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蒼穹 -そうきゅう-

職場内障害者授産施設 (7)就労後の男性聴覚障害者の悩み

聴覚障害者は耳が聞こえないという障害が
あるだけで、それ以外には何の問題もない、
と捉えられがちです。

これは、就労後の聴覚障害者の悩みとして、
当事者間だけで話し合うときにも、
よく出てくる事例です。
女性の場合は事務職、内勤が多いのか、
あまり聞かれないのかもしれませんが、
男性の場合は時々聞く話です。


私の職場には現在、私を含めて3人の障害者
がいます。
Aさんはワガママなところがあります。
この事情がわからない方が読んでも理解できず、
変な言い方になってしまうのですが、
簡単に言えば要するに、Aさんにはある程度の、
仕事を選ぶ特権があるのです。
それで、Aさんがイヤだという仕事は、
上司は全部私のところに持ってきてしまいます。

それからもう一人、Bさんという脳性マヒ障害者
がいます。
BさんはAさんのようなワガママを言うのとは違い、
これも簡単に言うと要するに、できないことが多い
障害者です。
なので、健常者が「Bさんにはできない」と判断
した仕事は、これも全て私のところに依頼が
きてしまいます。

ただ、以前の記事(※)にも書いているように
本当にできないことは引き受けるけれども、
本人にできるはずだと思う仕事まで

「いいよ、聴覚障害の人にやらせるから」

という感じで、やらせないでいるような状況も
多々あるように思われたのです。


(※)当ブログ

『職場内障害者授産施設 (4)過剰すぎる「特別扱い」』
〔2013-09-05 18:30〕
 





これは疑問でしたし、半年後には私もたまらなくなり、
我慢も限界を超えるようになったので、
会社の人事部や上司に「おかしい」と言いました。


以前に働いていた会社でも、私と別の部署で
働いていたTさんという聴覚障害者が、
昼休み時間などに会ったときに、
悩みを漏らしていました。
Tさんは総務人事部という、重度障害者配属の
典型的な部署で働いていました。
そこも、他の障害者がいました。

他の障害者とは、重度の脳性マヒ障害者
Xさんでした。
ベッドのような大きな電動車椅子に一日中乗って、
会社の中でもそのままパソコン台に向かって
仕事をしていました。
Xさんの仕事は、パソコンのデスクトップに
表示されるデータを目で確認する仕事だけの
ようでした。
身体を動かすことが難しいことは勿論、
手を使うだけの仕事も難しい重度障害者です。

そこで、障害者にやってもらいたい仕事で、
Xさんにも出来ない仕事は、全てTさんに
任されてしまうという。
そのことで「大変だよ」と私にも漏らしていたのだ。

初めのうちはTさんは頑張ってやっていましたが、
そうすると健常者は大喜びして、次第に
「もっともっとやって」と、つまらなくて大変な
仕事ばかり頼まれるようになりました。
それで、もう大変すぎて、イヤになってきた、
というふうに話していました。

聴覚障害者は、身体は何ともない障害者
だということで、他の障害者からは羨まし
がられることもあります。

そういえば、オリンピックも障害者の
オリンピック(パラリンピック)と、
聴覚障害者のオリンピック(デフリンピック)
は別々です。
一緒は確かに、不公平も多くて、難しい。

でも、障害者雇用の場合、障害者の中では、
身体能力に関しては健常者と同等以上という
こともあり、任される仕事は多く、
聴覚障害者は一番大変なのではないかと思う。
健常者がそれだけ、聴覚障害者の身体能力
の高さに期待するからだろう。
聴覚障害者だからといって、障害者雇用に
応募して約3日後に即採用となるのも、
肉体労働に関しては他の障害者と比べて、
そんな有利な条件があるからなのだろう。

マッチングさえ合えば、聴覚障害者を
欲しがっている会社は必ずあると思う。

聴覚障害者は健常者と同等か、
それ以上の働きをしていることは間違いない。

それなのに、なぜ聴覚障害者は貧乏賃金
なのだろうか。
なぜ、他の障害者と同賃金なのだろうか。

こういう疑問を持つようになった聴覚障害者は、
少なくないのではないだろうか。
この言い方は誤解もありそうなので良くないだろうが、
少なくとも仕事の内容に見合う給料ではないのだ。


聴覚障害者として気づく疑問は、これだけでは終わらない。
一体、聴覚障害者って、本当に障害者なのだろうか。
というか、なぜ聴覚障害者もAさんやBさんのような、
他の障害者と同じ待遇になってしまうのだろうか。
「障害者手帳を持っている人だから」ということだけで、
皆そうなってしまうというのだろうか。

変な言い方になってしまうが、AさんもBさんも変な
特別扱いがあるが、聴覚障害者にそんな扱いがある
ことは、他の会社でさえ、聞いたことも見たこともない。

聴覚障害者には、情報・コミュニケーションのバリアを
甘んじて享受し、我慢して働き続けるだけである。
これがおかしい、と疑問に思うのは、聴覚障害者だけ
なのではないだろうか。

しかし、これは本来、聴覚障害者の障害だけに起因する
問題ではなく、社会の側にも原因がある問題なのである。
その問題解決がほったらかしにされ続けているのは、
不公平だと思わざるをえない。
そして、このままでは聴覚障害者は今後も、
この不利な就労条件で働き続けなければならないのだ。


聴覚障害者のYさんも、もう高齢者になったが、
それでも

「この年齢になっても、こんなにきつい
肉体労働をするしかないとは・・・」

と嘆いていました。

聴覚障害者は、よく肉体労働に向いている
とされています。
しかし、肉体労働だと、年齢的な限界も早く
訪れてきます。
60歳以降も働き続けたいと思い、知的労働を
したいと思って転職しようにも、会社はそんな
希望は聞いてくれるほどお人好しではない。
60歳から事務アシスタントやパソコン入力等
の仕事をやりたいと思っても、そのときになって
転職したくても、経験のない人は採ってくれない
のが当たり前。
今の時代は障害者といえども、即戦力を求めて
いるのだから。

仮に運よく転職できたとしても、またすぐ、
肉体労働もあるから、やってくれとか頼まれる。

その繰り返しにすぎなかった。

入社後になって

「面接時の仕事内容の説明とは違う」

「口車に乗せられていたんだな」

と気づく。
転職ももう諦めて、60歳までなら我慢して働き、
そして定年退職し、以後は働かないで生活できる
ようにするつもりでいる。
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by bunbun6610 | 2013-10-10 18:30 | 就労後の聴覚障害者問題E