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蒼穹 -そうきゅう-

職場内障害者授産施設 第二篇 (2)見えない障害を隠す

『ある日 - 学習能力1%の後輩障害者』

『自分に都合良く障害を隠す障害者』


ある日の朝、始業15分前に、私は出社した。
すると、Yさんの座席にはカバンが置いて
あったが、本人がいない。
Kさんはすでに着席していて、仕事を始める
準備をしていた。

私も朝一番にやる仕事をしていると、
まもなくYさんも職場にもどってきた。
そして、無言で私の隣まで来て、坐った。

すると、Yさんの身体からタバコの臭気が
プンプンしてきた。
Yさんはまだ新人であるにもかかわらず、
こういう習慣が以前からある。
Yさんが出社して、最初にやることは仕事の
準備ではなく、タバコなのだ。

その理由も、私にはもうわかっていた。
Yさんの記憶障害は尋常なものではなく、
彼の頭の中には、ワークスケジュールなど
朝から入っていない。
だから彼は毎朝、私にコバンザメみたいに
後からくっついて来ては、私の仕事をじっと
見ているだけなのである。
ただ見ているだけで、メモとかは全然取っていない。

初めのうちは私も

「覚えるまでメモを取って」

「明日からやってみて下さい」

と言ったのだが、Yさんは面倒がるし、
結局は覚えないので、もう言わなくなった。

何しろ、メモを取ってもそのことすら、
すぐに忘れてしまうのだ。
そして次の日も、また次の日も、それをくり返す
だけなのである。


私はYさんに

「何をするか、わかっているの?」

と聞くと、Yさんは

「何も指示を受けていません」

と答えた。
これにも呆れた。
毎朝すべきことを、初日に教えたというのに、
一つも実行していないのだから。
その時のノートは取っている。
しかし、本人がそれをもう、忘れているのだ。
彼は100%受け身でしか、仕事ができない。


Kさんも、Yさんに仕事を頼んだ。
そうしたらYさんは、その仕事を私のところまで
持ってきて

「お願いします」

というふうに、書類を置いて行った。
これも初日に、私が教えた仕事だったのだが、
Yさんは忘れてしまっているのだ。


「もう、この人は一体、何なんだ?」

「なぜ仕事を覚えようとしないのか?」

「会社はなぜ、こんな障害者を雇ったのか?」

「なぜ会社は、こんな人を放置するのか?」


その答えも、もう全部わかっていた。

これがYさんの障害なのだ。
だから彼は覚えられないし、覚える努力をすること
自体、不可能なのだろう。
おそらく、それを強制したら彼は精神的に苦しむこと
になる。
おそらく前の会社でも、そうしたことで自主退職に
追いやられたのではないだろうか。
だから結局、努力から逃げてしまうのだろう。
精神的にも幼稚なのかもしれない。


このようにして、会社はただ、障害者を雇うのみである。
それ以上のことを、労力をかけてまでしようとは思って
いない。
法令遵守(罰金逃れ)と雇用助成金 ――会社の興味は、
これだけだ。

この孤立した状態でも、居続けることができるならば、
Yさんはそうするだろう。

だがそれでは、彼の分まで働かなければならなくなる、
他の障害者はたまったものではない。

反対にもし、Yさんがその状態でいることを精神的苦痛
だと思っているのならば、Yさんのうつ病は深刻になる
可能性もある。
そうして休むようになれば、他の障害者への負担は
一層大きくなる。

その辺のことも考えて

「会社(人事部)に何か進言したほうがいい」

と思っている。
だが、忙しくてその時間がなかなか取れず、ついつい
先延ばしになってしまっている。
対するYさんは、いつも朝からヒマなのである。

Yさんは、自分から会社に相談すべきなのだ。
だが、それをしない。

やはりYさんは、自分の障害の、都合の悪いところ
は隠しているのだろう。

この人の記憶障害は重症だけれども、精神障害3級
には思えるかどうかは、疑問もある。
だから医師の診断ミスも十分ありえる。
簡単な仕事でも、頭を使う就労は当然無理だ。

私としても、Yさんのほうが年上なので、そこまでは
なかなか言い出しにくい、ということもあったりする。
能力のないYさんに仕事を頼めないこともあって、
おかげで最近は、私だけ残業を命じられて、大変な
仕事量をこなしている。

なぜか会社は、助成金額が高い障害者(特定求職者
雇用開発助成金
)ばかり採用しているのだ。

Yさんにできる仕事と言えば、本当ならば土木作業員
のような、単純肉体労働しかないだろう。
しかし、彼はそういう仕事はイヤだろうから、障害者
雇用に頼ってきたのだろう。
もしそれも無理だったら、いろいろな紆余曲折を経て、
最終的には生活保護しかなくなる。
それが彼の将来の行く末だと思う。

このままでは彼にも社会にも希望はない、ということだ。

会社は、健常者は基本的に、障害者の面倒は見ない。
そうして分離されているから、我々は“職場内障害者
授産施設”と呼ぶのである。
だから、やる気がない障害者がいたとしても、それは
本人の自由になっている。
ただし、不真面目だったり、成績不良だと契約更新は
されなくなる(雇い止め)可能性もあるが。

そこは、よく言えば障害者だけのチームワークで成り
立っている部署、悪く言うならば共産主義社会の弊害を
持った部署だ。
障害者同士で助け合うという、美談のようにテレビで
紹介されたりするが、実態はそれぞれの障害者に
不満もある。

所詮、障害者雇用も、会社のガンなのかもしれない。
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by bunbun6610 | 2014-09-25 19:00 | 就労後の聴覚障害者問題E