『交響曲第一番』(佐村河内守/著) 9/11

『交響曲第一番』
(佐村河内守/著 2007年10月31日/第1刷発行 講談社/発行所)



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「私は耳鼻咽喉科を渡り歩きました。
アデホス、メチコバール、ストミンA、リンデロン錠という強力な
ステロイド剤まで試しましたが、何ら改善する傾向は見られま
せんでした。

「耳鼻科領域の中で、耳鳴りは一番解明が遅れている分野
なんですよ」

どの医師も、そう口をそろえるばかりでした。

私はある病院で、書物で知った内耳(ないじ)破壊術という手術
をしてほしいと希望しましたが、

「やっても耳鳴りが消える確率は極めて低い」

と断られました。」



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>「やっても耳鳴りが消える確率は極めて低い」


これは決して、医者が取り合おうとしないということではない、
と思います。
下の情報を見ればわかると思いますが、このような手術は、
今のところはリスクのほうも高いようです。

「内耳破壊術」というのは、私は聞いたことがないので
わかりませんが、「人工内耳」という手術があります。


〔外科的治療体験談〕
http://meniere-g2.net/iryo/i6.html


〔人工内耳とは〕
http://www.tora-ear.jp/02/



下の、人工内耳体験者のブログを読まれると、詳細がわかります。

〔難聴者の生活goo〕
http://blog.goo.ne.jp/hearingrabbit


人工内耳は中途失聴者や、ろう児の間で増えているようですが、
最近は「ハイブリッド人工内耳」というのも出てきて、難聴者も
残存聴力を生かしつつ、人工内耳も併用する、という活用法が
可能になってきたようです。



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「私の音楽が、いまここにあるのは母のおかげです。
音楽の基礎をたたきこみ、私の生きる道を照らしてくれました。
母の指導は、ときに私に音楽への憎悪さえ起こさせかねない
ほど厳しいものでしたが、そんなとき音楽を嫌いにならずに
すんだのも、それ以前に音楽の素晴らしさを徹底的に私の
身体に染みこませてくれていたからだと思うのです。

ピアノレッスンというのは甘いものではない、自分の厳しさは
常識的な範囲内であるから、やめたいなら遠慮なくいえばよい、
指導法は変わらない、と母はよくくり返していました。

そして最後に決まっていったものです。

「あなたが決めなさい」

と。
これは、母の口癖でした。

おそらく私はピアノを習い始めるはるか前から、母のピアノを
聴くという形で、音楽に対して抗(あらが)いがたい圧倒的な力
を感じ、畏怖と同時に深い敬服感のようなものを潜在意識に
刻みこんでいたのだと思います。

私に音楽と闘う喜びと力を教えてくれたのは、母でしかありえ
ません。

私は創る喜びを知る前に、聴く喜びを知っていたのでした。
母の奏(かな)でるシューマンを聴くのが大好きだったのです。

運よく私には絶対音感が完全な形で残っていたために、全聾
にもかかわらず作曲家としての生命を絶たれずにすみました。

譜面さえ見れば、どんなに複雑な楽譜でも頭の中のオーケス
トラで鳴らすことが可能です。
しかし、そのことと他者の奏でる音を実際に耳で聴くというのは、
まったく異なるものなのです。
頭で完璧に鳴らすことができても、それはあくまで私が創りだす
“理想の響き”でしかありません。

音楽を創ることにすべてを捧げてきたつもりですから、当然聴く
ことの喜びも知っているとは思っていましたが、聴くことへの
執着がこれほどまでだったとは、実際に音を喪(な)くしてみる
まで思ってもみませんでした。

世界は、無限の音で満ちあふれています。
風の音、雨の音、鳥の声といった自然の音もあれば、電車の音、
電話の呼び出し音といった人間の創りだした音もあります。
音は日々の営みの中で、世界中ありとあらゆる場所に存在して
います。

「人間の創りだす音の中で、地球上最も美しい音が音楽なのだ」

と、私自身は信じて疑いません。
耳で聴く音楽はとても素晴らしいと、心からそう思えるのです。」



====================================




>「譜面さえ見れば、どんなに複雑な楽譜でも頭の中のオーケス
トラで鳴らすことが可能です。
しかし、そのことと他者の奏でる音を実際に耳で聴くというのは、
まったく異なるものなのです。
頭で完璧に鳴らすことができても、それはあくまで私が創りだす
“理想の響き”でしかありません」



これは、私がブログで語っている「音の記憶」を持つ中途失聴者や、
難聴者の能力だと思います。
つまり、音はもうなくても、自分のイメージ力で補っているというわけだ。

しかし、それゆえ、そのような聴覚障害者には、次のような点もある。


>「聴くことへの執着がこれほどまでだったとは、
実際に音を喪(な)くしてみるまで思ってもみませんでした」



音への執着心は、何を意味するだろうか。

例えば、ろう者の手話を覚えられない難聴者がたくさんいますが、
それがその顕れなのです。
彼らは音への執着心が強すぎるゆえに、ろう文化を吸収して、
ろう者社会へ入るよりも、やはり最終的には健聴者社会への
復帰を望んでしまう。

難聴者や中途失聴者だけが通う、独特の手話講習会でも、
講師の日本語説明を補聴器で聞いて学ぶことを強く希望するし、
また補聴器で聞こえなくなった人さえも、やはり日本語説明を
書いて欲しい、と強く希望する。

それも結局のところ、彼らの内にある音声日本語への執着心が
原因だ。


>「世界は、無限の音で満ちあふれています。
風の音、雨の音、鳥の声といった自然の音もあれば、電車の音、
電話の呼び出し音といった人間の創りだした音もあります。
音は日々の営みの中で、世界中ありとあらゆる場所に存在して
います」



彼らは、この音というものを失ってもなお、その存在を決して、
生涯忘れることなどできない。
そして私も、おそらく同じなのである。
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by bunbun6610 | 2014-02-09 18:30 | 難聴・中途失聴


ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

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