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ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

今年の24時間テレビを観て

24時間テレビは全然観ないのだが、
たまたま、ある場所に行ったとき、
そこのテレビに映っていたので観た。

どうやら、これはもう、どこの人も観ている、
国民的テレビ番組になっているらしい。

番組に珍しく興味を持ったのは、たまたまその時間に、
ろう学校のろう児たちが出ていたからだ。

ろう学校は現在、「特別支援学校」という名称に
変わっている。
その学校に通う児童の聴力損失の度合いは
さまざまだと思われるが、
その学校の生徒を“ろう児”と呼ぶ場合が多いようだ。

学校を訪問した『嵐』というメンバーの松本潤が、
この学校のろう児たちに、将来の夢を尋ねていた。

よく憶えていないのだが、その答えには例えば

「ダンサーになりたい」

「女優になりたい」

「ろう学校の先生になりたい」

「お蕎麦屋さんになりたい」

などがあったと記憶している。

途端に私は

「耳が聴こえないのに、ダンサーなんて、
どうやってなれるのか?」

と考え込んでしまった。

自分は、世の中の辛酸を嘗(な)め続けてきたから、
その夢を叶えるのはかなり厳しいことがわかる。

「この子はまだ、障害の程度が軽い難聴なのだろうか?」

それとも

「ろう学校の中で育ってきたから、
現実の厳しさを知らないのだろうか」

真相は何だかわからない。

蕎麦屋やろう学校の教師だったら、わかるが・・・。

女優も厳しいが、実例はある。
アメリカのろう者マーリー・マトリンは、
愛は静けさの中に』で、
アカデミー主演女優賞を受賞している。


番組で松本と一緒に何をやるのか、それを松本が
発表したと思うが、驚いてしまった。
タップダンスだというからだ。

タップダンスの指導者も

「聴こえないというハンディがあって、
タップをする踊りは難しい」

というような話をしていた、と思う。
それなのになぜ、タップダンスなのだろうか。
松本には何のハンディもないのに、
ろう児たちにはハンディがあるものを課されている
のは不可解に思う。
これがなぜ「共生社会」のありようなのだろうか。
「強制社会」の間違いなんじゃないだろうか?

もしかすると、アレは番組が勝手に決めて、
学生たちにやらせたのではないだろうか。

世間一般が「聴覚障害児には難しい」と思っていることに、
テレビ史上で挑戦させたかったのかもしれない。

「健聴者と同じことを、努力してできないことはない」

というメッセージのつもりなのだろうか。


確かに、発表されるまで、学生たちもどんなダンスを
やるかまでは、知らなかった様子であった。

もしも、ろう児だったら、ダンスをやるにしても、
別のダンスをやると言ったかもしれない。
最も得意なもので、しかも人々を感動させることができるような、
ハンディのない手話ダンスとか。

もしもアレが見せしめの番組だったら、
怒るのではないだろうか。

そんな疑問も感じたから、あのタップダンスを観ても、
私は全然、感動しなかったのです。

「なぜタップダンスなの?」

タップダンスの最大の魅力は、あの靴音であるはず。
かつては音の素晴らしさを知っていた私には、
それぐらいのことは知っている。
それが私には、あのテレビ番組を観ていたろう者の
耳には聴こえない。

タップの音が魅力である踊りを聴覚障害を持つ
視聴者が観たら、本当に楽しめるだろうか。

番組プロデューサーは、それを考えただろうか。
だから、あれは健聴者中心の番組だと思っている。
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by bunbun6610 | 2013-09-22 18:00 | バリア&バリアフリー