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ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

『こころの段差にスロープを』(松兼功/著)(5/13)障害者施設の絵画展で

『こころの段差にスロープを』
(松兼功/著 日本経済新聞社/発行所
1997年10月7日/初版発行)




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「一種一級の脳性マヒである私の一番の財産は、どんな状況にも禁じられず、
いきいきした行動力を生み、さまざまな人や出来事にぶつかっていく好奇心
である。
そして、そこから芽生える怒り、知恵は見えない束縛を解き放ち、新しい世界
をつくる原動力となると信じている。」(P32~33)


「東京の劇団で女優をしている友人が、とある障害者施設が主催する絵画展
に出かけた時のことだった。
会場には、その施設で働く、障害をもつ人たちの手による作品が並べられ、
即売も行われていた。
一枚でも多くの絵を売ろうと、案内役の施設職員は一つ一つの作品の素晴らしさ、
芸術性の高さを力説した。

言葉通り、彼女の心をとらえた作品がいくつかあり、なかでも一番目を奪われ
感動した一点を数万円をはたいて買うことにした。
その時、彼女は久しぶりに心が洗われるような絵を自分のものにできて、
とてもウキウキした気分だった。

ところが、代金を払い終わり、案内役から作品を受け取る段になって、

「ご協力ありがとうございました」

と、頭を下げられた。
彼の口ぶりには何のためらいも感じられなかったという。

一瞬にして彼女は、自分が買った絵と彼女自身の感性がおとしめられた
気がして不愉快になった。

「私はなんにも“協力”なんてしてない!
ただ、心を動かされたその作品を自分のものにしたいから買っただけ
なのに・・・」

という怒りにも似た戸惑いが彼女の胸をよぎったのだ。

ついさっきまで、あれほど作品の素晴らしさを力説して売ろうとしていた
職員が、なぜ売買が成立した時点で、募金や慈善事業でもしているよう
な口ぶりに変わるのだろうか?
それではその作品、そのつくり手が、恐ろしく軽んじられてしまう。

もちろん、“ご協力”という言葉を使って頭を下げた職員にしてみれば、
これといった意志をもってしたことではなく、何の気なしに取った行動
だったのだろう。
が、逆にだからこそ彼女は、福祉業界全体に通じる勘違いを察知して
不快感を覚えたのかもしれない。
・・・(中略)・・・
相手から

「お買い上げありがとうございました」

と言われていれば、彼女もいい気分のまますんなりと帰路につけたに
違いない。
芸術作品(感動)を売り買いするというフェアーな関係が生まれたからだ。」
(P33~34)



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by bunbun6610 | 2014-06-05 18:30 | バリア&バリアフリー