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蒼穹 -そうきゅう-

聴覚障害者が障害者雇用に応募できなかった例 - T社の場合

ハローワーク専門援助第二部門(障害者求人を
取り扱う部門)での話です。
データ・チェックの仕事内容で、障害者を募集して
いる企業があった。
その求人票を見て、目を引いたのは、

「採否結果の理由については、お問い合わせ
いただいても、お答えできません」

というふうに書いてあった点だ。
どこもそうなのだが、わざわざ、このようなことが
書いてある求人票を見たのは、後にも先にも、
この会社だけだった。
こうした問い合わせが少なくなく、しかしそれでも
回答したくない、ということなのだろう。
ハローワークでも

「この会社は聴覚障害者の採用率が低い」

ことで有名だ。


聴覚障害者といっても、たとえば中途失聴者や
中途難聴者のなかには、文章力に優れ、
優秀な人もいる。
しかも、聴覚障害者は、目のいい人が多いので、
データ・チェックに向いている人もいるはずだ。

「そういう人なら採用されてもおかしくはないはずだ」

と思うのだが、現実はどうだろうか。


とりあえず、その会社(T社)に応募してみる
ことにしたが、どの会社であっても、第一関門と
なるのが、ハローワーク窓口が「紹介状」を
出してくれるか、ということだ。
企業へ出す応募の必須書類が、次の4点となる
からである。


①履歴書
②職務経歴書
ハローワークからの紹介状(必須)
障害者手帳のコピー(必須)


ハローワークから紹介状を出してもらうには、

 (1)ハローワークの担当者が承認することと、

 (2)さらに、会社への問い合わせで会社が
応募を承認することの、

二つの条件を同時に満たすことが必要である。


実際に、場合によっては、ハローワークの担当者
が先入観で

「あなたにはできません」

と言い渡すケースもあった。

これにどうしても納得できない場合は、
担当者を変わってもらうしかない。

さて、私がT社に応募したい旨をハローワークに
伝えた場合は、担当者も承諾してくれた。
早速、担当者もT社へ電話問い合わせをし始めた。

その時、たまたま通訳者も同行していて、
その電話のやり取りの一部を通訳してくれて
いたので、大体のところを簡潔に書くことにする。
なお、この文章では、一部は要約筆記通訳文
にせず、敬語などをきちんと使用している。
また、通訳者の通訳文のままでなく、
相手の表情から見て取れる気持ちを合成表現
して、言葉をイメージ的につくっている。
T社の言葉は電話なので、後ろのカッコ書きの
部分は、わかる範囲での、私の推測文を挿入
することにした。


ハローワーク(以下、HW);
「(何か挨拶言葉をしゃべった後に)・・・
○○様(人事部の障害者担当者)はいらっしゃい
ますか?」

T社;「○×△■☆・・・」
(○○ですか? 少々お待ちください・・・)

HW;「・・・」
(待っている時の無言状態)

T社;「○×△■☆・・・」
(はい、○○に変わりました。いつもお世話様です)

HW;「あ、どうも、・・・お世話になります。
実は、今、聴覚障害の方で
「御社の障害者採用に応募したい」という
方がいますが、応募させていただけますか?」

T社;「○×△■☆・・・」

HW;「はい、そうです・・・」

T社;「○×△■☆・・・」
(その方の耳はどのぐらい、聞こえるのでしょうか?)

HW;「こちらの方の耳の聞こえは、補聴器を
されていて、あの・・・少しは聞こえるようです」
(応募者の障害の状況に関する質問に対し、
戸惑い気味に答える)

T社;「○×△■☆・・・」
(「少しは」というと、ちょっと困りますね・・・
それでは・・・)

HW;「そうですか。わかりました・・・。
はい・・・、はい・・・。
今回は・・・。
では、失礼させていただきます」


ハローワークの担当者は電話を切ると、
次のように話し始めた。


HW;「データ・チェックだけでなく、校正をするときに、
近くのスタッフと言葉で細かなやりとり(コミュニケー
ション)をしなければならない仕事だそうです。
そこで間違いがあっては困る仕事。
だから、耳の聞こえによっては、申し込めない方
もいます」

私;「この会社には、聴覚障害者も働いている
のですか?」

HW;「ええ、います」

私;「その会社の聴覚障害者は、健聴者と音声
でコミュニケーションをして、仕事をしている
のですか?」

HW;「そうです。筆談でのやりとりだけでは、
正確に伝えきれない、という問題があるそうです」

私;「手話は使っていないのですか?」

HW;「使っていません」



全く、ショックな話ではないか!
聴覚障害者はいるけど、それでも
「ほとんど聞こえる人」でなければ、
働かせてもらえないなんて。

一口に「聴覚障害者」といっても、その程度は
さまざまだ。
聴覚障害者でも、仕事は障害の軽い聴覚障害者
ばかり採られていってしまう現実がある。
これは、T社だけではないのだから、
本当の話だと思う。(※1)


(※1)他の事例では、例えば

『面接で聴覚障害者が落ちた例 - M社の場合』
〔2013-12-16 18:00〕



『「聴覚障害者は応募できません」』
〔2012-12-10 18:00〕



参照。



ちなみに、この事例でわかったことは、補聴器をして、
うなずき障害を出せば「少しは聞こえる聴覚障害者」と
伝えてくれるので、この場は、まあ有利にはなる。
実際の面接や採用後までは、(バレるかどうかは)
運次第だけれども・・・。


「補聴器はしていません。
全く聞こえません」


(と正直に)言うだけでは、やはり就職は無理だと
いう気がする。
ハローワークに来るろう者には、よくいるが。

「音が聞こえなくても平気」

では、会社も


「危なっかしくて雇う気がしない」

のだろう。

だから、両者の騙し合いもなくならないのだろう。(※2)



(※2)

『騙し合うままの、健聴者と聴覚障害者』
〔2012-10-09 18:30〕



『2日で職場放棄してしまった、ろう者』
〔2010-01-09 18:00〕






〔参考記事〕

『企業イメージを重視 求める人材を奪い合い』
〔2012-04-12 19:21〕




『聴覚障害者の面接試験対策』
〔2012-03-07 20:38〕





『身体障害者手帳のない聴覚障害者(難聴者)は、どうやって就職するのか?』
〔2013-01-16 18:00〕



>「逆に手帳を持って、通常業務がこなせる方なら
就職活動が不利どころか有利になる場合さえある
のです」



アメリカでも「クリーミング」と呼ばれる批判が
あるように、日本も状況は同じです。
障害が軽度で、しかも仕事ができる聴覚障害者
ほど有利だと、私も感じざるをえません。



〔参考情報〕

当ブログ
『企業イメージを重視 求める人材を奪い合い』
〔2012-04-12 19:21〕

『障害者間格差=不公平社会をつくるもの』
〔2012-08-28 19:21〕




さらに、下の事例も、聴覚障害者雇用では
聴力を見て選考している様子がある、と思う。

『難聴者の会社面接対策(7) 面接で聴覚障害者が落ちた例』
〔2013-01-02 18:00〕




信じられないことだが、サーナの面接試験対策の
アドバイスにも、次のような事例がある。


『難聴者の会社面接対策(2) サーナの面接アドバイス』
〔2011-07-06 20:37〕

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by bunbun6610 | 2014-01-21 18:30 | 就労前の聴覚障害者問題A