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蒼穹 -そうきゅう-

職場内障害者授産施設 第二篇 (5)その障害者に合った、仕事の切り出し

試行錯誤を経て、Yさんの担当業務は固まりつつあった。

最初は、H部の人の同行をしていた。
Yさんに聞いた時も、確かに

「入社前面接ではH部で働く、という話だった」

と言っていた。

それがなぜか、私のいる部署(T部)に入ってきて、
それでも最初はH部の人と同行する業務をしていた。

その間、H部から仕事が来なくなり、T部の仕事を
やるようになった。
T部もH部も、本当は仕事内容は同じだから、
どっちかができるなら、どっちでもできるはずだった。

ところが、T部でも初めはAさんの後継として考えら
れていたようだが、仕事内容の些細な変更には弱い
らしく、「難しい」と判断されたようだ。

真面目な性格だが、複雑な仕事、細かい仕事を
臨機応変にするには、全く向いていないのである。
簡単な雑用でも、それを幾つか任せる任せ方を
すると、Yさんは一つやっただけで、後はほとんど
忘れてしまうのである。
それでYさんには、また別の仕事をやらせてみる
ことになったようだ。
それが、以前は定年退職後の高齢者がしていた
業務だった。

その仕事のことは、あまり詳しく書くことはできない。
会社名がバレてしまうからだ。

大雑把な内容だけ書くと、出勤後、朝の30分~1時間
ほど会社で待機した後に出発し、電車・バスを使って、
単独で遠方に移動する。そして現地の事務所で書類
の交換などをして会社に戻ってくる。
あるいは、時間が足りない場合は、そのまま直帰する、
という単純な仕事である。

毎日がこの繰り返しだから、一度覚えれば誰にでも
出来るし、待機や移動中は何をしていても構わない。

Yさんはスマホを持っていて、それを見ているのが好き
だから、毎朝そうするようになった。

単純な上、仕事もミスも出ないので、Yさんも気分良く
なってきたようだ。
そのほうが皆も、気を遣わなくてよい、というメリットも
あるだろう。
いつまでもそのままでは進歩しないが、もともと障害者
雇用には昇進昇級もないのだから。

Yさんが普通の仕事をすると、こちらも

「大丈夫か?
またミスをしたりしないか?」

と心配になり、確認するのも大変になってしまう。
とにかく、Yさんにつきっきりでは、こちらのほうが大変
である。
Yさんが他の人と連携しなくてはならない仕事をすると、
他の人も心配になってきてしまうのである。

それならばYさんには、他の人へ直ちに影響しない仕事
をやってもらってはどうか。
その発想で出てきた仕事=精神障害者向きに切り出さ
れた仕事が、もともと高齢者向きの仕事、というわけだ。

聴覚障害者向きの仕事も、同じ考え方で切り出されて
いるが、能力がある人には多少、複雑な仕事になってくる。

だがこれなら、Yさんもマイペースでやれるので、落ち着ける。


ただし、どこの会社でも、こうした配慮ができるのではない。

この会社は、世界でも有数の大企業、そのなかでも
障害者雇用にも積極的に取り組む会社の、完全子会社
だからである。

もし、小さな会社ならば、このようなことはとてもできない。
障害者のほうが、雇い止めにされるのが普通だろう。


障害者雇用で、大企業に就職すると、こういうメリットがある。

だから、ハローワークの合同面接会でも、大企業のブース
にはいつも、長蛇の列になるのだ。

Yさんはフルタイム(一日7.5時間)勤務だが、そのうちの
ほとんどが待機や長時間移動に費やされるので、実際の
仕事というのは10~15分ぐらいだ。

要するに、作業はとても簡単だが、時間がとてもかかる
仕事がある。
それを正社員に代わってするのが、障害者の主な仕事
である。
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by bunbun6610 | 2014-09-29 18:30 | 就労後の聴覚障害者問題E