なぜ手話ができない聴覚障害者が多いのか?

「なぜ手話ができない聴覚障害者が多いのか?」

もし、こういう疑問を持つ人がいるならば、まず「聴覚障害者」
という用語の意味を誤解している健聴者が多い、ということが
原因になっていると思う。(※1)


(※1)〔関連記事〕

『聴覚障害者についての誤解と、手話言語法』
〔2014-06-22 18:30〕






同じ「聴覚障害者」と呼ばれるろう者、難聴者、中途失聴者であるが、
その手話についても誤解が広がっているというか、曖昧にされて
しまっている。 (※2)

中途失聴者や難聴者が使う手話〔日本語対応手話〕は、
手話〔日本手話〕と認めていないろう者も多い。


(※2)〔関連記事〕

『誤解されている手話』
〔2011-06-18 21:25〕






他にも、次のような資料があるので、より客観的に理解できる
のではないか、と思う。


『身体障害者・児実態調査結果の概要
(平成8年11月1日調査)

平成11年1月
厚生省大臣官房障害保健福祉部

III 調査結果の概要(生活実態等)』






>「(3)聴覚障害者で「手話ができる」と答えた者は43,000人
(14.1%)である。
 等級別に「手話ができる」割合をみると、1級が42.9%で最も
高く、障害の程度が重度になるにつれ「手話ができる」割合が
高い。」



「手話ができない」と答えた人のうち、4級の聴覚障害者は
82.1%、6級の聴覚障害者では79.3%に達している。

「手話ができる」と答えた人は、4級の聴覚障害者は3.6%、
6級の聴覚障害者では1.1%しかいない。

つまり、このことが

「手話言語法は、“ろう者”を主な対象者とする法律」

とした理由なのであろう。(※3)


この法律の対象者に「聴覚障害者」という用語を用いたら、
おかしくなるからだ。
そんなことをすれば当然、批判も起こりかねない。

手話を母語とする聴覚障害者「ろう者」(Deaf)と、
日本語を母語とする聴覚障害者(deaf)は、当然、
混同されるべきではない。
混同すると必ず、大きな問題が起きてしまうだろう。


(※3)
『手話言語法って、何? (1)』
〔2012-01-16 21:06〕


参照。



手話言語法は勿論、必要である。
しかし他方で、手話ができない聴覚障害者にとっては

「むしろ、手話ができない聴覚障害者にとっては、
言語的逆差別も生じてしまうのではないか」

という懸念も生じる。
それは決して、聴覚障害者全体にプラスになる、
とは限らないだろう。

だがそれは決して、ろう者のための法律に反対という
わけではない。
これまでも「聴覚障害」についての、健聴者の正しい
理解が得られてこなかったために、懸念するのである。



>「(4) 年齢別に「手話ができる」割合をみると、20~29歳
が71.4%で最も高く、高年齢になるにつれて低い。」



若い人の割合が高い、ということは、「手話ができる」のは
「先天性聴覚障害者に多い」ということだろう。
実際、若い人ほど、手話は容易に覚えられるが、年齢が
高くなるにつれて、手話の獲得は難しくなる。
年齢の高い人に多い聴覚障害者は、難聴者や中途失聴者が多く、
それらの人たちは、すでに日本語が母語となっている。
したがって、手話が母語ではないし、それを新たに学習するのは、
かなりの苦労を伴う。

反対に、1級の人は先天性聴覚障害者であり、言語障害もある
「ろう者」だ。
「表III-4 障害の程度別にみた手話修得の状況」を見てほしい。
言語障害のある、ろう者の母語は手話だといわれている。

2級に該当する人には、ろう者だけではなく、中途失聴者も該当
するので「手話ができる」と答えた人の割合はある程度、下がって
しまうのである。

3級の聴覚障害者には「難聴者」もおり、ろう者かどっちなのかは、
曖昧になってくる。

しかし、4級、6級は「難聴者」だろう。

難聴者の母語は手話ではなく、健聴者と同じ日本語である場合
がほとんどなのである。
それが、このデータからも証明されているといえる。


聴覚障害児が生まれる確率は「約千人に一人」だという。

しかし、難聴者や中途失聴者は、もっと高い割合で存在する
はずである。
将来は四人に一人が高齢者、という時代ということもあって、
難聴者の割合も高まってきている、と思う。
人口は減っているのに、こうした聴覚障害者の数は、逆に
増えているのである。
するとやはり、手話ができる聴覚障害者の割合は、少ない
わけである。





〔関連情報〕


引用元
『健聴者が答える手話と聾問題 : 手話編』
(徳田昌晃氏)


「Q1-5. 聴覚障害者は誰でも手話を話すのではないのか?

むしろ、手話を話す聴覚障害者は少ない

誰でもというわけではない。
話せない人もいる。
実際は、話せない人の方が多いのではないか
と言われている。

厚生省の1996年の調査に よれば、聴覚言語障害者
の総数は35万人。
その中でも手話ができるのは、4万3000人とのことである。
潜在的な人を含めれば、もっと数は多そうだが、
20万人を越えることはなさそうだ。

聴覚障害といっても、手話を覚えているかどうかは
その障害になった時期が大きく関係している。
つまり、手話を覚えられるときに失聴したかどうかだ。
子供の頃に失聴すれば、母国語のように覚 える可能性は
高い。
逆に、年をとってからでは頭も固くなり、覚えられない。
このような状況から、 子供の頃に失聴し手話を修得した
人を聾者、大人になってから失聴した人を中途失聴者
と呼ぶこと がある。」

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by bunbun6610 | 2014-07-19 18:30 | 聴覚障害

ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610