補聴器と発声訓練が、聴覚障害者にもたらしたものとは――。

聴覚障害者は、音声言語中心の世界で――。

補聴器と発声訓練が、聴覚障害者にもたらしたものとは――。

『声を出すことをやめることができない難聴者、中途失聴者。
声を出すことをやめることができるろう者。』



〔関連記事〕

『米国社会から見た手話』
〔2014-05-31 18:30〕





聴覚障害者支援をされている、ある健聴者に、
コミュニケーション方法について相談してみたことがある。

私;「あの・・・私は、実は耳が聞こえないのですが、
しゃべることはできるんです。
でも、しゃべってしまうと、相手も『聞こえない人だった』
ということを忘れてしまい、ついついしゃべってしまうんです。
それで、コミュニケーションの時は、私はもう、しゃべる
ことをやめて筆談に専念したほうがよいのでしょうか?」

健聴者「何で?
あなたはしゃべれるんだから、しゃべっていいでしょ。
ろう者でもないのに、しゃべらないで自分も筆談するのは
おかしいじゃないか」

私;「・・・・・・(とても有難い話だったが、現実を考えると、
複雑な気持ち・・・)」



私は、ある会社では、補聴器をして面接に臨んでいた
ことがあった。
今でもそうせざるをえないのが、ほとんどなのだが。

もちろん、補聴器だけでは聞き取る自信がないので、
あるときは、自分で派遣依頼した要約筆記者を
同行させていた。

なかには

「通訳者を呼ぶ必要はありません」

と先方から申し出のあった場合もあって、その場合は
丁寧な筆談がつくのが普通であった。

しかし、中には筆談もない面接をわざと受けさせられる
はめになり、声で話しかけてくるだけの面接官もいた。

その理由を尋ねると

「ウチでは聴覚障害者だからといって、特別扱いは
していません。
仕事では筆談してはいられませんからね。
したがって、面接ではあなたが補聴器だけで聞き取れ
ているかどうか、実際に確認したいので」

障害者雇用なのにこう言われたものだから、
落胆してしまうこともあった。(※)


(※)これと、非常に酷似している事例もある。


『面接で聴覚障害者が落ちた例 - M社の場合』
〔2013-12-16 18:00〕



『聴覚障害者が障害者雇用に応募できなかった例 - T社の場合』
〔2014-01-21 18:30〕




実は、この企業を紹介したところがサーナだったので、
大変な驚きと失望だった。


今回は、要約筆記通訳者が同行した面接ケースを
話したい。

他の会社面接でも、同じように何度かやってみた
ことがあったが、よく言われるのが

「耳が聞こえない人とは、とても思えない」

という感想だった。

「意思疎通ができているから、何の問題もない」

と思っていたらしい。
好感触で、採用にいたるケースもあった。

しかし、後で聞いてみると、要約筆記者の存在が気に
ならなかったようであった。
というより、先方はほぼ忘れている。
それほど、通訳者の存在というのは、印象が薄かった
ようである。
原則として、通訳者は一言も話さないのだから、
健聴者から見れば、そんなものなのかもしれないが。


(しかしこれは、通訳者がよい仕事をしているという
ことなのである。
問題はむしろ、無知な健聴者のほうにある。)


それと、佐村河内氏事件でもあったが

「あなたは声が健聴者と同じだから」

というのも、やはりあった。
声で識別されているのが「聞こえる人」「聞こえない人」
を見分ける現状なのかもしれない。


ある会社で採用に決まり、
職場では補聴器を外して勤務したことがある。


『補聴器を外した理由』
〔2011-01-07 18:00〕




配属された部署が、自分の職場だ。
そこで

「仕事の大事な説明などは、筆談でお願いします」

と頼んだ。
ハローワークの手話通訳者兼職員の人も、聴覚障害者の
応募時にはよくこう言って、サポートしてはいた。

ところが、会社側の責任者の立場にいる、
何人かの先輩上司には、話す癖が治らない人も何人かいた。
人事は理解しても、聴覚障害者の配属部署となる現場の人には、
ちゃんと伝わっていないのである。

『健聴者の「聞こえない人に向かって喋る癖」』
〔2011-09-18 01:13〕




そこで私は、彼(彼女)らと口論することもあった。

するとすぐ、面接のときの人事担当者がやってきて

「補聴器はどうしてしないのか?
補聴器をしろ! 補聴器を!!」

と注意された。
一度でも補聴器をすると、最後までこうなってしまうのである。
面接のとき

「仕事の説明は筆談で行ってくれれば、問題はありません」

と伝えていたにもかかわらず、人事部の障害者雇用担当者
のほうも、それをすっかり忘れてしまっていたのだ。

このような悪事例は、聴覚障害者の中でも、特に言葉を
しゃべることができる難聴者や中途失聴者には、非常に多い。

しゃべれるがゆえに、相手も

「これくらいなら聞こえるだろう」

と勘違いし、どんどんしゃべってしまうのだ。
その悲劇が、下の例のように何回も何回もくり返されているのだ。


『筆談ボードを使用するように』
〔2010-11-24 18:00〕



『自部署の改善状況がまだ…』
〔2010-11-25 18:00〕



『筆談ボード、使われず』
〔2010-11-29 18:00〕



『筆談トラブル』
〔2010-12-02 18:00〕



『健康相談の通訳者派遣を断られる』
〔2011-03-04 18:00〕



『筆談忘れることを繰り返す健聴者たち』
〔2011-04-26 18:00〕



『健聴者、またまた筆談を忘れる』
〔2011-05-09 18:00〕



『筆談忘れる・・・』
〔2011-05-16 18:00〕



『職場の人に筆談してもらう方法』
〔2011-06-02 18:00〕



『職場の人に筆談させる方法』
〔2011-06-09 18:00〕



『会社で補聴器を外した理由』
〔2011-10-19 22:39〕



『筆談ボード対補聴器』
〔2012-05-22 22:27〕





〔関連記事〕

『聴覚障害者に通訳を用意しなかった警察署の理由とは?』
〔2012-03-21 19:00〕



『胃部レントゲン検査 - 会社の健康診断で、複雑な気持ちになったこと』
〔2013-12-19 18:00〕






それでは、言葉をしゃべらないろう者の場合は、どうだろうか。
上に述べた、健聴者の習性をすでに熟知しているろう者の場合は、
これが、非常に賢いのだ。
ある本に、その例が載っている。


『もうひとつの手話 ― ろう者の豊かな世界』
(斉藤道雄/著 晶文社/発行者
1999年6月10日/初版発行)


「そうした新しい世代のろう者のひとりであるAさんは、
コンピュータ関連の大手企業に就職したとき、はじめから
口話は使わないと心に決めていた。
口話を使ったからといって、聴者とのコミュニケーションが
とれるわけではないことを、経験上いやというほど知って
いたからだ。

『口話を使ったら、手話がなくてもやっていけるって思われ
てしまいますよね。
だから私ははじめから絶対口話を使わずに、まわりの人が
筆談になれてくれればそのほうがいいと思ったんです。』

はじめはまわりも戸惑ったようだが、とにかく筆談でやりとり
し、そのうち手話を覚えようとする同僚も出てきた。

聴者のなかにはろう者にむかって『声を出せ』というものも
いたが、声を出すか出さないかは宗教や信条と同じように、
生き方の問題だった。

Aさんは仲間との会話には口話を使うこともあったが、
仕事は手話ですませた。

そんな職場に6年勤めたが、聴者に囲まれての6年はたいへん
だったでしょうとたずねると、Aさんはこういっている。

『そりゃあねえ、ありましたよ。
苦しいというか、いろいろ。
でも、なんていうか、気楽なおしゃべりができないっていうのが、
一番つらかったですね。
当たり前のおしゃべりが。
たとえば行き会った人と、
「きのうどうだった?」
「そうねえ、ホント疲れちゃった」
なんて、そんな簡単な会話もうまくできない・・・
ろう者だったらそんなこと、席が離れていても簡単に
伝わるのに』

仕事の話はなんとか筆談でこなしていても、ふと顔をあわせた
同僚と思いつくままの『なんでもない会話』ができない。
なにしろ日本語は互いに外国語なのだから。
同僚が多少の手話を覚えてくれたといっても、そこはやはり
ろう者にとってくつろいだひとことが通じにくい聴者の世界
だった。
聴者同士が交わす会話を『小耳にはさむ』ということもなかった。
そういうストレスに耐えながら仕事を終えると、ろう者は
乾いた旅人が水を求めるようにろう者の仲間を探し求め、
ろう者の世界に戻ってくるのである。」(P201~203)



就労後は、ろう学校で一生懸命に発声訓練したはずの、
しゃべることをやめてしまう。
何のための発声訓練だったのだろうか。
責任は、健聴者のほうにある。

それでは、難聴者や中途失聴者は、賢くないから
悲劇がくり返されてしまうというのだろうか。

いや、決して、そうではない。
難聴者が残存聴力と補聴器を併用することも、
有効活用の一つの方法なのだし、
決して悪くはないはずだ。
声も活用したって、別に悪くはないはずだ。

ちなみに、声を出すことを完全にやめてしまうと、
声が変になったり、出せなくなってしまったり、
出せても小さくなってしまったりするそうだ。
音声言語も、使わなくなってしまったら、
日本語も少しずつ忘れていく。

例えば、下の事例だって、そうだろう。

『漢字の読み方を忘れる - 聴覚障害者のウィークポイント』
〔2014-04-26 18:30〕


こういう損失もあるだろう。
それは、社会にとっても、損失なのだ。

だからこれは、健聴者が単にバカだから、こうなったのである。

健聴者よ、子供じゃないんだから、もうそろそろ、
いい加減に理解しなさい。

『バカがいつまでも聴覚障害者差別をしている時代に』
〔2013-04-03 18:00〕




補聴器と発声訓練が、本当にお互いのためになるのならばいい。
だが実際は、健聴者に都合がよくなるためでしか、なかったのだ。

これに対し、聴覚障害者は、精神的に苦しむ。
それでは、怒るのが当たり前なのである。
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by bunbun6610 | 2014-06-17 18:30 | 就労後の聴覚障害者問題B


ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

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