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情報アクセシビリティ・フォーラム

情報アクセシビリティ・フォーラム(2013年11月22~24日 東京・秋葉原UDX)



聴覚障害者や盲ろう者などへの情報保障には、
どのような方法があるのだろうか。
その最新情報を知ることができました。

また、バリアフリー機器の紹介などを中心とした展示コーナーも
ありました。

今回で私が観たのは、情報アクセシビリティ・ワークショップで

『ここまできた手話・字幕放送対応技術』(比留間伸行氏)

というテーマでした。
NHKニュースの手話、字幕放送についての講演です。

このワークショップを観ていて、悪い点がありました。
それは、前の人の頭が動くたび、スクリーンの字幕が見えなく
なってしまうということです。

よくあることなのではないか、と思われますが
『情報アクセシビリティ・フォーラム』と題した講演で、
このようなことがあるとは非常に残念です。

前方にあるスクリーンの字幕を見ようとしましたが、前の人の
頭が邪魔になってしまい、非常に見づらかったのです。
時々、前の人が首を動かしたりします。
例えば頭が右に傾きます。
そうすると、後ろで見ている私は、視角を変えなくては、
字幕が見えなくなってしまいます。
もし、前の人が、今度は左を向けば、そのときもまた、私は視角
を変えなくてはなりません。

それに、首に持病がある私は、そんなに長時間、同じ姿勢で我慢
して観ることはできません。
前の人もそうだと思います。

音声で聞いている人は、後ろの聴覚障害者のことなど全く気にせず、
首をちょくちょく動かしているかもしれません。
そうしていても、別に周りの人に迷惑になるわけではないでしょう。
でも、音が聞こえない聴覚障害者は、視覚情報だけが頼りなのです。
前の人に、やめろとは言えません。
視界があまりに狭い条件だと、観づらくなってしまいます。

私は以前にも、こうした経験があって、そのときは後ろのろう者から

「ちょっとあんた、頭を動かさないでくれるか?」

と言われたことがあります。(※)


(※)(それは、全日本聾唖連盟を中心とした聴覚障害者団体
主催の『運転免許フォーラム』のときでした。
パソコン通訳者に苦情を伝えると、
「主催者に言ってください」と言われたのを覚えているので、
やはりこれも、聾唖連盟の責任なのだろう、と思う。
健聴者社会が音声言語偏重であるのと同じように、
ろう者団体では手話偏重なのだ。)



それはわかっているのですが、そのときも、見えづらくしてしまった
スクリーン設定が原因で、こんなに苦労してしまうことがあるのです。

ろう者の場合は、見やすくセッティングした手話通訳と、そのスクリーン
も見やすくしてあるから、大丈夫でした。

ところが、手話がわからない聴覚障害者(難聴者や中途失聴者者)は、
ごく限られた視野から見えるスクリーン字幕を、前の人の頭を何度も
避けながら、一生懸命に文字通訳を観なければ、講演の内容など
わからなくなってしまうのです。
そこへの配慮が全く欠けていたのは、おそらく、手話への配慮、その
チェックにばかり目がいき、字幕利用者への配慮は忘れていたとしか
思えませんでした。

スクリーンには、手話も大変見やすいようになっていましたが、文字通訳
文はかなり下のほうになってしまっていて、前の人の頭がどうしても邪魔
になってしまい、見えづらかったのです。

「これでは、奥のほうへ座っている人までは、字幕はわかりづらかったの
ではないだろうか」

と思う。
字幕の表示位置をスクリーンの上部に変更するとか、字幕専用のスクリーン
を新たに設置するとか、何か工夫をすべきだったと思います。
このフォーラムの主催者、会場セッティングを行った人たちは、この点を
是非とも反省してほしいと思う。



ところで、展示コーナーをまわってみて、気になった商品がありました。

NICT(独立行政法人 情報通信研究機構)の『こえとら』

http://www.nict.go.jp/press/2013/06/12-1.html

http://www2.nict.go.jp/univ-com/plan/applications/koetra/pamphlet.pdf#search='%EF%BC%AE%EF%BC%A9%EF%BC%A3%EF%BC%B4%EF%BC%88%E6%83%85%E5%A0%B1%E9%80%9A%E4%BF%A1%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%A9%9F%E6%A7%8B%EF%BC%89%E3%81%AE%E3%80%8E%E3%81%93%E3%81%88%E3%81%A8%E3%82%89%E3%80%8F'



これは、手話ができなくても、文字と音声コミュニケーションが簡単に
できる装置です。

聴覚障害者が一番悩むことって、何でしょうか?

以前に掲載した記事に

『要約筆記派遣の利用実績にみられる、聴覚障害者の問題点』
〔2012-06-04 19:22〕


という記事がありました。
それによれば、派遣通訳者の利用目的で一番多かったのは、ろう者
と難聴者・中途失聴者とでは違いはあるのですけれども、やはり
どちらも本当は、職場で手話や要約筆記の通訳者を利用できない
ことが、大きな悩みの一つなのではないだろうか。

もともと会社では通訳を利用できないから、その悩み、問題が
利用実績のデータに反映されないだけだろう。

就労前の会社面接にしても、ハローワーク合同面接会では通訳者も
常駐している場合が多い。
ところが、本採用を決めるための会社の面接となると、通訳は利用
できない場合がほとんどです。

なぜだかわかりますか?

そういう会社は、採用後は通訳者が入ることは認めていない、
ということなのです。(※)



(※)
『手話・要約筆記通訳とは何か?』
〔2012-10-26 18:00〕





『健康相談の通訳者派遣を断られる』
〔2011-03-04 18:00〕





もし聴覚障害者が、通訳なしでも、面接段階から

「こうすれば、通訳者なしでも意思疎通が可能です」

という具体的方法のプレゼンが聴覚障害者にできて、企業側もそれに
納得すれば、おそらく採用される可能性は高いと思う。
採用後も、もしかしたら単純労働よりはもう少し良い仕事に就ける
かもしれない。
『こえとら』を使えば、それだけ企業側も安心して仕事を任せられる
可能性があるということだ。


ただ、心配になりそうな点もあります。

一つは、この機器の音声認識力や語彙数は、どの程度なのだろうか、
ということ。
(一度に表示できる文字数が20文字くらいの文章の“言葉”のようだ)

そしてもう一つが、コストが高いということです。
(機器だけで5万円。さらに月額5千円ほどかかるらしい)
聴覚障害者一人で自己負担するには、これは重すぎると思う。

しかしもし、この二つが確実に改善すれば、普及する可能性がありそうな
気がします。

職場では、通訳者どころか、手話や筆談をしてもらうのも、
やはり困難な状況です。
となると、健聴者にとって、こういう便利なもののほうが、
使ってくれる可能性が高いと思う。

聴覚障害者の場合、福祉用補聴器を購入する場合、障害者福祉の
補助金があります。
しかし補聴器よりも、この『こえとら』のほうが、確実に
コミュニケーションが可能になるのではないだろうか、
と思うのです。

感音性難聴障害では、補聴器では限界がある。
しかし『こえとら』ならば、確実なコミュニケーションが可能かも
しれません。

行政側も、今は

「補聴器の購入補助は、仕事で使うのならば、認める」

というケースが増えているそうです。
だったら『こえとら』のようなものに補助金をかけるほうがいいの
かもしれません。
補聴器と『こえとら』のどちらを選ぶのかは、それを使おうとする
聴覚障害者自身が判断するのは勿論ですが、その人に合うもののほう
がいいのは当然だ。
だから後は、その点についての行政の理解があれば、自由選択が可能
になるかもしれない。

私は現在、職場では筆談ボードを使っていますが、健聴者は

「『こえとら』のほうがいい」

と言うかもしれない。
そうなると、会社が積極的に導入してくれる可能性もある。

会社は重度聴覚障害者を雇用すれば、国から助成金をもらっている
わけなのだから、こういったものを配属部署に設置負担できない
はずがない。
人事部に紹介してみる価値はあると思う。
by bunbun6610 | 2013-11-26 19:00 | 情報保障・通訳

ある障害者から見た世界


by bunbun6610