VIP障害者 - 障害を隠す障害者

VIP障害者 - 障害を隠す障害者

「障害を隠しておく」とまではいわなくとも、
障害のことを具体的に言わないで、ただ単に
「障害者です」とだけ伝えておくほうが、
周りの健常者も「腫れ物に触る」ように扱ってくれて、
かえって都合が良い場合もある。
障害をあえて、曖昧にしておくという手段の特異的事例である。


ここで述べる「障害を隠す障害者」とは、クローズ(※1)
で一般就労をしている障害者のことではない。
障害者雇用枠で働いている、Aさん(※2)のことである。


(※1)
『難聴者の会社面接対策(3) 「オープン」と「クローズ」』
〔2011-07-07 20:55〕




(※2)
『職場内障害者授産施設 (3)本当にうつ病障害者? 病前性格のワガママ障害者?』
〔2013-09-04 18:30〕




ある日、部長にF上司のことで打ち明けた。
F上司の業務指示には、私にとって、
負担が重すぎることもあるばかりか、
不合理に思えたからだ。

F上司はよく、私に

「Aさんが●●の仕事をやるというので、
あなたは▲▲をやって」

というふうに指示を出してくる。


『聴覚障害者差別の原因は、健聴者の人格的欠陥にある』
〔2014-03-31 19:00〕



『性悪者は直らない - 職場での聴覚障害者差別問題』
〔2014-04-09 18:30〕





上の記事で述べたように、F上司はAさんの仕事をまず決めてから、
それ以外の仕事を私に与えられるのが常となっていたからだ。
だからこの問題は、F上司に責任がある。

また、Aさんも私によく

「●●の仕事はもう、やりたくない」

と愚痴をこぼすことがあった。

そのような状況を、部長に説明し

「改善できるところはしてほしい」

と頼んでみた。
それに対する部長の回答は、単純明快なものだった。


部長;「不満を言っているのか?
仕事の不満なんて、誰にだってあるよ。
それに、上司や同僚の悪口は、私は聞かないからね。
改善策ならば、聞くが」

私;「そんなつもりで言ったのではありません。
F上司の指示は合理的でなく、過度の負担になって
いるからです。
それが原因で、中止せざるをえなくなった業務も
たくさんありました。
F上司が、会社としての目標を達成できるように、
仕事の段取りを考えて、指示を出すべきなのでは
ないでしょうか」

部長;「でも、それがあなたの仕事ですよ。
できないならばできるようにするのが、
あなたの責任ですよ」

私;「仕事にも時間の都合がありますから、
今のやり方では、できる仕事もできなくなってしまうのです」

部長;「・・・。(少し考えてから)
ここだけの話だよ。
実はAさんは以前、大変な病気をしたことがある人だ。
今はそれで・・・人工肛門なんだ」

私;「えっ? そうなんですか?!
人工肛門って、どんな障害があるのですか?」

部長;「例えば、トイレの問題もある。
タクシーや電車、バスに乗って、長時間我慢することができない。
万一、渋滞に巻き込まれてしまったら、アウトだ」

私;「なるほど。(それで、正社員の仕事は無理になったわけだ)」

部長;「だから、Aさんには、無理はさせられない。
他の人は誰も知らないよ。
だから、このことは今後も、誰にも秘密だからね」

私;「でも、障害のことを知らなかったら、Aさんのことを
誤解する人だって、いるのではないでしょうか?
なぜ言わないのですか?」

部長;「言いたくないんだよ・・・Aさんは。
だから、黙っていてくれ」

私;「・・・わかりました。
誰にだって、言いたくないことって、ありますよね」


中途障害者には、このような人はよくいる。
例えば、中途難聴者にも、結構多いらしい。
私が以前、長瀬修氏(※3)の講演会で質疑応答のとき、ある女性が


(※3)
http://www.rease.e.u-tokyo.ac.jp/read/jp/about/member/nagase.html




「夫は難聴障害を持っています。
でも『障害(者)』という言葉になじめなくて、黙っています。
『障害(者)』という言葉ではなく、他の言葉にならないでしょうか」

という質問をされていた。
Aさんも、同じだろう。

健常者は、障害者を長い間、特別扱い(=差別)してきた。
それは合理的配慮ではなく、間接差別の一つだったのだ。
長いこと健常者として生きてきた人には、
ある日突然、障害者の側になってしまったからといって、
素直に受け入れられるとは限らない。

「Aさんの本当の障害名を誰も知らない」

ということは

「F上司も知らない」

ということになる。
だからF上司も、もういいかげんにうんざりしている
のだと思う。
AさんはAさんで、恥ずかしくて言えないままなのだろう。(※4)


(※4)〔関連記事〕
『障害イコール恥という感覚』
〔2011-10-22 19:27〕



そんな平行線が続いてしまっているために、
職場の人間関係にも悪影響を及ぼしてしまっているのだろう。

だがそれでは、Aさんは周囲から適切な理解と配慮が得られない。
そして、なぜAさんが“ワガママみたいなこと”を言うのか、
誰も理解できないだろう。
飲み会でもAさんとは話さない人も多いから、Aさんもまた、
職場で孤立しているのだ。
それでも、Aさんは自分の障害名を、他人に言いたくないのだという。


この相談で、Aさんが人工肛門(オストメイト)ということ
はわかった。
けれども、実際には、部長の説明とはなぜか、
食い違うことも多い。

第一に、Aさんは通常の人工肛門の人とは逆に、
長旅になる出張を好む。
部長が「トイレの問題がある」と言うのに、なぜか、
トイレも何もないようなところへ行きたがるのだ。

私が入社した当時、見習いでAさんと一緒に行動していた
ときもあったが、Aさんはトイレが頻繁、ということは
別になかったし、移動に困る、というふうでもなかった。

障害のことを知らなくても(教えてくれなくても)

「Aさんも障害者だと聞いていますが、
何か困ることはあるのですか?」

と聞いたとき

「何もないよ。
普通の人と同じに働けるよ」

と答えていた。

「人工透析の人なら知っていますが、そのように飲食
の制限とかはあるのですか?」

と聞いたときも

「普通の人と同じだよ。
ビールも飲む」

と答えていた。
だから

「Aさんの障害は、軽いんだな」

と、私はずっと思っていた。

実際のAさんの望む仕事内容というのは、
部長の言うような、障害への配慮とは全然違っている。
むしろ、精神的な事情(うつ病)から、
仕事内容はF上司に配慮してもらっている、
という感じなのだ。

というか、うつ病なのかどうかは、かなり疑問で、
やはり仕事の好みにうるさい人、という感じがするのだ。
それと、プライドの高さがあると思う。

特に、事務的な仕事、内勤は大嫌いのようだ。
仕事のやり方を、他人に指示されるのが嫌いなタイプで、
チームワークが大の苦手、マイペースである。
だから、時間制限のつく仕事は任せられない。

障害者はよく「協調性がない」などと言われたりするが、
Aさんはまさに、その典型だと言える。

だからなのだろう。
F上司は、それへの配慮を、部長からも言われているに違いない。
それで、職場内でも、こういうヘンな関係になって
しまっているというわけなのだろう。

毎朝、事務所内は皆、忙しくて大変だが、
Aさんだけは自宅から持ってきた新聞を、
他人の机の上で広げて読んでいるという、悠然さ。

もはや普通の感覚を持つ人ではない、と思う。
そういった“特別な障害者”って、私の会社には他にもいるし、
他の会社にもいるだろう。

そういう障害者の就業場所を「職場内障害者授産施設」という。
これは「配慮」でも「差別」でもなく、単なる「甘え」を助長
させているだけだろう。
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by bunbun6610 | 2014-04-17 18:30 | E.大手カー・ディーラー
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ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610
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