運転免許制度への疑問

私の経験を話すと、次の通りである。

当時の私は、障害者福祉制度のことも
知らなかったので、障害者手帳を持って
いなかったが、聴覚障害6級相当の難聴
の頃だ。

最初に原付免許を取得した。
難しい試験はなく、講習会のみだったので、
簡単に取れた。

補聴器は一応、持っていたが、わざわざ申告する
ことはせず、免許の条件にはならなかった。
当時の補聴器は、あまりに性能が悪かったので、
装用してもヘルメットを被るとハウリングがして、
使い物にならなかった。
もともと、補聴器無しでも10メートル離れた
位置からクラクションの音は聞こえていたので
問題ない、と思っていた。


普通自動車運転免許を取得する時も、当時の聴力は
6級相当で、障害者手帳もまだ持っていなかった。
補聴器無しでも原付免許を取得できていたので

「耳のことは言う必要はない」

と思っていた。
そのまま教習所に通っていて、教科書の丸暗記に
強かったので、筆記試験は簡単に合格できた。
(本試験でも、合格率50%の中を突破した。)

しかし、実技指導がよく聞き取れず、仮免許試験
合格後に、教習所側に

「何で入所する時に、耳のことを言わなかったのか」

と言われた。
それでも「大丈夫だろう」と思われたらしく、結局、
何で咎められたのか、自分にはわからなかった。

「法令で定められた聴力基準を満たしているんだから、
言う必要はないじゃないか」

と思っていたが、公安局から認可を受けている教習所にも、
仮免許を交付する責任があったのだろう。

そして、本番の免許試験場でも、実技試験免除だから、
そのまま通っていたが、不安になり、自主的に試験官に
耳のことを伝えて、法令に基づく聴覚試験を受けることを
申し出た。
それが

『平成20年(2008年)6月1日改正道路交通法の前と後』
〔2014-09-02 18:30〕

に述べている試験方法だった。

その結果は、私の場合は

「補聴器は免許の条件にはつかない。
でも、安全のため、補聴器をつけて運転するほうが
いいですよ」

と言われた。

(健聴者読者は、この説明の矛盾に、気がつくだろうか?
なぜ、法令で定められた聴覚検査で合格しているのに、
こう言われなければならないのだろうか?
日本人は、このように曖昧に説明してしまうことが多い)

そして、それから何年かは補聴器無しで運転していて、
それまでに事故はゼロ、違反が、原付自転車運転時の
ヘルメット無しによる反則1回だけだった。

しかし、その数年後、免許更新のある時、聴覚の検査を
申し出てみたら、その検査官の場合は法定検査ではなく、
検査官が指示したやり方で検査をした。

それは、私の後ろの10メートルほど離れた位置から、
声で呼ぶという方法だった。
それで私は反応できなかったので、

「今日から補聴器の条件をつけます」

と言われた。
でも、車のクラクションの音は常に、
ちゃんと聴こえていましたので、
自分は納得できなかった。

人の声とクラクションの音とは、
幾らなんでも違い過ぎないだろうか?

これはどうも、きちんとした客観的判断が
なされた結果ではなかったように思う。

それを差別と言うのではないだろうか。

このような健聴者の個人的な先入観で
何事も決めつけられてしまうのは、
納得がいかない。

検査官は手抜きして自分勝手な判定をせず、
法定検査をやるべきだったと思う。

聴覚障害者の運転が心配だというのなら、
それは自分たちのつくった法律にこそ、
問題があるのだ。

屁理屈で聴覚障害者の心を傷つけるのは、
本当にもうやめてほしい。

健聴者も、自分たちのそういうところに気づき、
変えるべきところは変えていってほしい、
と思う。


私はこの時初めて、運転免許制度、そして警察のいい
加減さを知り、それからは疑問に思うようになっていった。

なぜ検査もせずに、勝手にこんなことをするのだろうか?
自分たちのつくった法令に、そんなに自信がないから
だろうか?

そうだ。
きっと、心配だからだ。

聴覚障害者への偏見か?
差別からか?

そうだ。
これは、彼らの鈍感による、差別なのだ。

いずれにしても、理解しがたい愚行だ。

それから数年後、大勢のろう者が集まる運転免許フォーラム
があり、私も参加したのだった。



警察に

「補聴器は条件にならない」

だの、一転して

「補聴器も条件にする」

だのと勝手に言われていたのは、
それはもう25年ぐらい前のことだった。
障害者手帳も持っていなかった頃のことだった。
聴覚障害6級に相当すると思われる聴力だった。

なぜなら、その頃、すでに、確実に人の話を聞き取る
には1メートル以内でなければならなかったからだ。

その頃の国産アナログ型補聴器の性能の悪さは、
半端ではなかった。

加えて、当時の自動車のほうも、エンジン音は
今の自動車に比べ、かなりうるさく聞こえた。

それでも、後になって免許の条件に、一方的に補聴器
をつけることが義務付けられてしまったので、
最初は真面目に補聴器を装用して運転してみた。

ここで、健聴者の読者の皆さんにも、補聴器というもの
について、しかもここでは、約30年前に買った補聴器と
いうものについて、勉強しなくてはならない。

そうでないと、私がこれから話すことを正確に理解できない
からだ。

当時の国産アナログ型補聴器の特性を説明しよう。
バイクではハウリングの問題を挙げたが、車の運転では、
補聴器に内臓されたマイクの「指向性」が問題になる。
ノイズも著しかった。
狭い車内で機械を操作するのだから、補聴器は近くの雑音
をみんな拾ってしまう。
その音が耳、そして頭の中に入ってきてしまうので、
まともに運転し出すと、外の音まで聞き分けるのは不可能
に近かった。

これで、運転に集中できるだろうか?

補聴器をしたほうが、余計に外の音が聞こえなくなる
危険状態だというのに。

免許試験の時の聴覚検査は、何のためにしたのだろうか?

このようになってしまうのは、補聴器の内臓マイクによる
指向性も原因なのだと思う。

もともと、補聴器というものは、近くの人の話し声を聞くために
あるもので、そういう設計になっているものだ。
だから車内でも当然、そうなってしまう。
車内の操作音を何でも拾って、耳に入れてくるので、
外の音なんかほとんど聞き取る余裕が持てなかった。

さらに、窓を開けた時の、風が補聴器のマイクカバーへ当たる
「ザザー」という強力な音(風切り音)も、外の音をほとんど、
わからなくしてしまっていた。
これだけ説明すれば、健聴者ももう理解できるはずだ。

「何のために補聴器をするの?」


そして、それは

「なぜそれでも、補聴器をつけることが条件になるの?」

となるだろう。
誰もが「おかしい」と思うはずだ。


「窓を開ければ、補聴器で外の音も聞こえるようになるだろう」

と思っている健聴者もいるかもしれないが、こちらとしては

「補聴器が風で吹っ飛んでしまわないか」

と心配になってくる。
特に対向の大型車などとすれ違う時の突風は、
危険だと思った。
だから、もし補聴器を装用して運転するなら、
窓はあまり開けないのである。

たしかに、車を運転する時は、常に補聴器を持っているが。
仮に装用するとしても、電源を入れないか、
入れてもボリュームを最小にしてしまうのである。


ワイドミラーがその時になって必要だとも、
私は思わなかった。


では、聴覚障害者マークはどうだろうか?
これも、よく考えると、一部のろう者だけには、
免許取得時から半永久的に義務付けるというのは、
疑問もあるのではないかな、と思う。
いつまでも「初心者マークと同様に」とすべきなの
だろうか。


「初心者マークと同様に、周囲の運転者はこの標識を
掲示した車両を保護する義務を有し、幅寄せ・割り込み
(やむを得ない場合は除く)などの行為を行なっては
ならない」



「表示は義務となっており、表示しなかった場合、違反点数
(1点)、反則金などが課せられる。」


ちなみに、パブリックコメントでもあったように、
やはり珍しい聴覚障害者マークをつけた車を
見かけると、写真でも撮られたり、何かと差別的な
話題になったりしかねないような心配もある。

中には、本当に冷やかしてくる人もいるかもしれない。

車にはナンバーもわかることから、プライバシー侵害
の心配もあると思う。
駐車場にあるだけで、その家に、あるいはその辺に
ろう者が住んでいるとわかってしまう。
もみじマークと同様に、不特定多数の人にわかるので、
犯罪の標的にされやすくなる可能性もある。




運転免許制度で運用されている「聴覚障害者標識」だが、
こんな使い方をする警察署もある。
認知度はいかほどなのだろうか?
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路線バス車内のポスターにも、聴覚障害者標識が掲示されている。
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by bunbun6610 | 2014-09-06 18:30 | 運転免許制度への疑問

ある聴覚障害者から見た世界


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