障害者雇用で見える、デキる上司と、デキない上司の違い

副題;『聴覚障害者雇用で見える、最優秀賞を獲得している上司と、
ダメ上司との違い』


両者には、聴覚障害者とのコミュニケーションでも、
大きな差がある。


健聴者がすぐにでも思い浮かべる、聴覚障害者との
コミュニケーション方法というと、やっぱり筆談だと思う。

そこで、職場での筆談のポイントとは何か、聴覚障害者の
立場で考えてみた。


まず、何と言っても、読める字で書くという事。
これは絶対の基本だ。

にもかかわらず、F上司の字は汚くて小さくて読めない。

Sさんの場合は、大きな文字で、短く簡単に書いてくれる。

この差は、読む側からすると、とても大きいのだ。


次に、文章力の問題である。
文章力と言っても、難しい技術ではない。
「伝える力」と思えばよい。
必ず、目的(目標)、結果、結論から書く。
ストレートなほうが、わかりやすいからだ。

聴覚障害者(ろう者)から

「起承転結にするような文章は苦手」

という話を聞いたことがある。
前置き的な話が多いのも、いいとは思えない。

用件を伝えるときは、たとえば

「××を○○部の■■さんのところへ持って行って。
▲▲時までに。
■■さんの席は、この座席表を渡すから。」

でよい。
健聴者はよく、話し言葉そのまんまに一所懸命
書こうとして

「こちらの書類を、○○部へ持って行って、
一番前から3番目の席に■■さんという方がいますので、
その方に渡して下さい。
よろしくお願いします。」

などと書いたりする。
こんなのは、全部書かなくたって、わかることだ。
それなのに、メール文のように丁寧に書いている
健聴者が結構多いのだ。

そこまで書かなくとも、簡単でいいから、
「要約筆記」(※)でも勉強してみたらどうだろうか。


(※)『要約筆記とは何ですか?』



「要約筆記サークル」もあるので、ちょっとしたコツを
教えてくれるかもしれない。
コツが分かるだけでも、余計な言葉がグッと減り、
健聴者は書きやすくなり、聴覚障害者も読みやすくなる
こと間違いない。
コミュニケーションも仕事も当然、はかどってくるはずだ。

一方、手話の場合は、覚える前に挫折してしまう場合が多い。
手話を覚えるには相当の才能と、長年の努力が必要だ。
だから手話を勉強しても、職場の聴覚障害者にも即役立つ、
というわけではない。
勉強してもすぐ挫折してしまっては、意味がない。
聴覚障害者だって、待っている甲斐がない、
というものだ。
結局、職場での聴覚障害者支援法としては、
あまり現実的ではないと思う。

職場で社内手話講習会を開いたところがあるが、
はじめは30人以上の人が集まった。
ところが、すぐに受講者が激減してしまい、
最終講義には数人しか出席していなかった。
まして、講習会が終わると、忘れていってしまう人が
95パーセント以上だった、と思う。
それほど、健聴者が手話を獲得するということは
困難なのだ。


話を筆談に戻すことにする。
くどくなるが、筆談はなるべく短く書くことだ。
話し言葉のように長く書いては消す、ということをくり返して
しまうと、読み手のほうも、前の文を意外と忘れてゆくのである。
それも注意してほしいと思う。


ところで、聴覚障害者に任せられる仕事というと、
実際は、私の場合で言えば作業系の仕事が圧倒的に多い。
こういった仕事の場合、動きが複雑になるためか、
筆談での説明に苦慮してしまう健聴者も少なくない。

そこで、F上司はよく、何度もくり返して言葉で言い、
やり方を監視しては後から「違う!」なんて言ってくる。
仕事とはいえ、こんな人に頼まれると、いい気がしないものだ。

ところが、Sさんのやり方は違う。
作業系の仕事の説明では、筆談ボードはなるべく使わず、
まず手本を一回、自分でやって見せてくれる。

その次に

「今の通りに、やってみて」

というジェスチャー(指差し=「やれ」という指示)をする。

それで私も、その通りにやる。

それをチェックしたSさんは満足そうに「OK」とサインを
送り返すだけ。
たったこれだけで、作業系仕事の説明は終わる。
ものの数十秒間なのだ。

実は、Sさんの営業成績は「最優秀」だ。
顧客に対しても、私に対するのと同じ、
その柔軟性ある対人姿勢が顕れているのだろう。


ところが、F上司は違う。
何度もやり直したりする場合もある。
だからお互いに、かなり疲れるものだ。


これは、胃のバリウム検査で、よくレントゲン技師との
コミュニケーションでも、被験者の誘導が下手な技師と
上手な技師がいるのと同じことで、その差は雲泥の差だ。
意外なことに、男性のほうが下手な人が多い。
男性技師が多い世界だというのに、
これは情けない現状ではないか。

女性は声が小さいし、無理だと初めからわかっているから、
すぐ方法を変えるのだ。
その点で、すでに賢いと思う。

ところが男性技師の場合は、マイク使用でも大声で怒鳴ったり、
強引に被験者の身体を押して、無理に動かそうとしたりする。
大変なのはわかるが、こちらも精神的・肉体的にも苦痛を
受けているということがわからない男性技師がいる。

女性技師の場合は、どうだったかというと、身振りを使って
伝えていた。

そういえば、地域の手話講習会に通ってみるという人は、
女性が圧倒的に多い。
コミュニケーションに深く興味を持っている人が多いのだ。

反対に男性の受講生は少ない。
仕事が忙しい、ということもあるだろう。
だが、それだけではなくて、例えば、あの窮屈な
男性社会=封建社会=タテ関係社会にいるため、
コミュニケーションにも柔軟性が欠けているのでは
ないだろうか。

女性のほうが、赤ん坊からお年寄りまで、幅広い人間の
世話をしたりしている。
その経験豊富な点でも、いろいろな人に合わせられる
コミュニケーション能力が、自然に備わっているのでは
ないだろうか。

サインにも、ベビー・サインやシニア・サインなど、手話に似た、
幅広いものがあるそうだ。
それらは、女性も思わず使っていたりする。

ところが、男性は敬語などの知識で生きている会社人間だから、
そういうのは下手なのである。

インターネットで

「会社の電話番は、どうして女性なのですか?」

というふうな質問に対し、ある男性が

「女性のほうが、物柔らかな応対ができていい」

という回答をしていたのを見たことがある。
確かに、そうなのかもしれない。


Sさんは男性だが、そのような柔軟性を持っているから、
聴覚障害者とのコミュニケーションも、全く苦にしていない。
自然なのである。

対するF上司の場合は、堅苦しくなってしまうのである。


職場での聴覚障害者とのコミュニケーション能力を見れば、
その社員の接客の実力がわかる、と言っても、
過言ではないかもしれない。
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by bunbun6610 | 2014-04-11 18:30 | 就労後の聴覚障害者問題E


ある聴覚障害者から見た世界


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