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ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

筆談しない上司との人間関係

副題;『障害者配属部署にいる、ダメ上司、ダメ社員物語』
『バカ上司のダメなコミュニケーション』


〔関連記事〕

『バカがいつまでも聴覚障害者差別をしている時代に』
〔2013-04-03 18:00〕





佐村河内氏は3月7日の謝罪会見のとき


>「新垣さんに最初は筆談をお願いしていた。
口話でゆっくりしゃべってもらって、わからないところは
もう一回お願いします
と何百回も言ってきた」



と言っている。


『「矛盾」「食い違い」多数… 佐村河内氏と新垣氏の発言比較』
〔2014-03-08 00:06〕


より引用。)



あれは、どう思うだろうか。
ろう者を除いた聴覚障害者、すなわち難聴者や中途失聴者ならば、
佐村河内氏の釈明を信じる人も相当いるのではないだろうか。

私は

「どちらともわからない」

としか、言いようがないけれども、仮に

「どっちにするか選べ」

と言われたのなら、佐村河内氏の言葉を信じるだろう。
(「何百回」は幾らなんでもウソだろう、と思うが)

私にも経験のあることだからだ。

しかし、健聴者だったら、佐村河内氏のこの話なんか、
信じていない人も多いのではないだろうか。

そこで今回は、このことについて、聴覚障害者の立場
から話してみたい。

佐村河内氏と私とでは、聴力や、聴こえが性質的にも
違いはあるが、私のよく似た体験談を書こう。

これは、佐村河内氏が言っている新垣氏の
“幾らお願いしても書いてもらえない”ケースと、
ほとんど同じ例と言ってもいいだろう。


職場にもいろいろな上司、社員がいて、なかにはダメな人
だっている。
その仕事ぶりがダメな上司は、部下とのコミュニケーション
においても、それが顕れることも多いものだ。

以下は、E上司(Tさん)とのコミュニケーション・トラブル
の事例である。


E上司;「ちょっと、今日の仕事の話があるから、来て」

(と言われ、手招きされて個室へ呼ばれる)

私;「はい。何でしょうか」

これはもう、聴覚障害者なら、初めからわかるだろう。
聴覚障害者を個室へ連れて行き、音声で説明しようという
つもりだ。
補聴器の活用と言えば、聞こえはいいが

「本当は筆談なんかやりたくない」

というのが、こういう健聴者の本音なのである。

E上司は最初だけ、私が持ってきた筆談ボードに、
書いてくれた。
しかし、その字は汚くて、読むことができなかった。
それを具体的に言うと、幼稚園に入る前の子どもが書いた、
「ミミズが這っているような文字」で、読めなかったのだ。

そういえば、幼稚園に入る前の子どもは文字を書く練習をして
いないので、ミミズが這うような文字だ。

私が「何て書いてあるのですか?」

と尋ねると、筆談ボードの文字を消して、もう一度書いてくれる。
本人は不器用(過ぎるのだが)ながらも、一所懸命書いている
つもりなのだろうが、二度目も全然読めない。

これは

「E上司のような人の場合、紙とペンで筆談してもらったほうが、
まだ字も読みやすくなるのではないか?」

と考え、私は次に紙とペンを差し出した。

しかし、これでもほとんど変わらなかったのだ。
要するに、E上司は、恐ろしく筆不精だということだろう。


この問題を解決する方法があるとすれば、次の2つのうち、
どれかしかないだろう。


(1)聴覚障害者への通訳(手話、またや要約筆記)を利用する。

(2)筆談する者同士が、筆談の文字を丁寧に書く。
E上司が毎日、筆談の練習をする。


会社は必ず、費用負担を嫌がるので、結局(2)しか方法はない。
それで、この問題解決はE上司の努力次第である。
それなのに、さらにもう一度

「何て書いてあるのですか?」

と尋ねると、E上司は書くのをやめて、しゃべりはじめるのである。

(別の会社では、字は読めるのだが、文章力が著しく劣っていて、
意味がわからない、というケースもあった)

読者も私が過去にした、あの話(※)を、覚えていませんか?


(※)

『聴覚障害者差別の原因は、健聴者の人格的欠陥にある』
〔2014-03-31 19:00〕




E上司は一方的にしゃべって、勝手に伝えて終わり。

「はい、伝えましたから、後はあなたが頑張って、やって下さい」

という態度を見せる。

しかしまあ、障害者雇用の仕事というのは、大変狭い職業なので、
言われる前から、あるいは言われたことで何か一つでもヒントを
つかんでしまえば、あとは大体想像がつく。

ただし、細かな説明まではわからないから、要確認となる。
だから、E上司との、このコミュニケーションは無駄だと判断し、
私は適当に話をさっさと済ませることにする。

私も読唇と、得意の文脈推測力で

「は? ●●●ですか?」

と得意の“オウム返し”をE上司に向かって炸裂させる。

E上司;「いや、違う! ×××!」

私;「え?! ▲▲▲?!」

E上司;「×××!!」

私;「???」

E上司;「×××!!!」

次第に、お互いの声は、密室の中で怒声に変わっていく。
胃部レントゲン検査室で、男性技師からよく受ける、
“声による屈辱”と同じだ。

もし、他の人がこの様子を見たら、ケンカをしているように
見えてしまう。
だから、初めから個室へ移動し、二人だけで話すことに
しているのだ。

他の人だって

「何やってんだ? E上司は?
あの聴覚障害者は、筆談しなくてもわかるの?」

と思ってしまい、社内にとんでもない勘違いが広がってしまう。

だが、この責任は勿論、E上司にあるのだ。
このバカ上司が原因で、筆談しなくなる人が増えてしまうのだ。
こういう類の健聴者はそうやって、聴覚障害者差別を職場から
隠しているのだ。

結局、こうなるから、たとえ職場に聴覚障害者ジョブコーチ
なんか呼んで聴覚障害の説明をしてしてもらったところで、
ムダだと思われるのである。

「おそらく、世の中の聴覚障害者問題は永遠に解決しないだろう」

と思われる原因が、ここにあるのだ。
そして、次第に諦めていってしまう聴覚障害者の、何と多いことか!
だから私は、佐村河内氏の言うことも、信用できるのである。


佐村河内氏も「実際は聞こえていた」のではなく、
このケースのように諦めざるをえなかったのではないだろうか。
だがそれは、誤解を産んでしまう。

「実は聴覚障害そのものよりも、そっちのほうがもっと怖い」

ということが、本人すら気づかなかったのだろう。

これは、難聴が理解されない原因の一つだ。


会話が終わると、E上司は「やれやれ・・・」という表情を見せる。
しかし、これはお互いさまなのである。
怒りたいのは、こっちのほうなのである。

それでも、「数打てば当たる」の言葉があるように、
やっと通じることがある。
健聴者が期待しているのは、こういうことなのである。

一度でもまぐれで当たると、次は私の筆談ボード
なんか放り出したまま、次々としゃべってくる。
そして、次第に、何を言っているのか、さっぱりわからなくなる。
私は、E上司の嵐のような口撃がやむのを待つ。
これではマズイから

「要するに、こう言いたいのですね」

という感じで、結論だけ当てて言ってみる。

すると、これも当たって、E上司はようやくホッとした表情を見せる。



『新年度の人事異動で起きた問題点』
〔2014-06-20 18:30〕



で、カタログの仕事を誰が、どういうふうにやるのか、という
話し合いをしたが、その時は

「(要するに)私にその仕事をやってほしい、というのですね」

と言ってみた。
すると、相手はYESの表情を見せた。
どういうふうにやれ、とまではわからないので、
ともかく頼まれたという事は、私は

「自分で考えてやっていい」

と解釈した。

ここで、読者の皆さんにも考えてもらおうと思う。

こういう意思疎通が不完全なコミュニケーションが
日常茶飯事的にある聴覚障害者のケースでは、
職場でのトラブルに発展することも多いそうだ。

この場合だって、健聴者には

「聴覚障害者は自己中心的に行動している傾向が目立つ」

などと思われていることが少なくないらしい。

しかし、本当に自己中心的なのは、果たしてどちらなのだろうか。
是非、考えてみてほしい。

この事例から、すでに結論が見えているはずだ。


E上司には言ってもわからないので、この問題点は結局、
後で人事部へ伝えることにした。


私;「最近、職場でまた困ったことがあるのですが・・・」

人事;「何でしょうか?」

私;「今度の人事異動で、E上司から仕事を頼まれる機会が
増えてきたのですが、E上司のコミュニケーションについてです。
言いにくいことなのですが、E上司は最初のうちは筆談して
くれますが、字が汚くて、読めないんです。
それで、書き直しをお願いします。
でも、やっぱりまた読めない字で書くんですね」

人事;「ああ~、なるほどね・・・」

私;「それで、何度もお願いしても同じだから、結局、
E上司は声で説明し始めるんです。
仕方なく、私は結論だけ知って、後は担当者のところに
行って、細部を確認しています。
でも、これじゃ、E上司が介している意味なんてないですよ」

人事;「ないね~、それじゃ」

私;「最初から、担当者に話を聞いたほうがいいじゃないですか。
E上司なんて、要らないですよ」

人事;「そうだね。わかった、考えてみるよ」


ハッキリ言おう。
私が今している仕事の場合は、必ずその関係書類をもらう。
絶対に間違えてはいけない仕事だから、その書類を見れば、
その仕事を遂行するために必要な情報は何であるか、
ということも、すぐにわかる。
だからE上司の話なんか聞こえなくたって、その書類を見たら
わかることだ。
話し中に書類を見ていると、E上司は「聞いてるの?」という
目つきで睨みつけるが、筆談もないし、聞こえないのに
聞いたって、どうするのだろうか。
それが、自分の言い分である。

だから私は、わからないことは気の利く人、筆談ができる人に
尋ねればいいのだ。
だから結局、E上司が担当者と私との間に入る意味は全くない。
こんな中間管理職の人なんて、会社の無駄なのだ。

私は、聞こえなくたって、今の仕事をすることに関しては、
全然困っていない。
困るときというのは、E上司のような人とコミュニケーション
をしなければならない場合だ。
これはすなわち、コミュニケーション障害の原因は、健聴者の
人格的問題点に起因している、ということを証明している。

感音性難聴障害ゆえに、どうしても聞き取りづらい声の人とか、
あるいは筆談も苦手な人とコミュニケーションをすると、
問題が生じたりするのは仕方がない。
そんな場合、皆さんも別の人に相談するとよい。
人事の人でもよいし、頼りになる他の社員に聞き返してみてもよい、
と思う。
普段から献身的に働き、自分の仕事仲間をつくっていれば、
そういう環境は自然にできる。
それが、あなたにも必要な“問題解決力”だ。
社会人として必須だと思う。

いずれにしても、そうしているうちに、E上司のような人は
周囲からの評判も下がっていき、次第に存在感がなくなって
ゆくものである。
E上司のような人とのコミュニケーションが不便なのは、
別に聴覚障害者の恥でも問題でもないのだから、
気にすることはない。

しかし「聴こえない障害者だから」といって、仕事ができない、
あるいはしない、というのは考えものだ。
やはり、E上司抜きでも、自分で仕事ができるように工夫を
すべきだ。
そうすれば、聴覚障害者であっても、周囲の人からの評価が
落ちるということはない。
E上司のせいにするだけで、自分で他の方法を切り開く努力を
しないことのほうが、聴覚障害者自身の問題として見られるだろう。
だから、E上司のような人は、放っておくことにしている。
人事には伝えるべきことを伝えたが、後はどうするかは、
人事の問題だ。


他には、ジョブコーチなど外部の人に相談し、力を借りる、
という方法もあるそうだが、会社はそれを歓迎していない、と思う。

“社会人として自立できていない障害者”というイメージを
与えかねない。
それ以上に、一度それに頼ってしまうと、次にまた何かあった
ときに、障害者がまたそれに頼るという依存症が起きてしまったら、
健常者は

「やっぱり障害者って、子供なんだね」

という目で見るのではないだろうか。
これは、決して、私がジョブコーチを否定する発言をしている
わけではないので、誤解しないでほしい。
その見方が良いか悪いかは別にしても“社会の目”特に
“会社の目”というのは、まずそういうものなのだ。
自分の力で解決する“自己解決力”をつけることが、
最良方法だと思う。
それが社会の求めている“自立”、会社の求める“社会人”
なのだから。
ただし、それは

「他の人に協力を求めるべきではない」

という意味ではないので、この点を勘違いしないように。




【追記】

結局、人事部にも相談した後は、Aさんが休んだりして、
Bグループの仕事をしなければならなくなった場合には、
今後はE上司でなく、筆談も問題なく出来るD上司の仲介で、
私に指示を出してもらう方法に変わった。
これで、筆談ができないE上司と話さなくても済むようになった。
また、カタログのことで揉めていたSAさんとも、一切、
話をしなくなった。

職場の人間関係上からは、良くない状況に変わったけれども、
私は

「聴覚障害者がこれからも気持ちよく働けるようにするための、
やむをえない配慮方法だ」

と評価している。

問題点が現場で解決しないような場合は、
人事部の障害者担当者に相談するのも、一つの方法だ。
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by bunbun6610 | 2014-06-23 18:30 | 就労後の聴覚障害者問題E