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蒼穹 -そうきゅう-

肉親の障害者差別

私が聴覚障害者だからなのか

「結婚するなら健聴者とろう者の、どっちがいい?」

ということを、よく聞かれたものだ。
ろう者にも健聴者にも、よく聞かれた。

それで

「何でだろう?」

と思ったものだ。

でも、だいぶ後になって、その理由がやっとわかった。

もし

「ろう者がいい」

と答えたなら、多分、聞いた人が他のろう者へ紹介された
かもしれない。

反対に、もし

「健聴者がいい」

なんて言ったとしたら、不評を買っていたかも
しれない。
ろう者の仲間か、そうでないかの踏み絵だった
のかもしれない。
それが人間社会というものだと思う。


■テレビドラマ『おふくろに乾杯!!』

昔、テレビドラマで<おふくろシリーズ>というの
があった。
その中に『おふくろに乾杯』というドラマがあった。

浜 木綿子主演で、この人がろう者女性・珠江役を
演じていた。
珠江には、健常の一人娘・笑美子がいた。


フジテレビ『おふくろシリーズⅥ おふくろに乾杯!!』



このドラマで、笑美子は結婚を申し込まれる
のだが、相手は健聴者だ。
相手の家族に、珠江がろう者だと知られると、
結婚に反対された。
それでも二人は結婚するのだが、ろう者の珠江が
家族に入ることで不協和音とか、いろいろと起こる。
それを乗り越えていく家族ドラマだった。

そのドラマで、なぜ婿の家では結婚に反対したの
かは、詳細は描かれていない。
しかし、これはよくあることだろう。
これが、ろう者差別だ。


■ろう者の実話から

デフ・ファミリーに育ったろう者・Y氏が、講演会で
語っていたことがある。
自分の父の親が、ろう者同士でも結婚を認めたが、
条件として

「子どもをつくらないこと」

があったという。
しかし、Y氏の両親はその約束を破って、子どもを
つくったという。
そして生まれた子が、Y氏だったという。
実の親にさえ、そんな差別意識があったそうだ。


別の事例もある。
私の知人のろう者は長男で、難聴者と結婚した。
だが、家の相続権は弟に決められたという。
実父に

「おまえでは老後のオレの面倒を見ることも、
家も継ぐことも出来ないから」

と言われた。
彼は家を出て、同じ障害を持つ人と結婚し、
3人の子どもに恵まれている。

彼は立派ではないか。
なのに、今でも、こんな差別があるのだ。

ろう者に生まれた場合、家族会議で家の財産の
相続権を一切奪われた、という話は、昔からある
そうだ。

健常者の家が心配することは、社会の偏見だけ
ではない。
子どもが障害者に生まれないか、という遺伝性の
心配もするからだろう。
Y氏の両親が

「結婚はしても、子どもはつくるな」

と忠告したのも、それが理由ではないだろうか。

たとえ健常の子どもが生まれたとしても、その次の
世代も遺伝性難聴が顕れないとは限らないだろう。


〔参考情報〕

『先天性難聴 遺伝子で原因特定…早期治療合併症対策も』
〔2014-05-29 21:48〕



『『みんなが手話で話した島』(ノーラ・E・グロース/著) 1/3』
〔2013-10-03 18:00〕





今でも、障害児が生まれる可能性を排除しようと
する考え方が支配的だということは、誰も否定
できないだろう。
もし、障害児が生まれるようなことがあれば、
その子は捨てられるかもしれないのだ。


『今年4月から始まった、出生前診断』
〔2013-04-07 18:00〕




『新型出生前検査で陽性、確定診断受けず2人中絶』
〔2014-06-11 19:42〕



『<赤ちゃんポスト>7年間に受け入れ101人 11人に障害』
〔2014-09-27 09:32〕



たとえ捨てられはしなくても、責められることもある。


『難聴者の世界 - 同障者が涙流さずにいられない手記』
〔2014-03-17 18:30〕




だから、なかには結婚前から心配し、結婚をやめる
カップルもいるに違いない。
聴覚障害者と健常者との結婚には、
やはりハードルがないとはいえない。

相手が健常者か、それとも障害者であるかは、
全く問題でない、というわけにもいなないのだろう。


〔参考情報〕


白馬岳 滑太郎のブログ
『今月の話題(2001年1月)
< 耳の聞えない人と結婚しますか。耳の聞える人と結婚しますか >』





自分の意思だけで考えれば
相手が健常者かろう者かなんて

「どっちでもいいじゃないか」


と思うのだろうけど、現実は自分だけで、
そう簡単に決められることではない。
相手だって、障害のことをよく知るようになると、
変わってくるかもしれないのだから。

私も、私が聴覚障害者だということは、
実は家族以外には誰にも知られていない
のである。
親族は、私が聴覚障害者だということを、
誰も知らないのだ。

なぜかというと、家族が知られたくないから、
知らせていないのだ。
もっとハッキリと言えば、それを隠しているのである。
それが、聴覚障害者の存在が、社会にあまり知られて
いない原因にもなったのではないだろうか。
それだけでなく

「障害のある者は、家族に面倒を見てもらえばいい」

という考え方があったに違いない。
それが、国策の遅れになったのは間違いない。
だから親族の結婚披露宴にも、私だけ呼ばれないのである。

恐らく、知られると兄弟、子ども、孫の、結婚の障害
にもなりうるからではないだろうか。
最悪だと、破談にもなりかねないだろう。
それが、テレビドラマ『おふくろに乾杯!!』でもわかる。

「生まれてくる子どもに遺伝するのではないか」

といった心配もするだろうし。
残念だが、家族といえども、障害者を排除しようとする
のが、健常者の考え方だと思う。


幼い頃、母に

「(妹と、兄の私が)逆に生まれてくれば良かったのにね」

と冷たく言われたことが、今でも深い心の傷となっている。
青春期に、深い劣等感があったことは、いうまでもない。
この傷は、一生消えない。
私には、そんな母を今も、心から愛することなんてできない。
幾ら過去のことでも。


また、これも当然だが、結婚は、夫婦の人生にも
影響するようだ。
知り合いに、聴覚障害者の男性が健聴の女性と結婚
した後、聴覚障害者団体での活動も手話も完全に
やめた人がいる。

妻に

「もう、そんなことをやっている場合ではない」

とか言われたらしい。
聴覚障害者だから障害者雇用枠での仕事しかなく、
その収入は低かった。
だからなのか、彼は妻の尻に敷かれて、そして
カツカツの生活を送っていた。


ろう者が初めて会った人に、必ず聞くことが3つある、
という。

「あなたはろう者? それとも健聴者(難聴者)?」

「あなたは、どこのろう学校を出たの?」

「あなたは結婚していますか?」

昔からよく言われていたが、今ではそうでもないかも
しれない。

結婚したとか、付き合っている人がいるとなれば、
次の質問はやはり

「相手はろう者? 健聴者?」

となるのだろう。

一見、軽いような話に思える。
しかし、そこから、次第に差別へと発展して
いくのではないか。
そういう心配を、いつもする。
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by bunbun6610 | 2014-10-12 18:30 | 聴覚障害