蒼穹 -そうきゅう- bunbun6610.exblog.jp

ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

職場内障害者授産施設 第二篇 (13)障害者雇用で、障害者はどこへ行く? どこへ向かう?

私の会社には、いろいろな障害者が働いている。
それは、障害者雇用促進法のお陰だろう。

その中で、聴覚障害者は私を含めて、少なくとも
3人はいることが、最近わかった。

一人は、私が以前から

「手話ができる健聴者(あるいは難聴者?)」

と勘違いしていた人RIさんだった。

そしてもう一人は、今年9月から入社したRSさん
である。

お二人は、同じ部署で事務職をしていて、座席も
すぐ近くだった。
しかし、私は別部署で、業務も外勤のため、
お二人と会って話せる機会は滅多にない。

お二人ともろう者なのだけれども、手話は日本語
対応手話に近かったので、あまり「ろう者」という
感じがしなかった。

しかし、お二人とも、ろう学校に通っていた経験は
あるらしい。
そのうち、RSさんと昼休みが一緒に取れたので、
少し話せる機会があった。

RSさんは、生後6ヵ月で聞こえなくなり、
初めはろう学校に通っていたが、中学二年の時、
普通学校にインテグレートし、高校、専門学校を
卒業した、という。
学校を卒業した後は、一般枠で民間会社に就職し、
有名企業の正社員も経験した、という。
一時は独立なども経たが、今はパートタイマー
として働いている。

(手話が日本語対応手話に近い理由も、
この話を聞いて納得できた。
実際、難聴者のように口話も非常によく使う。)


「就職には困ったのではないですか?」

と聞くと

「いや、全然簡単だった」

と、意外なことを言う。
そして、昔のことだったらとにかく

「障害者雇用なんて知らなかった」

という。
回りも、誰も知らなかったらしい。
そういえば私も、全く知らなかった。

当時は一般枠でも簡単に働かせてもらえた
そうだ。

私の場合は、面接にしろ、勤務中にしろ、
非常な苦労はしてきたが、それでも何とか一般枠に
留まり、経験を積むことが出来た。

と言うよりは、やはりRSさんも言うように、私も

「障害者雇用なんて知らなかった」

ので、そこで必死に踏ん張るより、他になかった
のであるが。
だから、障害者雇用で働いているよりも、
ものすごく必死に働いて、頑張ったものだ。
お互い、昔のことを、そんなふうに述懐した。

それが、今では事情がまるっきり変わったようだ。
障害者は、とにかく障害者手帳を使って障害者枠に
入らないと、厳しいそうだ。
その代わり、そこに入ってしまえば、大きな会社でも
簡単に入れる、と言う。

確かに、そんなに簡単に入れてしまうことも案外、
よくある。


〔参考記事〕

『身体障害者手帳のない聴覚障害者(難聴者)は、
どうやって就職するのか?』
〔2013-01-16 18:00〕




確実に言えることがある。
それは、障害者雇用促進法がほとんど知られて
いなかった昔は、障害者でも健聴者と一緒に、
同じ仕事をするチャンスがあった。
社会が、障害者雇用促進法を知らなかったほうが、
そういう意味では、むしろ障害者差別が少なかった
のかもしれない。

重度の障害者は確かに働けない人が多かったの
だろうが、障害があっても能力のある人ならば、
平等な意味で同じ仕事が与えられた。

コミュニケーションの問題も

「口を読み取れます」

だけで通用した、とRSさんは言う。
それよりも大きなメリットは、一旦、その仕事を経験し、
覚えてしまいさえすれば、雇用契約は継続された、
と言う。
正社員採用も認められた。

その背景には、昭和の高度経済成長期で人手不足
だった時代、ということも見逃せない。

しかし、今は不景気で、安定雇用すらも見込めない。
利益をなかなか生みづらくなった今では、
経営努力はコストパフォーマンスへ重点が置かれる
ようになったのだろう。
そすると自然に、その企業戦略の一つとして、
障害者雇用が活用され始めてきたのだろう。
その違反金抑制と、障害者雇用助成金の獲得に
目をつけ始めたのだ。

それで、障害者は障害者手帳で障害者枠に入らない
と認められない、とする企業が増えていったのだろう。

この法律が、社会に浸透したことによって、確かに、
障害者は誰でも簡単に就労することができるように
なったのかもしれない。
しかし、昔のような自由は、もうない。
悪く言えば、障害者は奴隷だ。
その労働では、夢を持つことができなくなって
しまったのだ。

健常者にわかるだろうか? この気持ちが。


うぬぼれているわけではないが、そんな昔の時代
を生き抜いてきたからこそ、RSさんや私のような、
優れた障害者も隠れて存在したのだろう。
今よりも昔のほうが頑張っていた。

しかし、今の障害者は、障害者雇用によって、
管理され過ぎてしまっているように思う。
職場内障害者授産施設が整備されていくに
したがって、障害者の就労は増え、
納税者も増えた。
しかし、そこから輩出された障害者に
“燃える闘魂”はない。
[PR]
by bunbun6610 | 2014-10-30 18:30 | 就労後の聴覚障害者問題E