障害者差別解消法案 -その疑問点、問題点

内閣府(第183回通常国会)発表の成立法案

 http://www.cao.go.jp/houan/183/index.html


まずPDFファイル『概要』を見ると

 法律案名; 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案

差別を解消するための措置として

 ①差別的取扱いの禁止 

 ②合理的配慮の不提供の禁止

がある。


①は民間企業も法的義務として守らなければならない
とされているが、②については民間企業は努力義務まで
となっている。

これって、おかしいですね。

まだ国連・障害者権利条約の主旨を理解した措置とは言えない。
これでは国連・障害者権利条約の批准はまだまだ先延ばし
でもいい、ということだろう。

差別を解消するための措置には

 ①紛争解決・相談

 ②地域における連携

 ③啓発活動

 ④情報収集等

がある。



聴覚障害者の場合は、直接差別よりも間接差別を
日常的に受けているほうがずっと多く、
厄介な問題だと思う。

この解決には、健常者に間接差別があるという事実を
認めさせるとともに、合理的配慮を速やかに実施して
もらうことが必要不可欠だと思う。

この二つは必ず一体でなければならない。
どちらか一方だけでは、真の解決にはならないと思う。

次にPDFファイル『要綱』には、合理的配慮の実施に
ついての努力義務が書いてあります。
これが非常に重要なのですが、民間事業者は守らなくても
罰則なき、努力義務規定です。



「事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に
社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明が
あった場合において
、その実施に伴う負担が過重でない
ときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、
障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、
社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な
配慮をするように努めなければならないものとすること。」




ここに書いてある(下線部分)ように、障害者差別が
ハッキリと職場に横行していても、まず障害者がそれを
指摘しなければならない。

つまり、当の障害者本人がこれを知らなければ、
改善されない状況もかなり続くというわけだ。


重要なハードルはもう一つある。
「その実施に伴う負担が過重でないときは」
という文言のレベル解釈である。
どこまでが障害者の我慢の限界か、
ということなのだろうか。
その限界の判断は、なかなか難しい。

やはりこれまで通りに、あくまでもその企業の裁量で
決める、というものになるのだろうか。
これでは変わらない恐れが強い。

さまざまな解消措置が書いてあるが、これをいちいち、
段階的に強い要請へと持っていかないと変わらない
可能性があるが、障害者は各部署に分散配置されている
ケースが多く、たった一人で会社に対して、
この問題に挑まなければならない場合がほとんどである。

これはまさに、当ブログにその実態を暴露している通り
である。

会社のする話し合いと言うのは、密室の中で2対1、
あるいは3対1で話し合いになり、外部からの
中立者や通訳者は社内に決して入れさせない。

ハッキリと言ってしまえば人事部主導による、
障害者差別問題のもみ消し工作なのであるが、
この強大な会社の圧力に対しては、障害者は
一体どう対抗すればよいのだろうか。



【参考記事】
当ブログ
『合理的配慮の実施が「可能な限り」では…』
〔2011-10-24 20:30〕




【参考情報】

『国連・障害者の権利条約
-経緯、内容、意義およびわが国にとっての課題-
       法政大学現代福祉学部 教授松井亮輔』

http://www8.cao.go.jp/shougai/kou-kei/h21shukan/jyokyo/pdf/2/kouenh2-2.pdf


世界各国の批准状況は、以下の情報でわかります。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E6%A8%A9%E5%88%A9%E6%9D%A1%E7%B4%84



ADA法(障害をもつアメリカ人法)(※)を持っているアメリカも、未批准国です。

(※)http://members.jcom.home.ne.jp/wheel-net/america.htm





合理的配慮は企業への負担になるだけかというと、そうではない。
本来の目的にはそれだけではなく、当ブログ・カテゴリー
『障害者の経済学』でも述べているように、
障害者社会参加も含むようになり、社会全体の経済政策にもなる。



『障害者離職状況 報告書 <概要版>』
(平成23年3月 埼玉県産業労働部就業支援課)

http://www.pref.saitama.lg.jp/uploaded/attachment/450172.pdf



『身体障害者、知的障害者及び
精神障害者就業実態調査の調査結果について』
(平成20年1月18日 厚生労働省発表)

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/01/dl/h0118-2a.pdf


これらの資料が示しているように、
障害者の就労、職場定着が進まないのは、
企業の合理的配慮がまだまだ欠けているからと
思われます。

障害者の平等参加、就労促進には、合理的配慮は
必要不可欠であり、それがなかったら日本は、
国連・障害者権利条約の批准もできないと思われます。

たとえ最後の批准国になるとしても、
合理的配慮は譲れないと思います。


平成24年10月1日には、障害者虐待防止法が施行されました。
使用者による障害者虐待を防止するための法律です。

障害者虐待の事実が存在している証拠です。


職場内の人的環境が非常に悪いケースもある
ブラック企業へ、やむなく就労するケースも
少なくなく、そこで職場内での“変型いじめ”が
内在しているのではないか、という推測も可能だと思う。

私の体験で話すと、ブラック企業の典型的な例は、
居酒屋、レストランなどといった飲食業界に多い。



〔参考記事〕当ブログ・カテゴリー
『ブラック企業と障害者雇用』



下記のように、自殺した例もニュースになっている。



=================================



http://mainichi.jp/opinion/news/20120804k0000m070191000c.html


社説:障害者雇用 「合理的配慮」を職場に

毎日新聞 2012年08月04日 02時30分


障害者雇用が変わる。
厚生労働省の労働政策審議会は民間企業の法定雇用率
を現在の1.8%から2.0%へ引き上げる案を
答申した。
障害者雇用を義務づけられる企業も「従業員56人以上」
から「50人以上」となり、9000社以上増える。

国や地方自治体などの法定雇用率は2.1%から2.3%へ、
教育委員会は2.0%から2.2%となる。

 また、雇用義務の対象を身体障害者と知的障害者
だけでなく精神障害者を加えること、国連障害者権利条約
で定められた職場の「合理的配慮」を企業などに義務
づけることを同省検討会は提案し、来年の通常国会に
改正法案が提出される予定だ。

 企業にとっては厳しい内容に思えるかもしれないが、
リーマン・ショック以前から障害者雇用は少しずつ
ではあるが着実に伸びている。
特に知的障害者や精神障害者の伸びが著しく、
大企業が障害特性に合った労働内容の特例子会社を
作って受け入れるケースが目立つ。
就労を柱にした障害者自立支援法の影響も大きく、
精神障害者の求職者数は急増している。
今回の制度改革は当然だ。
 
 ただ、障害特性を理解しないまま厳しい指導を
繰り返したり、人間関係の調整にまで配慮が行き
届かないためにストレスがかかり離職するケースが
多いことも指摘しなければならない。

障害者雇用に熱心な会社で働いていた発達障害者が
ストレスから自殺し、訴訟になった例もある。
雇用率だけでなく、定着率や「質」が一層問われる
ことになるだろう。

 「合理的配慮」とは企業の過重負担にならない
範囲で個々の障害特性に合った職場環境や支援を
提供することだ。
独特なコミュニケーション、ものごとの順序や
特定のものへのこだわり、感覚過敏などがある
発達障害に配慮した環境や支援技術を備えた職場
はまだまだ少ない。
合理的配慮は単に負担ではなく、障害のある従業員
の労働能力を十分に引き出すためにこそ必要なので
ある。

 現在は雇用率未達成企業が国に支払う納付金が、
達成企業への報奨金や補助金の原資にされている。
処遇の難しい障害者を積極的に受け入れている企業
への補助金などはもっと手厚くした方がいい。
納付金制度の拡充だけでなく、一般財源からの
支出も考えてはどうか。
福祉サービスを受けて生活している障害者が就労
すれば、福祉側の負担がその分だけ軽くなる。

 これから発達障害や精神障害の従業員は確実に
増えていくことを考えると、ハローワークや
就労・生活支援センターの援助機能をもっと高め
なければいけない。
就労移行事業所など福祉分野の資源も動員して
働く障害者の支援に乗り出すべきだ。




=================================

[PR]

by bunbun6610 | 2013-05-03 18:00 | 国連・障害者権利条約
line

ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610
line