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蒼穹 -そうきゅう-

『こころの段差にスロープを』(松兼功/著)(12/13)『“障害者ドラマ”に嘘があったっていい』

『こころの段差にスロープを』
(松兼功/著 日本経済新聞社/発行所
1997年10月7日/初版発行)



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『“障害者ドラマ”に嘘があったっていい』
耳が不自由な看護婦を主人公としたテレビドラマ「星の金貨」の
続編が始まると、またまた好評を博した。
ほかにもここ数年、障害をもつ人を主人公にした連続ものの
ドラマが相次いで高い視聴率を上げている。
結果論だと言われるかも知れないが、私はこの現象を3、4年前
からなんとなく予感していた。

各局がしのぎを削って制作するゴールデンタイムのトレンディ
ドラマのモチーフは、男と女のラブストーリー、キャンパスもの、
不倫、SFもの――と、制作者たちは知恵を絞ってありとあらゆる
シチュエーションを考え出してきたが、どうもここ数年アイデアが
ワンパターン気味だった。
それは視聴率の低下という形ではっきり表れた。

そこで制作者たちは、どこにでもあるラブストーリーに“障害”という
スパイスをかけることを思い立ったのだろう。
その証拠に、彼らは口を揃えて

「社会への啓蒙を目的とした、いわゆる“障害者ドラマ”を作って
いる気は毛頭なく、男と女の純粋な愛の姿を描いている」

と言う。
価値観や、善行を押しつけられることを嫌う若者が視聴者の大半
であるトレンディドラマにとって、この姿勢が高視聴率の原因に
なっているのかも知れない。

私自身、36年以上も脳性マヒと付き合って、その“スパイス”が
いかに波乱万丈な喜怒哀楽を生み出すかを実感している。

しかし、このようなテレビドラマに対して、障害をもつ人たちやその
関係者からは、現実の生活や状況とは違う、との批判も多く出ている。

実は、6年ほど前、私の大学時代を描いた青春記をもとにし、
二時間ドラマが放映された。
坂上忍さんが私の役を演じたのだが、その時も

「なぜあなた自身が演じなかったのか」

といった声がいくつかあった。
答えは簡単だった。

「だって私は彼ほど顔が良くないし、だいいち俳優じゃないから」

これまであまり世間に知られていなかった“障害者”が、何気なく
お茶の間で話題になることは悪いことではない。
ドラマに出演した女優が、それがきっかけで手話教室に通い続け、
今では共演者たちの先生役をかって出ているという話も聞く。
そうした広がりはきっと一般の人にも影響を与えていくはずだ。

考えてみると、これまでのヒットドラマだってうまい嘘をついた賜物だ。
障害者ものに限って嘘をまったく許さないというのは不公平だ。
まるっきりのデタラメでも困るが、すべてが現実のままでは“ドラマ”
になり得ないし、想像力はふくらまない。

障害の種別は違っていても、美人女優の常盤貴子さんや鈴木京香
さんに愛される、障害をもつ主人公の男性をついつい自分に置き
かえて、「こっちも恋にがんばろう」とニタニタするミーハーな私がいる。

真実ではないと知りつつも、うまい嘘は現実の生活をいつの間にか
生き生きさせるようだ。
そこに、ドラマの真髄だってあるのではないだろうか?」
(P185~187)



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by bunbun6610 | 2014-06-12 18:30 | バリア&バリアフリー