聴覚障害者ジョブコーチ制度

聴覚障害者ジョブコーチ制度をご存知だろうか。


東京都聴覚障害者自立支援センター


東京ジョブコーチ支援事業




〔参考情報〕

NPO(特定非営利活動)法人 日本就労支援センター
『就労支援・ジョブコーチ』





実は、こうした聴覚障害者支援制度そのものが、
まだまだ珍しいそうだ。
東京でさえ、その支援員はまだ3人ぐらいしか
いないらしい。

そうした支援員の少なさもあるけれども、
働く聴覚障害者に対する支援のネックとなって
いるのは、やはり健聴者にあるのである。


『『社内の理解促進の取り組み…』』
〔2014-05-29 18:30〕




聴覚障害者が会社面接時に、また採用後に、
ジョブコーチ制度の有効性を伝えても、
会社はそれをあっさりと拒否する。
その理由は、一体何だろうか?

最初に考えられるのが、やはりジョブコーチは
社外の人間である以上、社内に入れて情報を
知られてしまうのはよくない、と思っているの
だろう。
最近、ベネッセコーポレーションの個人情報漏洩
事件があったが、そのようなリスクがつきまとう。
これでは厳しくなるのが当たり前だろう。

幾らジョブコーチに守秘義務があると説明しても、
会社のリスク管理のほうが重要視されてしまうのが
現状で、厳しい。
たかが人事部の障害者担当一人で、その許可が
出せるわけがない。

この許可をもらうには、役員にまで相談しなければ
ならない、と思われる。

こうなってくると、人事の人だって

「聴覚障害者はやめて、他の応募者にしようか」

と考え直したりするのではないだろうか。

つまり、応募する聴覚障害者としても、落とされる
理由になってしまう。
これが聴覚障害者にも、ジョブコーチ利用を避ける
理由にもなる。

補聴器だけで障害者面接会に臨んでいる
聴覚障害者が多いのも、そのせいではないかと
思われる。


もう一つの理由は、これは全ての健聴者に対して
言えることであるが

「聴覚障害者の特性を生かす方法を知らない」

ということが挙げられると思う。
つまり、健聴者の無知がバリアとなっているのだ。

これは聴覚障害者に不利を与えただけでなく、
その障害者を雇用している会社、
さらには社会全体にとっても、大きな不利益と
なっている。

私の見た感じでは、健聴者は聴覚障害者の
能力の10~60%程度しか、
生かせていないように思う。
おそらく「能力がない」と思われているのだろう。

残念なことに、愚かな健聴者は、その誤解にも、
全く気づいていない。

このようなわけで、聴覚障害者の就労現場に
ジョブコーチを入れるというのは、障害者雇用
と同様、リスク面ばかりクローズアップされて
しまっているので、非常に難しい状況にある。

障害者雇用は、大きな会社ほど、それだけ
多くの障害者を雇用しなければならない
システムになっている。

しかし、大きな会社ほど、特にリスク管理の
厳しさがつきまとっているために、
聴覚障害者のジョブコーチは入りづらそうに
思う。

なぜかというと、理由は他にも考えられる。

たとえば、ろう者の場合、手話という、
異なる言語が入るからかもしれない。
仕事を覚えるための手話通訳とはいっても、
聴覚障害者と手話通訳者の手話を見ている
会社の人には、何が何だかわからないし

「本当に自分の説明したことが、
これで伝わっているのだろうか?」

と不安にさせる場合すらある、という。

最悪だと手話通訳者から

「『わかった」と言っています」

と言われるが、本人の様子を確認してみると、
実はわかっていなかったりする、という。
これでは何のための手話通訳者なのかと、
疑問視される場合もあるらしい。

また、このままずっと、手話通訳者代わりに、
ジョブコーチに定期的に来てもらう、
というわけにもいかないだろう。

何より、聴覚障害者がその依存へ陥って
しまっては困る。
そうしたことへの警戒感があるのでは
ないだろうか。


しかし、実は、事業所がジョブコーチ制度を
使ったという例が、私の場合では一つだけある。
そこの場合は個人事業であり、社長自らが
私と面接し、採用となった。
その時に、私が

「ジョブコーチを使ってみますか?」

と申し出たら、OKだったのだ。


筆談が上手い健聴者というのは年齢層などにも
よるが、学歴の良い若年者なら10人中4、5人
くらいはいるかもしれない。
しかし、中高年の人となると10人中1、2人いれば
いいほう、だってある。
だから私も、健聴者の筆談のまずさで伝わらず、
人間関係まで悪くなって、辞めたこともある。

そういう例は、このブログに、たくさん書いている
ので、読者の皆さんにもわかるはずだ。

聴覚障害者雇用のトラブル例で一番多いのが、
筆談でのトラブル(書き方が悪いとか、
最初からしないで、声で怒鳴ったりすること)で、
そこから多くの問題が派生してしまっているのだ。
これが、コミュニケーション障害の恐ろしさである。


しかし、相手が社長ならば、話は早い。
だから、もしかしたら、小さな事業所で、
出来れば社長と直談判できるところだったら、
ジョブコーチ制度の利用率も上がる可能性は
あると思う。

そこで、せっかくだから、このジョブコーチ制度の
採用例を紹介したい。
唯一、採用になったケースで、しかも、これは
成功しているからである。

勤務場所は、ある沖縄そば専門店だった。
仕事内容はそば作り専門者で、手が空いたとき
には洗い物や、お店の清掃、開店準備なども
していた。

当初は、入店後1週間はジョブコーチが私に
付いて、仕事の説明の際の手話通訳を行い、
その後は慣れてくるまで様子を見る程度、
にするはずだった。

だが実際は、初日に一日の仕事の流れを見て、
2日目からはもう、自分でやってみて、
そして3日目は様子を見るだけで済んでしまった。
私は麺作りの仕事など全くの未経験だったの
だが、それでもジョブコーチの派遣日数が
大幅に短縮したのは、私のの仕事の覚えが
早かったからだ。
社長自ら指導してくれて、私はジョブコーチの
手話通訳を介して覚えたが、社長は

「普通(健常者)の人でも、
こんなに早くは覚えられない」

と話していた。
だから、ジョブコーチの派遣は、わずか3日間で
終わってしまったのだ。

私ならば、筆談の上手い人で、さらに教え方も
上手い人ならば、ジョブコーチがいなくても
覚えられたと思っているが、
そんな有能な健聴者は、なかなかいないものだ。
社長も、筆談は得意ではなかったようだ。
別の店で働いた時は、最悪の人だったので、
辞めたこともあった。

そういうわけで、指導する人は聴覚障害者との
コミュニケーションに自信がなければ、
やはりジョブコーチを派遣してもらうのも、
聴覚障害者雇用を成功させるカギになるだろう。

派遣も相談も一切、無料、秘密厳守だから、
手話通訳を雇うよりも、ずっとメリットがある。

ただし、注意すべき点もあると思う。

ジョブコーチがつくからといって、この例のように
うまくいくとは、必ずしも限っていない。
優秀な聴覚障害者なら、手話通訳をつけることに
よって、仕事の説明を理解し、すぐに覚えるだろう。
それはやはり、書記日本語の筆記力、読解力など、
総合的能力が高い聴覚障害者だからなのでは
ないか。

もし、それが弱い聴覚障害者だったら、ジョブコーチ
にばかり頼ってしまい、メモはほとんどとらず、
何度もくり返して教えてもらうことを要求されるかも
しれない。
あるいは「はい」とうなづくだけで、一向に覚えられ
ないとか。
そんな聴覚障害者も、実際にいたからだ。

したがって、手話に全面的に依存してしまう
聴覚障害者には、ジョブコーチ支援をしても、
あまり複雑な仕事は難しいだろう。

ジョブコーチは、永久につきっきりでいるわけでは
ないのだから、自分でできるようになる障害者の
ための制度である。
民間企業への就労に移行する障害者には、
必要な支援だが、施設暮らし向きの障害者の
ための支援とは異なると思う。

これは会社の面接官も、選考試験の段階で、
障害者の適性や能力を見抜かなければならない。
もし見抜く自信がないのなら、そのことも
ジョブコーチに相談したほうがいい、と思う。
つまり、聴覚障害者の選考試験の段階から
ジョブコーチを呼んで、一緒に選考すればよい、
と思う。

だがこれは、ジョブコーチ制度の性格からいうと、
難しいのではないか。
ジョブコーチ制度は、会社が採用した聴覚障害者
に対する支援、というのが基本だからである。
何かいい方法はないものなのだろうか。

聴覚障害者ジョブコーチ制度は、本当ならば
どの企業も、利用したほうがトクだと思う。
なぜなら、聴覚障害者雇用の場合は、
本当に健聴者の誤解や無知、無関心が原因で
失敗に終わってしまうケースが多いからだ。

本当に健聴者の、下らない失敗が最大の原因
なのであるが。
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by bunbun6610 | 2014-08-03 18:30 | 就労前の聴覚障害者問題A


ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

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