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ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

職場内障害者授産施設 第二篇 (5)その障害者に合った、仕事の切り出し

試行錯誤を経て、Yさんの担当業務は固まりつつあった。

最初は、H部の人の同行をしていた。
Yさんに聞いた時も、確かに

「入社前面接ではH部で働く、という話だった」

と言っていた。

それがなぜか、私のいる部署(T部)に入ってきて、
それでも最初はH部の人と同行する業務をしていた。

その間、H部から仕事が来なくなり、T部の仕事を
やるようになった。
T部もH部も、本当は仕事内容は同じだから、
どっちかができるなら、どっちでもできるはずだった。

ところが、T部でも初めはAさんの後継として考えら
れていたようだが、仕事内容の些細な変更には弱い
らしく、「難しい」と判断されたようだ。

真面目な性格だが、複雑な仕事、細かい仕事を
臨機応変にするには、全く向いていないのである。
簡単な雑用でも、それを幾つか任せる任せ方を
すると、Yさんは一つやっただけで、後はほとんど
忘れてしまうのである。
それでYさんには、また別の仕事をやらせてみる
ことになったようだ。
それが、以前は定年退職後の高齢者がしていた
業務だった。

その仕事のことは、あまり詳しく書くことはできない。
会社名がバレてしまうからだ。

大雑把な内容だけ書くと、出勤後、朝の30分~1時間
ほど会社で待機した後に出発し、電車・バスを使って、
単独で遠方に移動する。そして現地の事務所で書類
の交換などをして会社に戻ってくる。
あるいは、時間が足りない場合は、そのまま直帰する、
という単純な仕事である。

毎日がこの繰り返しだから、一度覚えれば誰にでも
出来るし、待機や移動中は何をしていても構わない。

Yさんはスマホを持っていて、それを見ているのが好き
だから、毎朝そうするようになった。

単純な上、仕事もミスも出ないので、Yさんも気分良く
なってきたようだ。
そのほうが皆も、気を遣わなくてよい、というメリットも
あるだろう。
いつまでもそのままでは進歩しないが、もともと障害者
雇用には昇進昇級もないのだから。

Yさんが普通の仕事をすると、こちらも

「大丈夫か?
またミスをしたりしないか?」

と心配になり、確認するのも大変になってしまう。
とにかく、Yさんにつきっきりでは、こちらのほうが大変
である。
Yさんが他の人と連携しなくてはならない仕事をすると、
他の人も心配になってきてしまうのである。

それならばYさんには、他の人へ直ちに影響しない仕事
をやってもらってはどうか。
その発想で出てきた仕事=精神障害者向きに切り出さ
れた仕事が、もともと高齢者向きの仕事、というわけだ。

聴覚障害者向きの仕事も、同じ考え方で切り出されて
いるが、能力がある人には多少、複雑な仕事になってくる。

だがこれなら、Yさんもマイペースでやれるので、落ち着ける。


ただし、どこの会社でも、こうした配慮ができるのではない。

この会社は、世界でも有数の大企業、そのなかでも
障害者雇用にも積極的に取り組む会社の、完全子会社
だからである。

もし、小さな会社ならば、このようなことはとてもできない。
障害者のほうが、雇い止めにされるのが普通だろう。


障害者雇用で、大企業に就職すると、こういうメリットがある。

だから、ハローワークの合同面接会でも、大企業のブース
にはいつも、長蛇の列になるのだ。

Yさんはフルタイム(一日7.5時間)勤務だが、そのうちの
ほとんどが待機や長時間移動に費やされるので、実際の
仕事というのは10~15分ぐらいだ。

要するに、作業はとても簡単だが、時間がとてもかかる
仕事がある。
それを正社員に代わってするのが、障害者の主な仕事
である。
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by bunbun6610 | 2014-09-29 18:30 | 就労後の聴覚障害者問題E