「差別」と「逆差別」の密接な関係性

ろう者は、こう言う。

「自分の行きたい講演があっても、
手話通訳がつかない。
これは差別だ」

では、逆の立場では、どうなっているか。

例えば、ろう者の講演会でも、
手話がわからない人のための
音声・文字通訳がつかないことはよくある。
その時、健聴者も同じことを言うのだ。

「音声日本語による通訳がつかないのは
差別だ」

その健聴者は怒ってしまい、講演の最中に
席を立ち、帰ってしまった。
ろう協(聴覚障害者協会)の役員会でも議題に
なったことがあったが

「音声通訳をつけたのでは手話学習に
ならないから」

という理由で、見送られた。

もし、その中に、手話がわからない聴覚障害者
もいたとしたら、その人は言わないだろうが、
心の中ではやはり

「ろう者は手話で講演を行うことや、
音声の講演では手話通訳がつくのが当たり前
でも、我々に必要な要約筆記通訳はつけない
ではないか」

となる。

そうなることが初めからわかっているから、
手話がわからない難聴者や中途失聴者は、
誰も聴覚障害者協会には入らないのである。

そんなことも理解せず

「難聴者はプライドが高いから」

などと、自分勝手な推測をして対立を
深める人もいる。

これはよく、ろう者と難聴者、中途失聴者との
間で、火種にもなる問題だ。
両者の団体が聴覚障害者団体として、
一つにならない、いや、なってはいけないのは、
このためだ。


ろう者に、この問題を聞いてみたことがある。

「え? どうして?
ろう者だって、手話通訳がなければ参加しないか、
もし出なければならない時は我慢しているよ。
健聴者、難聴者だって、そうしなければ
いけないではないか」

これが当たり前だと言わんばかりの主張しか、
出てこない。
一般会員や役員までもがこんな認識では、
聴覚障害者問題なんて、彼らに解決できっこない。

手話サークルの交流会で、この問題が噴出した
ことがあった。

その健聴者もやはり

「ろう者には手話通訳がつくのに、手話が
わからない健聴者に、情報保障がつかない
のはどうして?」

と質問した。

ろう者側の答えは同じだ。
健聴者は納得できない、と反論した。

その時、ろう者と手話通訳者がこの議論の
制止に入ったので、統一結論は出なかった。
この世界では、ろう者に言ってはいけない
ことのようになっているからだ。

しかし、本当ならば、これは決して、
曖昧にしてはいけない問題である。
手話通訳者が考えているのは、おそらく、
ろう者が問題解決へ受け入れる時期が
来るまで、この問題はお預けにしておく、
ということではないだろうか。

だが、その曖昧さに納得できない多くの
健聴者は、当然に会を辞めていく。


ある手話通訳者は、こう言っていた。

「難聴者は優しすぎるよなぁ。
ろう者だったら、手話通訳の不満とか、
ストレートに出してくるよ。
我々が手話通訳をしている最中に「下手」だとか、
ボロクソに言っているんだから」

ろう者は何でも、ハッキリと物事を言うタイプの
人が多い。
というか、本当はそんな人ばかりではないのだが、
ろう者の団体では、そういう人が目立っている。


手話についてとなると、昔から『手話論争』という
問題がある。

中途失聴者や難聴者が使う手話についても、
批判が集中している。
ろう者の使う手話とは違う、日本語対応手話だ
という理由からだが、それだけではなく、
これには実は、人種差別問題のような面がある。

それだけではなく、もしかすると

「日本語対応手話が広まっていることで、
我々の日本手話が将来、消滅してしまうのでは
ないだろうか?」

といった危機感を持ってしまっているのかも
しれない。

実際にろう者が出てくるテレビなどでも、
よく見てみると、今の若いろう者のほとんどが、
日本語対応手話中心の手話を使っている、
ということは間違いない。

そういう事象は、ろう者が通う筑波大学附属
聾学校
(現在の「筑波大学附属聴覚特別支援学校」)
の教師も、証言している。


(これは、何も日本手話を批判したり否定する
つもりで、書いているのではない。

「統一手話(標準手話)だけにしよう」

というほうが暴論だし、日本手話は、これからも
残るはずだろうと私は思っている)


現在は日本手話と日本語対応手話を明確に
区別して使っている場合はあっても、
手話の現状というのは、混在していることは
間違いない。
つまり、日本語対応手話というのも、
間違いなく存在するのだ。

ただ

「日本語対応手話はろう者の母語とは違う」

という主張で、日本語対応手話、そして、
それを主に使う聴覚障害者(主に難聴者や
中途失聴者)まで非難しているに過ぎない。

ある有名なろう者は、手話講演会で

「日本語対応手話を『手話』と呼ぶな。
手指日本語と呼べ」

と言っていた。
おそらく手話ソング&ダンス批判も、
ここに根本問題があるのだろう。

また、別のある有名なろう者は

「中途失聴者や難聴者、また、親の教育方針
などの理由で、ろう学校へ行っていないろう者も、
ろう者社会のメンバーには入れない」

と言ったらしい。
まるでイスラエルみたいな選民思想ではないか。
どうも、排他的な思想のように思える。


昔、ろう者にこう言われたことがある。

「あなたは誰? ろう者? 聴者?
ああ、そうか、曖昧民族だな」

「曖昧民族」・・・ろう者が、難聴者や中途失聴者
に対して、使う言葉。蔑称。

そう捨て台詞のように言っただけで、もう二度と
私を相手にしなかった。

昔から、ろう者にはなぜか、こういう人が多い。
皆の目の前で、こう言われたのだ。
いきなり、よくこんな無礼なことが言えるものだ。


ちなみに、ほとんどのろう者が初対面の人とする、
3つの質問がある。
この話も、昔から有名だ。

 ①「あなたろう者? それとも、聴者?」

 ②「あなたはどこのろう学校を出たの?」

 ③「あなたは結婚してる? まだ?」

ろう者に理由を聞くと、この3つの質問から
始めれば、簡単に話の糸口が広がっていく
からだという。
別に、悪意などないわけだ。
ろう文化の一つ、ろう者の会話パターンと
言っていい。

ただ、難聴者や中途失聴者の心に引っかかる
ことは、①の質問で「難聴者です」と答えると、
誰もが無視してしまうということだ。
なぜだか「難聴者お断り」みたいな雰囲気が
感じられるのだ。

「中途失聴者です」

と言うと、ろう者仲間で相談して

「中途失聴者って、何? ああ、難聴者か・・・」

と言う。
確かに、仲間の言うことを信用するのが
当たり前だろうけど、正直に感想を言うと
「これはひどいな」と感じた。

仲間には当然

「○○さんは難聴だって。
ろう者じゃないよ」

と言い広めてしまう。
そうして、ろう者の人たちは皆、無視する
ようになる。
彼らには、本当に他者を理解する気持ちが
あるのだろうか?

全ては、彼らが過去に受けてきた差別の歴史、
それへの怒りが反逆の魂となって、
選民思想へとエスカレートしていったのであろう。
中東問題のイスラエル人対パレスチナ人
みたいに。

もちろん、そんな人ばかりではない。
しかし、そういう団体を嫌い、ろう協入らない
ろう者も結構いる。
一度懲りた人は、二度と入らない聴覚障害者
も少なくはない。
団体の会員数減少の原因は、もう人口減少だとか、
聴覚障害者の多様化だけではないのだ。
会員や役員の、こうした旧態依然にこそ、
原因がある。

「聴覚障害者協会」という、聴覚障害者の
代表的な団体のように名乗ってはいるが、
実態は「ろう者の団体」なのだから、
やっていることがかなり矛盾している。
言葉を慎まずに言えば、詐欺に等しい。

下部団体の名称をこのように変えたのは、
団体としても、また社会的にも都合のいいように
したいからなのだろう。
役員として務まる、優秀な人材を確保したい
からとか、法人化にも有利だとかいう、
自分たちに都合のいい理由で、
『聴覚障害者協会』と名乗っているに過ぎない。


差別がアリならば、逆差別だってアリだ――
それが彼らの見方かもしれない。

私ならば、どっちもアリじゃないだろ――
と言いたいが、理想論なんか言ったところで、
無意味だ。

差別のある社会の中には、結局、逆差別だって
生まれる。
神と悪魔がいるように。

もう、煮え切らない我慢なんかバカバカしくなって、
やっていられない。

バカがいつまでも聴覚障害者差別をしている
時代に、真面目に生きることほど、
バカバカしくなる人生はない。
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by bunbun6610 | 2014-07-16 18:30 | 聴覚障害


ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

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