職場内障害者授産施設 (6)障害者雇用は「見えない牢獄」

 副題;『障害者雇用は健常者が「障害者用につくった、見えない牢獄」』

私の職場には、3人の障害者が障害者雇用で働いています。
Aさん(内臓障害、うつ病)、Bさん(脳性マヒ障害)、
そして私(聴覚障害)です。

仕事の内容は、これまで述べてきたとおり、
障害や病気の内容に応じ、人それぞれです。


『職場内障害者授産施設 (3)うつ病障害者? 病前性格のワガママ障害者?』
〔2013-09-04 18:30〕




『職場内障害者授産施設 (4)過剰すぎる「特別扱い」』
〔2013-09-05 18:30〕




上の記事を読んで、Aさん、Bさんの障害や病気に対する
配慮はあると、読者の皆さんも思うかもしれません。
仕事内容は健常者と違うだけではなく、
障害の種類・程度でも違います。

私は聴覚障害者ですから、通訳はないものの、
仕事を頼まれる場合の筆談ならあります。
あとは、必要に応じて、大事な話だけならば、
それも筆談で行ってくれます。
ですから、情報・コミュニケーションの障害は
ないものとされています。
(本当は、健常者のこの見方は違うのだが)

仕事内容での配慮は全くないと思います。
配慮と言うよりは、障害者差別があるのです。
それは私だけでなく、AさんもBさんも同じでしょう。
職場には女性差別もあり、健常者同士でも
差別はあります。

実はAさんはかつて、この部署で一番上の地位についていた、
元健常者なのです。
その元エリートがなぜ、こうも堕落したのか、私もよくわかりません。
でも、私も転落していったほうの障害者だから、推測はできます。
障害者心理を考える、参考になるものに『セント・オブ・ウーマン』(※)
という映画があります。

(※)
http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id13006/



この映画の主人公フランクは、非常に高い地位に就いていた
元軍人でした。
自分の過失で失明し、退役したようです。
興味深かったのは、彼の荒れっぷりです。
あれだけ荒れるほど、彼が失ったもの、障害が彼に与えた
打撃は大きかったと言えると思います。
(障害者心理「喪失の過程」)

でも、障害はしょうがない。
それよりも彼の心底が本当に渇望してやまなかったものは、
普通の障害者と同じだったと思うのです。
普通の(人には普通にできていた)生活が、
障害者になってしまうと、なかなかできないものに
なってしまうのです。
それが社会のほうにも、原因があるわけです。

その経験のない健常者には、Aさんの障害者心理など
わからないでしょう。
『セント・オブ・ウーマン』の解説でも、ある健常者は
主人公を「気難しい人」と捉えていますが、
そういう理由ではなくて、障害者心理が彼を自殺
しようとするまでに追い込んだのだと思います。
それに気がつかないから、誰も彼の自殺を
止めることはできないと思います。
フランクのような寂しさは、いまだに多くの障害者
の心の中にあるのではないかと思う。
私にもあるし、Aさんとて、例外ではないと思う。


Aさんほどのエリートがなぜ、障害者雇用なのかというと、
障害や病気があるからなのです。
健常者からの理由はそれだけです。

でも決して、Aさんに障害があるから、Aさんのそれまでの
仕事の能力まで失われたわけではありません。
今いる部署の全員が、実は役員も部長も含めて、
Aさんの後輩なのです。
だから、指導や助言などは出来ると思う。
となると、社会が、障害者に“障害”というレッテルを
貼ったことが問題なのだろうと思います。
それは、本人が持つ「障害」とは意味が違う。
社会が与えた「差別」が原因なのです。
それはAさんの心理に、少なからず影響を与えたに
違いない。

今でも、Aさんは会社の中で差別的状況があると感じると、
逃げるように他の人から離れていきます。
それは、差別を受けた者だけが直感でわかることです。
だが、それも健常者にはわからない。
健常者と障害者は、身体だけではなく心も違ってくる。

皆が集まって話をするたびに、逃げるAさんの姿を見るたび

「ああ、今日もまた逃げていっているな」

と思う。

聞こえない私には、何の話かは聞こえないので
あまり気にしないが、聞こえるAさんは昔の自分を
思い出すようで、気になってしまうようだ。
しかし、その輪の中には入れなくなった。
障害や病気がなかったならば、Aさんは今頃
役員として、そこの中心にいたことだろう。
ところが、Aさんは転落し、後輩たちに次々と
追い越されてしまった。
周りの健常者の誰もが、Aさんを特別扱いするのは、
そういう事情もあるからだ。

世の中には、長嶋茂雄終身名誉監督という珍しい
障害者がいます。
長嶋自身、また社会の誰も、長嶋を障害者だとは
認めていないかもしれません。
彼の過去の栄光を、誰も忘れてはいません。

だが、過去の栄光があるから、長嶋は障害者になっても、
特別な存在なのかもしれません。

あの有名な作曲家・佐村河内守だって、誰も聴覚障害者
だと見ていないでしょう。
能力があれば、その能力が社会で高く評価されたならば、
その人が障害者だということはどうでもよくなる。

サラリーマンの世界は違うようだが。

だからといってなのか、障害児教育までも、そのように
なることを障害児たちに強要してきたようだ。
昔の聴覚障害児教育でも、口話教育(同時に手話弾圧)
があったはずだ。
障害者が社会にとけ込むこととは、一方的に、
健常者へ合わせるように努力すべきだとされてきた。
社会の責任・負担でもあるはずが、それを障害者や
家族に全面的に押し付けてきたのだ。
だが、それでは障害者問題は永久に克服できないのだ。
小山内さんの本を読んでも、それが十分わかったと思う。


ごくわずかな確率でしか成功しない、突出した能力を持つ
障害児を育成しようとするあまり、落ちこぼれた多くの
障害児は施設に押し込めてしまう。
あるいは家族にだけ押し付けて、社会から隠してきた。
当然、ごく稀に成功した、健常者が優秀と評価する
障害者だけが世の中に出て、注目を浴びる。
反対に障害者の大部分を占める、そうでない障害者は
隠居生活になってしまう。
その人たちが長生きし、幸せな人生だったといったような話を、
誰が聞いたことがあるだろうか。

障害者問題は見えなかった。
いや、健常者が隠してきたから、見えないのが当然だった。

職場内障害者授産施設、すなわち障害者雇用の実態は、
健常者には決して見えないだろう。
その実態は、障害者を見えない檻の中に閉じ込めているに等しい。

健常者は、きっと

「檻だって?
会社の中に、そんなものあるはずがあるものか。
証拠もないのに、そんな被害妄想みたいなことを言うな」

と言うだろう。
そんな“見えない障壁”の意味がわからぬ者に
言っても無駄だ。


時々、健常者だけでなく、軽・中度難聴者までもが、
障害者に対して、無理解なことを言う。
軽・中度難聴者には、障害者手帳が取得できなくて、
就職することも困難な人たちがたくさんいるからだろう。

私の正直な感想も交えて書くが。


「障害者って、いいよね。
障害年金はもらえるし、障害者福祉制度もいろいろ
あるし、会社でも特別扱いされているんだから。
健常者も障害者手帳のない難聴者も、
今はみんな大変だよ」


「障害者って、まるで“箱入り娘・息子”だな。
困ったことは何でもしてくれて。
会社に勤めていても、あんな苦労知らずとは」


「あんな眠そうな仕事をしているだけで健常者と同じ
賃金だなんて。
障害者って、給料ドロボーじゃないのか?」


「法律のおかげで雇われた障害者は、まるで、
VIP障害者だな」


「これじゃあ、障害者天国だな。
『ダメ障害者天国』と言ったほうがいいだろう。
政府はあんな障害者雇用なんか進めて、
日本の会社をダメにする気か」


健常者の怒りはもっともだ。
事実なんだから、正直に言って結構だ。
障害者に向けて、もっと言ってもいいくらいだろう。
失礼なことではない。
本当に失礼なのは、ヘンな特別扱いをして遠慮するほうだ。
ただし、批判的な目を障害者にばかり向けるのは
おかしいのではないか、と思う。

小山内さん流にこういってみたら、どう答えるだろうか?

「じゃあ、あなたもそこに入りたいですか?」


実態を見たことがあるならば、おそらく、誰も入りたくは
ないでしょう。
私は今まで、生き生きと働いている障害者を見たことがない。
仕事が出来る、優れた障害者さえ、ほとんど見たことがない。
私自身

「あなた以上に出来る障害者を、今まで見たことがない」

と言われて来たのだから、自分の感じていることは
客観的な見解だろう。

障害者への批判も大いに結構なことだと思う。

でも、それだけでなく、なぜこうなるのかを、考えてほしい。
障害者がやる気がないのは、本当に彼らだけに
責任があるからだろうか。
会社の障害者雇用こそが、問題の根本原因なのだから。


私が思うのは、日本の障害者雇用促進法は失敗だ。

最近のEテレ『バリバラ』でも

『作業所 工賃アップ大作戦! (1)、(2)』
(9月6日(金)、13日(金)放送)

で、外部のプロの観察で、作業員(障害者)のやる気が薄いのは、
作業所のスタッフにも責任があることが
自覚されるようになってきました。

何でもそうだろうけど、どうせ失敗するからとやらせないでいたら、
誰も成長しないでしょう。

会社の障害者雇用だって、まさにそうなのだと思います。
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by bunbun6610 | 2013-10-09 18:30 | 就労後の聴覚障害者問題E


ある聴覚障害者から見た世界


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