聴覚障害者への情報保障がないことによる問題点

副題;『聴覚障害者の就労後問題 会社(健聴者上司)のココがおかしい』


ある日、朝礼が終わってから、珍しく通知のような
紙をもらった。
発行元は、本社のCSR室だ。

大体、月一回のペースで、朝礼の前に、会社役員の講話を、
全社員が聴くことになっていた。

実はこのとき、私も一緒に立ち聴きをしなければならない
ことになっている。
当然だが、私だけは何も聴き取れないので、聴いている
フリをしていたり、うんざりしてしまい、無反応になって
いたりと、態度は決してよくない。

通知の内容は何かというと、要するに

「役員の講話を聴くときは、次のことに留意しろ」

ということだった。


【会社役員講話を聴くときの留意点】

(1)時間通りに集まること。

(2)大きな声で、明るく挨拶すること。

(3)講話の前後に、キチンと挨拶、お礼を言う。
   ①講話開始時に「お願いします!」
   ②講話終了時に「ありがとうございました!」

(4)メモを取る。
   ①資料を配布する。
   ②筆記用具も忘れずに。


ここまで読んだなら、もう聴覚障害者の読者には、
これから私が何を書くのかも、わかっただろう。

CSR室がつくったこのルールには、情報保障も
つかない聴覚障害者には、対応が難しいものがある。

ここにも、企業は障害者雇用促進法で聴覚障害者を
雇用していながら、聴覚障害者への合理的配慮を
怠っている、という事実が露出している。

これはすなわち、企業が合理的配慮を行わないことによる、
間接差別なのである。

これでは聴覚障害者は、ようやく働くことはできるように
なったけれども、成長できずに、苦しみを持ち続ける
ことになる。
このような精神的苦痛が日々続いてしまう、ということで、
聴覚障害者が裁判を起こしたという事例も、実際にある。(※1)


(※1)詳細は、当ブログ

『三菱東京UFJ銀行の聴覚障害者差別裁判の判決(2009年4月)』
〔2012-04-03 21:26〕


参照。




私は、この通知を、どうしたらよいものかと考えた。
その結論は、以下の通りである。


(1)について
→これは、自分には問題なくできる。

(2)及び(3)について
→大きな声で挨拶はできるが、聞こえない自分は、
そのタイミングが、健聴者よりも少し遅くなる。
周りの状況を見て挨拶を言うからだ。
その様子が、役員にも丸見えである。
しかし、役員のほうは、私が聴覚障害者だという
ことは、見た目では全くわからない。
結局、周りの人に合わせてやることになる。
(やらされるだけである)

(4)について
→一番困ったのは、このことである。
講話が聞こえないのに、それをメモすることは無理だ。
よって、配られたレジュメを見てメモを取っている
フリならできる。


そして、このようなことになりますからと、
E上司に相談してみた。


私;「私は聞こえないので、メモは無理です。
メモを取っているフリをしていればいいのですか?」

E上司;「・・・」(笑いながら、黙っている)


日本中、いや、おそらく世界中、どこの会社でも、
これが当たり前になっていると思う。

だが、これとは違う会社が、私が過去に勤めたことの
ある会社で、今までに2社だけあった。

M社とQ社だ。

M社は、あの六本木ヒルズ回転ドア事故をきっかけにして、
年に2回(春、秋)、安全会議を開くようになった。(※2)



(※2)詳細は

『六本木ヒルズ回転ドア事故<10>』
〔2011-04-21 23:50〕



『六本木ヒルズ回転ドア事故<11>』
〔2011-04-22 00:26〕



参照。



全社的な行事に、外部講師を招いた講演会があったのだが、
講師には障害を持った方も何人か招いていたことがある。
その中で、聴覚障害者バリアフリーが最も、劇的に進歩した
のは福島智・東京大学教授による講演だと思う。
私も当然、この講演会の内容はきちんと知りたくて、
情報保障の必要性を会社に訴えた。

それまでは、手話通訳や、講演のテープ起こしを作成して、
講演後に聴覚障害者向けに特別に印刷し、
貸し出して読ませてもらっていたのだが、福島氏は

「講演の場でなければ、理解できないこともあるだろうから、
健聴者と一緒に参加するほうがいい」

とM社にアドバイスした。

難聴者や中途失聴者にも向いた、パソコン文字通訳による
情報保障を初めて導入した。
後に、その記録を活用し、電子社内報にも詳細に掲載する
ようになった。
こうすれば、聴覚障害者だけでなく、誰にでもそのメリット
が広がるだろう。(※3)


(※3)
例えば、健聴者でも、業務や病気で、どうしても出席できず、
その講演会を聴けなかった人もいる。
あるいは、講演会には一応出席したけれども、疲れてよく
聴けなかった人、途中から居眠りしてしまった人や、
いろいろあった。
居眠りをフォローするわけではないけれども、なかには体調
不良でも、無理して出席している場合もあると思う。



しかし、そのような合理的配慮をちゃんと行っている会社は、
まだまだ少ないだろうか。
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by bunbun6610 | 2014-01-07 18:00 | E.大手カー・ディーラー
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ある聴覚障害者から見た世界


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