職場内障害者授産施設 第二篇 (8)すぐタバコへ逃避する精神障害者


『偽障害者? ただの人格的未熟者?』


ある日は、就業時間ギリギリになって、Yさんが
外出から帰った。

「どうしたのか?」

というふうな感じで、上司全員がYさんに寄って、
話し込み始めた。

私も

「何かあったのかな?
みんな心配しているから」

と思い、側へ寄ってみた。

しばらく様子を見ているうちに、
予定表には△△△事務所と書いてある。
私は知らないから、これがYさんの仕事だろうと
推測した。

Yさんも

「△△△事務所と言われたけど、書類を見たら×××と
書いてあったので、□□事務所へ行きました。
でもそこへ行くと『それは△△△事務所のほうだ』と
言われ、行き方を聞きました。
すると、『そこのバス停は廃止された』と言われ、
タクシーでしか行けないと思いました」

とか何とか言って、だんだんとこちらもYさんの説明
が理解できなくなっていった。
ここら辺の話は、私も正確に知ることなどできるはずも
なかったので、勿論正確に記述することはできない。

「でも、最終的には△△△事務所へは行けたんですよね?」

と、結論だけ聞くと、YESの返事。
どうやら、いろいろあったようだが、任務は一人で
こなせたようだった。

しかしその後、私はさらにYさんと話した。


私;「△△△事務所へ行く方法は、前に教えましたよね。
私があげた資料を、持っていますか?」

Yさん;「持っています。
でもバス運転手さんが『そこにバス停はない』と
言っていました」

私;「そんなはずはない。私が前に渡した資料を出して下さい」

Yさん;「いえ、持っていますから」

私;「出して見せて下さい」

その資料には地図も行き方も、バス停の名前まで
全部載っている。
だからYさんはそれを忘れているとしか、
思えなかったのだ。

しかし、Yさんはなぜか、嫌がっていた。
そうしてもめているうちに、D上司が間に入り

「まあまあ、もういいから。
外へ行って、二人で飲みに行きなさい」

と言った。
それで二人は退社したのだが、私はそれで収まらなかった。

私;「△△△事務所はね、△△△駅ではなくて、◎◎駅の
ほうが近いんですよ。
そこからバスに乗って、★★★★で降ります」

Yさん;「でも、事務所の案内図には△△△駅がありますけど」

私;「『その冊子では、最短時間で行ける方法はわからない』
って、前に言いましたよね。
覚えていないのですか? メモはどうしたの?
ちゃんと取っているの?」

Yさん;「いえいえ、メモはあります。
すみませんが、タバコを吸いたいので、失礼します」

またこういう時にはタバコで逃げるのか。
教えてもムダなヤツだな。
Yさんは自分のミスも認めようとしないから、
反省もしない。

その日はもう、そのまま別れた。

翌日、Yさんは9:00ギリギリになって、
職場に顔を出して来た。
私も、Yさんと同期入社のKさんもすでに働いている
というのに、Yさんは教わったことを一つもやらないで、
自分の座席に坐ったままだ。

これでは今後、もう誰もYさんの相手はしないだろう。
私も二度と教えようとは思わない。
これからは、放っておく。

Yさんの仕事内容も、D上司が言っていた通り、
ほぼ「●●専門」になっていた。
「ほぼ」と言うのは、たまにその仕事が中止になること
があるからだ。
だからそういう時は、Yさんには他のことをやって
もらわざるをえない。
なるべく簡単で、負担が少ない仕事だ。

こういうふうであるのだから、Yさんは他の人よりも、
豊富な経験は積めない、ということになる。

彼はもうすでに、50代後半という年齢である。
65歳まで働けるかもしれないが、この能力でも
フルタイム労働契約なのだから、障害者としては
恵まれていると思う。

それでも、Yさんの親離れは難しいと思う。
この収入では親と同居せざるをえないし、親と同居
していて、家という資産もある以上、生活保護は
認められないだろう。
将来に受け取れる老齢年金は少ないだろうから、
彼の老後は間違いなく、浮浪者のような生活に
ならざるをえなくなるだろう。
よほどの裕福な家でない限り、破産へまっしぐらと
向かう老後になる。


NHK NEWS WEB
『障害者苦しめる「65歳の壁」』
〔9月26日 16時45分〕




NHKスペシャル
『老人漂流社会"老後破産"の現実』
〔2014年9月28日(日)午後9時00分~9時49分〕




読者はこれを読んで、どう思うだろうか?
こういう会社で、Yさんにとっては良かったと思うだろうか?
そう思わざるをえないのだろうが。
他の会社だったら、とっくにクビになっているだろう。
彼は何をやってもダメだから、どこへ行っても
“採用取り消し”になるだろう。
だからこそ、今のような、障害者を簡単に捨てない会社に
入れて、幸運だったのだ。
だが、それに甘えているのはどうかな?

D上司が冗談交じりに「飲みに行け」なんて言っていたが、
この言葉は、裏を返せば健常者は

「障害者なんて、こんなものだ」

という見方しかしていない証拠なのだ。
それがわからず、悔しいと思わない障害者がクズなのだ。

「悔しい」と思わないコイツはダメなヤツだ。
コイツは、障害があってもなくても、どうせダメなヤツだった
に違いない。
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by bunbun6610 | 2014-10-03 18:30 | 就労後の聴覚障害者問題E


ある聴覚障害者から見た世界


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