蚊帳の外の難聴者

電車の中で、大学生風の若い男三人と女一人が、
私の前に立っていた。

よく見ると、一人の男は補聴器を装用している。

ろう者か、難聴者か…?

どちらなのかは、すぐにわかった。
難聴者だと。

彼は耳の周りの髪の毛を伸ばしており、
補聴器を隠していた。

友人たちは彼の横で、聴こえる者同士で、
楽しそうに喋っている。

手話は全く使われていない。
おそらく、この難聴者も手話を
全く知らないのだろう。

彼は友人たちの会話の内容が
聞き取れていない様子で、
蚊帳の外だった。
それなのに心がどこか、
落ちつきがない様子だった。

電車を降りると、彼は友人と別れを告げた。
その時だけが、彼もコミュニケーションをした、
唯一の場面だった。

寂しそうだった。
難聴者特有の、暗い表情で…。

こんなことに毎日、
耐えてゆかなければならないなんて…。

だったら、最初から独りのほうが
いいのかもしれない。

彼の青春とは一体、何なのだろうか。


彼を見ていて、私も昔から、
ずっとそうだったのを思い出した。

彼は生涯、孤独のままに
生きていくだろうか。
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by bunbun6610 | 2013-07-25 18:30 | 難聴・中途失聴

ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610