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ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

感音性難聴障害と語音明瞭度検査(聴覚検査)

「疑問に思った体験は、実は聴覚障害者の私にもあった。

パティシェの仕事をしていた時、よく「冷蔵庫」とか
「冷凍庫」という、よく似た言葉が、先輩の口から
飛び出してくる。
この2つの言葉は非常によく似ていて、感音性難聴の
私は、聞き分けることが難しかった。
それに悩んでいた私は、ある日、先輩に相談したのだ。

私;「先輩が「これは冷蔵庫に入れて」とか、
「冷凍庫に入れて」とか指示しますが、
僕はこの2つの言葉を正確に聞き分けることができません。
だから、冷蔵庫なら「あっち」(指差しで)とか、
「冷凍庫」なら「こっち」(指差しで)とか、
ジェスチャーを交えて指示してもらえると、
コミュニケーションが確実になる、と思うのですが・・・」

先輩;「何で、そんなことしなくちゃならないの?
私たちは、あなたのために、聞き取れなかったら
何度も何度も、繰り返し言うから」

これには内心、呆れてしまった。
私の障害について、先輩は正しく理解してくれなかったからだ。」

『バリバラ団の「がんばらなくていい!」に賛否両論』
〔2014-02-15 18:30〕
 より。)




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感音性難聴のことは、当ブログの「聴覚障害」や
「難聴・中途失聴」というカテゴリー記事で
何度も述べてきた。

今回はその具体的な話しを、もっと試みてみようと思う。

身体障害者手帳を交付してもらうときなどに、
聴覚障害を調べる検査方法として、「標準純音聴力検査」
と「語音明瞭度検査」がある。(※)


(※)当ブログ

『聴覚情報処理障害と聴覚障害』
〔2014-01-27 18:30〕


参照。



健聴者でも、学校や会社の健康診断で受けている聴力
レベルを調べる検査があると思うが、あれはごく簡単な、
純音聴力検査のほうだけである。
(あの簡易方法では、身体障害者認定の検査はできない)

正確な聴力検査ではないし、そのなかには、40デシベル
までしか、測定できない検査機械を使用している場合もある。
その場合、軽度難聴ならば、これには引っかからない
(「異常あり」の診断にならない)人もいるかもしれない。

一方、「語音明瞭度検査」という感音性難聴の程度を調べる
検査は、健康診断ではしないのだ。
「標準純音聴力検査」すら、していないところも多い。

別の例だが、警察でさえ、自動車免許の試験や更新手続き
のときも、聴覚のほうは何も検査しないだろう。
普通の会話のやりとりができれば問題ない、と思われている
からだ。
実際私も、自動車を運転できる条件として「補聴器」が付記
されていているだけである。

こんな状況なのだから、こういう聴覚障害(感音性難聴障害)
があることも知らない健聴者や、障害者手帳すらない
軽度難聴者がほとんどだと思う。


語音明瞭度検査は、今では下に紹介する情報のような
検査方法になっているようだ。


『◆ 語音明瞭度検査の実際。』
〔2010-11-11 19:41〕

 


しかし、昔は次のような検査方法も存在した。
勿論、今の新しい検査方法が正しく、精確な検査結果が
得られる、と私も思う。

とけい    てれび    ひこうき    つくえ    ばなな
えんぴつ   りんご    ぴあの    さかな    うさぎ
はさみ    めがね    ねずみ    ぼうし    らいおん
すずめ    からす    でんわ    ぽすと    じどうしゃ


このような短い単語を、健聴者が私の目の前で、
ハッキリと大きく口を開けて発音し、
被験者がどれぐらい聞き取れたかをデータ化する方法
だったのである。

このようなサンプル表は、語順を変えたものを何枚か使い、
そして何度も繰り返して、データを取る。

すると、感音性難聴障害の人の場合、ある特徴的な
事実がわかるのである。

(似たような単語、そのなかでも同じ母音を持つ言葉が
混じっていると、聞き間違えている場合がある、ということ
がわかった。)

これで感音性難聴の程度を判定していた、というわけだ。

ただ感音性難聴がある、というだけでなく、この度合いが、
障害者手帳の等級にも影響するらしい。


ただし、聴覚障害者にはもう誰でも分かっていると思うが、
この検査方法には数々の問題点があった。

したがって、現在では使われていない、と思われる。

問題点というのは、ここでは簡単に述べるだけにするが、
次のようなことである。

聴覚障害者には、口型(口形)を読める(「読唇」とか「読話」
とか言われている)人もいて、このような原始的試験方法では、
容易に答えを推測できてしまう。
要するに、聴覚障害者には答えがバレバレだったのだ。

それで現在では、五十音順の「あ」とか「い」とかだけで、
推測不可能な問題にし、さらに相手の顔が全く見えない
方法で、ヘッドフォンからの音のみで検査する方法へ
変わった。

発声者も、以前は被験者の目の前で、検査実施者の
生の声でしていたので、聞き取れたり聞き取れなかったり
するわけで、データに誤差が出やすくなっていた。

今では録音テープのようなので何度やっても、同じようにしか
聞こえない。
実際に見たわけではないのだが、録音テープのような
機械的な音で、アクセントもわからないようにしか、
聞こえない。
健聴者が昔、幼稚園などで「あいうえお」と練習していたのと、
この検査音声とは全く違う感じがする。
これは、「標準純音聴力検査」をして、次に被験者が聞こえる
音量(dB)で試していると思われる。


(ただし、これも私は疑問に思っている。
専門の“優秀な”補聴器店だと、補聴器は聴覚障害者に
合わせて調整している。
専門者がいる補聴器店の場合だ。
非常にきめ細かな調整をしているため、語音明瞭度検査の
時なんかとは違い、驚くほど聞き取れるようになる。
つまり、その音質調整によっては、聞き取りやすい人も、
そうでない人もいる、ということになる。
それだけ多様な感音性難聴障害がある、ということだろう。
昔は、そうしたニーズに対応できないメーカーや、
補聴器店が多かったようだが。)


よって、今の検査方法のほうが、聴覚障害者は推測不可能、
そして学習能力も生かせず、感音性難聴を調べる上では、
精度が高いのである。

実際に私の場合も、昔と今の検査方法とでは、結果が大きく
違っていたようである。

このようなことから、語音明瞭度検査は、感音性難聴の有無
だけでなく、その程度も調べるために重要だということが理解
できる。

ところが、健聴者はこうしたことを全く知らない。

「身体障害者認定医」の耳鼻科医師でさえ、この検査を
きちんとやらない人もいるのである。
健聴者は、それほど、いい加減だということができる。

だから健聴者は

「聞こえるなら、どうして聞き取れないの?」

「本当は、聞こえてるんでしょ?」

などという無知・無理解なことを、平気で言えるのだ。

これは、社会に、この障害のことを理解されない理由の
一つであろう。
健聴者がこんなふうだから、「聾(ろう)」のほうが、
まだ理解が得られやすいほうなのだ。

ちなみに、感音性難聴者に、実際の症状を聞いて
みたところ、人により実にさまざまで、次のような例
がある。


「音が割れるように聞こえる」

「音がこもっているようにきこえる」

「高い音だと突き刺さってくるような感じで、
刺激に耐えられない」

など、人により、実にいろいろである。
あるいは、耳鳴りと、感音性難聴が複合する人もいる。


私は昔

「壊れたラジオを聴いているように聞こえる」

と周囲に説明していたのを憶えている。

また、機械から出る会話音、特に電話やテレビなど
の音声だと、よけいに歪みが大きくなってしまうような
気がする。
当然、テレビは観ても、字幕付きのテレビ番組しか
見ない。

こういう性質の聴覚障害だから、マイクからヘッドフォン
を通して聴かせる(多分だが、そんな気がする)
語音明瞭度なんかしたって、難しいに決まっているだろう。

現在の語音明瞭度検査に欠点があるとすれば、
機械の性能にもよるだろうし、音質を変えられない
ことがあるだろう。
結局、その方法もそこを基準にして、被験者を
聞き取りやすい人と、そうでない人とに分けてしまう、
ということだ。
したがって、あくまでも医学的判定の域を出ず、
障害の社会モデルにはできないのだろう。

結局、感音性聴覚障害を完璧に客観的に調べる
方法なんて、今のところないのではないだろうか。



〔参考記事〕

『「タマゴ」? 「タバコ」? (語音明瞭度について)』
〔2011-07-24 00:29〕



単に、お年寄りが「聞き取りにくくなった」と言う場合とは、
どうも違うようだ。
そして、補聴器だけでは完全解決できない理由も、ここにある。








【追記】(2014年11月3日)

今頃になって、だんだんとよく思い出してきたのだが、
これは重要なことかもしれないので、一応追記しておく。


上に書いた記事(2014-03-15 18:30)にある
「昔の検査方法」では、被験者に補聴器を装用
させて、語音明瞭度検査をしていた。


ところが、現在ある最新式の機器を使った語音明瞭度
検査では、被験者に補聴器を装用させないままでの
検査だった。

健聴者にはわからないと思うが、この違いは非常に
大きい。
しかも、少なくとも2点はある。


(1)昔は、補聴器の「能力」や、被験者への「慣れ」
(フイッティング)などが考慮されていなかったのでは
ないか。
特に、昔の補聴器と、今の補聴器とでは、性能が全然違う。
メーカーや、調整によっても、聴こえの具合はかなり変わる。
それだけの誤差がある補聴器を使って語音明瞭度検査を
しても、意味があったのだろうか。
少なくとも、検査結果の精度に疑問、いやメチャクチャな
検査方法であることは間違いない。
これが、昔の耳鼻科医学の問題点であったことも間違いない
と思う。



(2)補聴器を使わない場合と、使った場合とでは、
語音明瞭度検査の結果は、必ず変わる。
言うまでもないことだ。
変わるのが当たり前だ。

実際、昔は試したこともない、新しい補聴器を装用
させられ、多少の調整をしてみてから検査していた。
音が大きくなったのだから、幾らか良くなったのは
当たり前だった。
そうすると、語音明瞭度は自然と高くなる。
私の場合も、その数値で障害の認定が行われた
ようであった。
おかしいと思わないだろうか。

調整を誤れば、逆に低くなってしまうこともありうる。
しかし、調整士には本当のことはわからないので、
何となくやってみながら調整する人もいるだろう。
失敗でも、万全でなくとも、それに気づかないままの
調整士もいたに違いない。
だから、いい調整士に巡り会えることが、補聴器選び
には大切なのだ。

難聴者なら誰でも知っているはずで、補聴器は、
その選択と調整が、極めて大切だ。
だから専門店で、しかも腕のいい調整士にサポート
してもらう。
「腕のいい」と言ったが、この言葉の正確な意味は
「ユーザーの声をきちんと聞きながら調整してくれる人」
と言ったほうがいいかもしれない。
忙しがって、面倒がる調整士は良くない。

そのサポート次第で、難聴者がその補聴器を装用した
ときの語音明瞭度は当然、変わる。
メーカーだけで決まる問題ではない。

だから、補聴器を装用した状態で語音明瞭度を検査し、
障害の認定をするのは疑問なのである。
当時は、今のような最新式の機器がなかったから
なのであろうが・・・。

障害の認定の時は、補聴器は装用しないで検査をする。
その結果が悪いというだけで、補聴器は合うとか、
合わないとか判定する行為は、参考にはなるとしても、
ちょっと早計ではないだろうか。

「昔の補聴器よりも、今の補聴器の方が性能がいい」

と、誰もが認めている時代なのだから。
それはつまり、補聴器の性能がよくなっている今では

「試してみる価値はある」

ということだ。

私も昔は、補聴器の聴こえにかなり不満を持っていた。
音は聴こえても、言葉を聞き取ることには、かなりの
限界があった。
つまり、実用の段階になると、語音明瞭度がそれほど
上がらなかった。

でも今の補聴器では、十分とはいかなくても、助かる場合
もあることは事実なのだ。

たとえ語音明瞭度検査を完璧にパスできなくても、
頭脳が補ってくれ、言葉の推測力を向上させてくれることは


『『「耳の不調」が脳までダメにする』(中川雅文/著)』
〔2014-07-29 18:30〕



『コミュニケーション能力』


で実証されている。

補聴器には「音量」だけでなく「明瞭感」という
ものもある。
音量は装用者がいつでも自由に調整できるが、
明瞭感は調整士の調整にかかっている。
音量と明瞭感を上げることで、聴き取りやすく
なるようにしている。

健聴者がよく誤解していることを改めてもらうために
言うが、補聴器の音量を上げるだけでは、感音性難聴
障害者の聴こえを向上させるには限界がある。
さらに限界を上げるには、やはり「明瞭感」が重要
なのである。
しかし、これは高度な技術だったようである。

それと、人間の脳による、言葉の推測力が生かされる
ことによって、あの『オウム返しのマジック』が使える
ようになる。
そして、聴こえに不自由があっても、聴覚障害者が
考え出した特殊なコミュニケーション方法で、
コミュニケーションも可能になるのだ。


語音明瞭度は、聴覚障害の認定には重要である。
しかし、それをフォローする補聴器が著しく進歩して
きた以上、語音明瞭度の数値だけを見て、単純に
「補聴器で聴こえる」とか「いや難しいだろう」と
断じることはできないのではないか。

人工内耳と同様に、リハビリ訓練や、個々の聴覚障害者
のオリジナルの工夫も含めた、様々な努力が、聴覚障害
の克服に結びつくのではないか、と思う。
勿論、周囲の健聴者の理解と協力も大切である。
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by bunbun6610 | 2014-03-15 18:30 | 聴覚障害