職場内障害者授産施設(障害者雇用) (14) 健常者の不満

職場の皆が帰り出し、誰もいなくなり、
私と上司Fさんの2人きりになったときのことである。


Fさん;「今日は(仕事が)随分遅かったね。どうしたの?」

私;「え? 今日の仕事は、あれで終わりではなかったのですか?」

Fさん;「仕事はたくさんあるんだよ。こっちは、せっかく仕事をつくっているのに」

私;「仕事がまだあるのならば、途中、すぐ言ってくれれば・・・」

Fさん;「それではダメだよ!」

私;「この前の部長命令で、必ず(仕事の進捗状況を)報告連絡
するルールになっているのに、Fさんはさっき

『私に連絡は要りません』

と筆談で伝えてくれましたよね。

『仕事も、もうない』

と」

Fさん;「仕事はありますよ」(と筆談し、色々と列記しだす)



私は「何でこうなるのか」納得できない、と思いつつ、
F上司の話をさらによく聞く(読む)ことにした。

(聴覚障害者の読者もいると思うが、皆さんにも、
こういう経験はないでしょうか?
職場でも筆談でさえ、すぐ「言った、言わない」の論争に
なることが)



Fさん;「Bさんもあなたも、障害者はわがままを言って、仕事をしない」


ここまで書かれた途端

「Fさんの主張は、おかしいな」

と思った。
Fさんの心の中に溜まっていた不満が爆発しているような感じだった。

Fさんは、元上司Aさんのことだけは何も言わない。
Aさんだって障害者だし、どうしようもないほどわがままなのが
Aさんだと思うからだ。
それでも、部長が言ったとおり、Aさんは、ここにいる人全ての
元上司だから、何も文句を言えないのだろう。
それで当てつけに私に言っているのだとわかる。

Bさんについては、脳性マヒという重度身体障害者なのだから、
できることとできないことがあるのは仕方がないと思う。
Fさんが、先天性障害者をバカにしているのだろう。

私は、反論することにした。


私;「ちょっと待って下さい。
今の障害者の働き方を考えたのは、この会社です。
この点について言いたいことがあるのでしたら、
本社人事部に話したらどうでしょうか」

Fさん;(NOのジェスチャーで手を振って)
「いやいや、それはいいよ。
とにかく、今日のようなことは二度とダメだよ。
あなたはもっと仕事が出来る。
だから皆と信頼関係があるんだ」


Fさんの言っていることの、つじつまが合わない。
自分の不満をぶちまけたくて、すりかえて言っているだけのようだ。

なるほど。
こういう、特に2人だけの密約みたいな話は、
どこの会社でも、密室のなかで話したがるものだ。
部長や、他の人に聞かれたくないものだから、皆が帰る時間に
なってから、Fさんは私だけ呼び出したのだ。

健聴者は筆談で話すから、この話は外には絶対に漏れない。
うまい具合に聴覚障害者を操縦できる、というわけなのだろう。
Fさんが、こういった発言をした腹の底を探れば、要するに

「他の障害者(Aさん)ではアテにならないから、キミを頼ってるよ」

ということだ。(Bさんは、すでに本社に異動されていた)


実力に目をつけてもらえるのは光栄だけど、障害者雇用というのは、
このような健常者と同じ考え方では成功しないということが、
現場の健常者にはわかっていなかった。
Fさんは障害者も含めて、部下に指示を出す立場なのだから、
なおさらだ。

これでは、健常者が遣いにくいと思う障害者は、みんなほったらかし
にされるわけだ。
それに、障害者差別問題を棚の上にあげたままで、この問題を
解決できるわけがないだろう。
杓子定規もいいところだ。

障害者も健常者も、同じように働けというのなら、まず健常者の
ほうこそ、障害者差別をやめることだ。
それはF上司一人でできるわけではない。
それは、会社という組織がきちんとやらなければならないのだ。

それからFさんは話を変えて、次のように言った。


Fさん;「私も障害者です」

私;「え? 一体何の障害ですか?
障害者手帳を持っているのですか?
Fさんもここで障害者雇用されて、働いているのですか?」

Fさん;「ぜんそくです」

私;「ぜんそくって、障害ですか?」

Fさん;「・・・」

私;「法律上の障害者としては認定されていない障害者ですか?
D上司もそうらしいですよ」

Fさん;「・・・」


もしも、軽度の障害者ならば

「ひょっとすると、Fさんから見れば重度障害者がうらやましいのかも」

と思った。

というのは、Fさんだけは特に、残業時間が異常なくらい長いらしいのだ。

確かに、Fさんも職場では、差別的扱いを受けているようにも見える。
その不満、ストレスもあって、何もしない障害者が3人もいるのを見て、
とうとう爆発したのかもしれない。
それを言えるのは、私にだけのようだった。
他の人には、腹を割って言えないようだ。

他の障害者、たとえばBさんに言っても無駄だと思っているし、
Aさんは超がつくほどのわがままな、しかもこの部署の元上司だからだ。

この職場で何でも言うことを聞いて動ける障害者は私だけだから、
Fさんにとっては貴重な存在だ。


障害者雇用の不満を言えない健常者は、おそらくどこの会社にも、
たくさんいるのではないだろうか。
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by bunbun6610 | 2013-11-27 19:00 | 就労後の聴覚障害者問題E


ある聴覚障害者から見た世界


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