはりどの
上司も例外なく、聴覚障害者への配慮が足りない
面があった、と思う。

けれどもそれは、私のほうからも理解を得るという
点で、努力不足だったことも確かだ。
そして、言うに言えない状況が社内にある、
ということも否定できない、と思う。

これは恐らく、多くの聴覚障害者が抱えている
問題点ではないか、と思う。

このことを理解してもらうために、また、自分の評価
については正直に書くとともに、誤解されたくない。
だから、その理由書という意味で添付書を添える
ことにした。

以下が、その評価シートと、添付書の内容である。




==========================


2014年度 上司評価シート


5段階評価;
 できている(最高点)5→4→3→2→1(できていない)


【評価項目「あなたの上司は・・・」】

「あなたに会社(部下)の目標、方針を伝えていますか?」
D上司; 1   IT取締役; 1   IW取締役; 1

「あなたを信頼し仕事を任せていますか?」
 D上司; 5   IT取締役; 5   IW取締役; 5

「あなたが難問にぶつかった時、その打開策を一緒に考え、
行動していますか?」

 D上司; 5   IT取締役; 4   IW取締役; 4

「あなたの質問や疑問に対し、明確に回答をしていますか?」
 D上司; 4   IT取締役; 5   IW取締役; 5

「あなたの能力向上を考え、指導していますか?」
 D上司; 4   IT取締役; 1   IW取締役; 1

「『挨拶』等、あなたに気軽に声をかけていますか?」
 D上司; 5   IT取締役; 4   IW取締役; 5

「あなたの努力や成果について労をねぎらったり、
褒めてくれますか?」

 D上司; 5   IT取締役; 1   IW取締役; 3

「あなたが相談しやすい雰囲気をつくっていますか?」
 D上司; 4   IT取締役; 1   IW取締役; 2

「あなたにとって信頼できる人物ですか?」
 D上司; 4   IT取締役; 3   IW取締役; 3


「◆社内の誰に育てられましたか?」
 D上司とO部長、元先輩のAさんとMさん。

「◆上司に要望がありましたら記入してください」
 無記入(添付書を参照)


注)評価シートについては、評価対象者(上司)には非公開とし、
今後の組織運営の参考とします。




==========================



2014年度 上司評価シート添付書
(2014年11月14日)



『聴覚障害者部下の立場からの上司評価』
まず、私は聴覚障害者として雇用していただいている
立場ですので、その立場からの評価表記入になる、
ということをご理解下さい。

聴覚障害者の場合は、他の障害者とは決定的に
異なる点があります。
それは、情報・コミュニケーション障害がある、
という点です。

さらに、それを起点として二次、三次障害へと
見えない障害が広がり、聴覚障害者への不利益
だけでなく、職場にも不利益をもたらす、という事実
があります。
したがって、このことを放置すれば、双方の不利益
は大きくなるだけです。
このことは理解していただきたく、お願いいたします。

それでは、その不利益とは何かというと、皆さんが
「障害がある」と思っている、それ自体だと思います。
この障害の意味について考えることは、大変重要
だと思います。

情報もコミュニケーションも、単なる一方通行でよい
ものでしょうか?
コミュニケーションをしていたつもりでも、もし、
通じていなかったとしたら、どうでしょうか?
それに何の意味があるでしょうか?

今までは、そうした構造によって、数々の社会問題
が起きました。
例えば、六本木ヒルズ回転ドア事故とか、阪神阪急
ホテルズの食材偽装表示事件といったことです。

これらは、一方通行だったからこそ、そういう事態
になるまで、気がつかなかったのではないでしょうか。

会社でも、そういう問題点は、働いている聴覚障害
者の側からは、すでに見えていると思います。


『あなたの会社(部)の目標、方針等を伝えて
いますか』

評価項目の1番目に「あなたの会社(部)の目標、
方針等を伝えていますか」という設問があります。

私はこの評価については、全ての上司に対し「1」
としました。
理由は、本当に「知らない」からです。
「知らされていない」というよりは、まず「知らない」
という結果が、事実として大きいと思います。

実際の状況としては、どの上司も毎朝の朝礼などで、
全員に話しているのだろうと思います。
健常者も障害者も聞いていますし、私もそこに
確かにいます。
しかし、私だけは、その内容を聞き取ることが
できない障害を持っているため、情報の内容を
知ることができないのです。
情報共有ができない、ということです。

T部は、昨年の8月から6月までの間、I店2階に
ありました。
その時はIW取締役がいましたが、IWさんがすぐ
近くで話しているにもかかわらず、朝礼で話して
いることがほとんど聞き取れませんでした。
「その時に会社の月間目標とか、方針とかを話して
いるのだろう」とは思っていましたが、内容までは
わかりません。

それより前には、S店3階にいた時ですが、話者
の声をFM電波で私の補聴器へ飛ばすシステム
を紹介しましたが、使ってもらえませんでした。
(しかし、それも今になってみて思えば、場合により
効果のほどは違うとわかりました)

私はそれで「聞こえないのなら、知らなくてもいい
のだな」と理解することにしています。

もし、どうしても私に伝えなければならないことは、
どの上司も筆談をしていたので、そうでない話は
「重要度は高くない」ものと思っていました。
この辺の相互認識が正常なのかどうかは、
第三者が客観的に判断すべきことは、
言うまでもありません。


『あなたを信頼し仕事を任せていますか』
2番目の設問「あなたを信頼し仕事を任せていますか」
については、対象の上司にではなく、他の人に対して、
思うことがあります。

例えば、あるスタッフが書いた車庫証明書類だと、
警察署によっては、いろいろと不備点として指摘
される場合があります。
警察署の担当者にたまたま、かなり厳格に求めてくる
人もいて、必要以上のことまで言われるようなケース
は別として、当方が必要な記載を明らかに怠っている、
という場合です。
その点は当然、正さなくてはならないと思います。
警察署とのやり取りで、その点を、私は筆談して記録し、
持ち帰って上司に報告するのですが、同じミスが直らない
スタッフもいるので「これは一体、どうしてだろうか?」
と思うことがあります。

「ひょっとすると、聴覚障害のある私が書いてきたこと
など、信用されていないのではないだろうか?」と
思うことがあります。


『あなたとのコミュニケーションが取れていますか』
9番目の設問についてです。
これまで述べてきたことを読んだら、各々の上司に
とっても「聴覚障害者とは、コミュニケーションを取り
にくいと感じたこともあったのではないか?」という
疑問があると思います。

しかし「他人がどう思っているか?」ということまでは、
私にはわかりません。

コミュニケーションとは本来、双方向のものである
はずです。
ですから、それが取れているのかどうか確認するには、
相互確認をしないとわかりません。

したがって、この設問については、話者のほうが
よくわかっているはずであり、話者にもぶつけてみて、
正直な感想を聞きだすべきだと思います。

該当上司との場合で、私の評価は、D上司とは比較的
よくコミュニケーションが取れていますが、取締役とは
滅多に話をしないこともあり、評価は低いほうとなって
います。
コミュニケーションが少ないからという理由だけでは
なくて、聴覚障害者についてなど、重要なことを知る
努力も足りない、と思っています。
そういう意味で、点数は低くなりました。

ただし、この設問の解釈にも、幾つかあると思います。

例えば「あなた自身は、どう思いますか?」とか、
「あなたから見た場合、どう思いますか?」といった意味
でです。

上司が「コミュニケーションが取れている」つもりになって
いても、部下は疑問に思うこともあります。

例えば、押し付けられるような場合ではないでしょうか。
コミュニケーションなき決定事項もあると思いますが。
この場合でも、当該上司との間では、問題は起きて
いません。
けれども、他の人とはコミュニケーションのミスが
ありました。

例えば、E上司とのケースです。
今回の調査対象ではなくとも、このケースは軽く見ない
ほうがいいと思います。
E上司も、人間的にはとても優しい人だと思います。
しかし、E上司は筆談が苦手です。
(最近は少し上手くなってきているかもしれません。)

ですので、ついつい筆談を忘れて、声で仕事の指示
・説明をすることがありますし、筆談をした場合でも、
字が読みにくいのです。
ですから、これは私の方から見ると、明らかにコミュニ
ケーションが取りづらいです。
実際に、これが原因で、私が間違えたことがあります。
(I店にいた頃でした)

今回のこのアンケート調査をもとに、該当上司の異動
の可能性もあるようですが、もしD上司がいなくなりE
上司に代わる、ということになれば、私はその後が
非常に不安になり、場合によっては退職も考えるかも
しれません。

E上司に代わった場合、T部では聴覚障害者が働き
にくい職場になることもありうる、と思います。

D上司の場合は、聴覚障害者に対して、きちんと筆談
してくれるだけでなく、周囲の人にもそうするようにと、
よく声をかけてくれています。
そんな人は、今までどこの会社にもいませんでした。

一般的には、せいぜい

「自分は自分、他人は他人」

というか、

「善意は個人努力の問題」

というような受け止め方しかないように思われます。

現実としてよくあるケースは、やはりE上司のように、
ついつい声だけで仕事の指示をしてしまう人もいるから
です。
たった一人の上司でもそうすると、周りの人も筆談しなく
なります。
そういう状況になると、もう筆談を求めるのは、なかなか
難しくなってゆくことは、私の長い経験でもわかっています。

聞こえるかどうかは、相手によってもまちまちです。
しかし、それを言えば

「上司には言わないのに、何でオレたちには言うのか」

と言われ

「上司だけにゴマをすっているな」

と思われるハメになってしまったことも、過去にいた会社
ではありました。

聴覚障害者をとりまく社会が、まだそれほどに誤解の
多い状況だということを考えると、D上司のような人は
大変珍しく、賞賛に値すると思います。

ただ、もしD上司と一緒に、私も異動ならば、それは全く
問題ないと思います。
コミュニケーションがきちんとできれば、私はどこでも
何でもやれる自信はあります。


ちなみに、私の聴覚障害は、お年寄りが「耳が遠くなった」
という例とは違い、誰しも理解しづらい傷害のようです。

聴覚障害の特性は個々により違いますが、私の場合は、
次のような傾向がよくあります。


①『機械からの会話音を聞き取るのが苦手』
電話やテレビなどの、特に機械から出る話し声は、
ほとんど聞き取れません。
補聴器でも限界があるのは、このためです。
会場でマイク、スピーカーを使うような場も、難しいです。

②『高い声の人や、早口でしゃべる人との会話が苦手』
補聴器をした場合でも、医者は

「高い音のほうが聴こえる」

と言うのですが、実際は

「高い音は聴こえても、言葉として聞き取りにくい」

です。
高い声を出す人、特に若い女性の声が苦手です。

③『話者の声質によっても、聞き取りやすさが違う』
話す人の声質により、聞き取りやすさが違う。
比較的低めの声の人で、太い声を出す人の場合、
話し方によっては聞き取り率が向上するようです。

逆に、聞き取りにくくなって困るのは、細い声を出す人で、
話し方が早い人とかです。

声質によらず、早口でしゃべられると、全く聞き取れなく
なります。
声の抑揚が激しすぎる人も苦手です。

④『会話する場所によっても、聞き取りやすさが変わる』
これはすごく当然のことです。
距離だけでなく、補聴器に雑音がよく入ってきてしまう場所
では、聞き取りにくくなってしまいます。
この場合は、静かな個室に移動してから話すと、
改善が見込めます。

しかし、このような場所であっても、①~③のような理由で、
聞き取れないことはよくあります。

⑤『聞き取りづらいと誤解されて、周囲の人と
関係障害に発展しやすい』

聴覚障害への理解がないと、誤解やリスクが生じてしまう
ことがあります。
過去にあるのは、例えば、私がAさんとBさんとの3人で
一緒に話をしていた時、Aさんの話は聞き取れるので
会話ができるのに、Bさんの話は聞き取れないので、
黙ってしまいました。
Bさんが話している時は、私は聞いているフリをしている
だけで、実際は聞き取れていませんでした。
飲み会などでは、笑ったフリをすることもよくあります。
後で、私はBさんに

「あなたの声だけが聞き取りづらくて、話ができません。
無視しているわけではありません」

という趣旨の説明をしました。
それは多分、わかってもらえたと思っています。
しかし、実際問題として、このようなことが関係障害となり、
逆に距離ができてしまうことがよくあります。

このように、聞き取れる条件が非常に細かく、現実はそれに
合わせることが難しいので、重要な話は、最初から筆談で
してもらうことにしています。

ごく簡単な会話のみ、読話併用もある程度可能な、
補聴器使用が可能だというわけです。



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by bunbun6610 | 2014-11-26 18:30 | 就労後の聴覚障害者問題E


ある聴覚障害者から見た世界


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