みんなちがって、みんないい

『だいじょうぶ3組』(乙武洋匡/著)

http://www.amazon.co.jp/%E3%81%A0%E3%81%84%E3%81%98%E3%82%87%E3%81%86%E3%81%B63%E7%B5%84-%E4%B9%99%E6%AD%A6-%E6%B4%8B%E5%8C%A1/dp/4062162997




「ひさしぶりに二十七名全員が顔をそろえた五年三組。
二時間目の授業は、道徳だった。
白石が子どもたちに配る紙には、一篇の詩が書かれていた。

『わたしと……小鳥と……すずと? へんな題名!』

配られたプリントを手にした陽介が、思わず素直な感想をもらす。

『これはね、金子みすゞさんという人が書いた詩なんだけど、
まずは最初にみんなで声に出して読んでみようか』

赤尾の合図で、子どもたちがタイミングを合わせて口を開く。


わたしが両手をひろげても、
お空はちっともとべないが、
とべる小鳥はわたしのように、
地面をはやくは走れない。

わたしがからだをゆすっても、
きれいな音はでないけど、
あの鳴るすずはわたしのように
たくさんなうたは知らないよ。

すずと、小鳥と、それからわたし、
みんなちがって、みんないい。


子どもたちが最後まで読み終えると、赤尾はすばやく
つぎの指示を出した。

『じゃあ、今度はそれぞれ声を出さずに読んでみよう。
そして、読み終わったら、この詩のなかで作者がいちばん
伝えたいことが書かれていると思う一行に、線を引いてごらん』

見てまわると、ほとんどの子が同じところに鉛筆で印をつけている。

『そうだね。
先生も、金子みすゞさんは、最後の
『みんなちがって、みんないい』
ということを伝えたかったんじゃないかと思う。
じゃあさ、みずゞさんは、『何が』ちがっていてもいいよ、
と言っているのかな?』

赤尾の問いかけに、慎吾が『顔!』と答えると、
『そんなのあたりまえだろ!』とすかざず陽介からツッコミが入る。
ようやく復活した掛け合いに、クラスがひさしぶりにわいた。
ひとしきり笑いがおさまった頃、京子があらためて手をあげた。

『みんなの……いいところ?』

『うん。たしかにみんなのいいところ、得意なところは
ちがっていていい。
でも、それだけかな。
もう一度、この詩をよく読んで、みずゞさんが伝えたかったことを
考えてみよう』

しばらくすると、分析力にすぐれた公彦の手があがった。

『できないこと、苦手なこと?』

公彦の言うとおり、この詩をじっくりと読みとっていくと、
『空をとべない』
『地面をはやく走れない』
『きれいな音がでない』
『たくさんのうたは知らない』
と、そこには“できないこと”ばかりがならんでいることに気づく。

『みんなには、それぞれ、『できること、できないこと』、
『得意なこと、不得意なこと』がある。
それはあたりまえのことで、そんなことで友達を
うらやましがったり、自分にがっかりする必要なんてない。
自分には、自分なりのよさがある』

『先生、それ“個性”っていうんだよね』

陽介の言葉に、赤尾が深くうなずく。」



===============================





赤尾先生(乙武氏)は、
このように言っています。

けれども実際には、
自分の持っている障害を、
個性と捉えるのか、そうではないのかは、
その人により、違います。

障害を個性と捉える障害者には他にも、
たとえばろう者(Deaf)の人にいたりします。(※1)


(※1)詳細は、当ブログ

『米国・ギャローデット大学でのろう運動』
〔2013-03-05 18:00〕
『ろうは文化 障害ではない』
参照。


「ギャローデット大学の巨漢でカナダ出身のフットボール選手、
ジョン・リムニディスは、映画『愛は静けさの中に』で端役を
演じたこともあるろう者だが、こう言う。

『耳が聴こえないことは障害ではありません。
むしろ文化です。
手話は別の言語です。
私は、耳が聴こえないことを誇りに思っています。
もし万が一耳が聴こえるようになる薬があっても、
決して飲まないでしょうね。
決して、決してね。
死ぬまで絶対飲みませんよ』」



ろう者は耳が聴こえないことを、別に障害だとは思っていません。
彼らは自分たちのことを

「『ろう者』(Deaf)という種族」

なのだと思っているようです。

ただし聴覚障害者だからといって、
全ての聴覚障害者がろう者(Deaf)なのではなく、
難聴者や中途失聴者もいます。

その人たちのなかには、聴覚障害を個性と捉えることができず、
障害は障害以外の何ものでもない、と考える人もいます。
私もそうなのですから、こういうブログを書いているのです。

だから

「全ての聴覚障害者がこのように考えている」

と思い込む読者がいるとすれば、
それは大きな間違いです。

ある健聴者からは

「『聴覚障害者は…』と言って書くのが良くない。
『自分は…』と書け」

という批判を受けました。

しかし「自分は…」という言葉で書いて、
聴覚障害者の立場の意志が伝わるとは
思えませんでした。
だいいち、私だって聴覚障害者なのです。


本当のことを言うと、健聴者たちが勝手につくった
「聴覚障害者」という用語は、
そこに包括されてしまっている、
さまざまな耳の障害を持つ人たちの個性をも、
そして本当に必要とされる合理的配慮さえも、
見失う用語なのだと思います。(※2)


(※2)詳細は当ブログ

『聴覚障害の用語定義について』
〔2011-03-30 22:03〕

『聴覚障害者』の定義に関する共同声明(1989年)』
〔2011-03-31 23:19〕
参照。




一方、「全聾の作曲家」と言われる佐村河内守氏は、
自著にこう述べています。(※3)


(※3)『交響曲第一番』(佐村河内守/著 講談社/発行所)

「私には夢があります。
もし何らかの奇跡が起こり、聴力が甦り、
発作も消えうせたときには、迷わず筆を折り、
作曲家以外の道を選ぶことでしょう。

裏を返すならこの淡い夢は、愛する音楽と
引きかえにできるほど、いまの精神的・肉体的苦痛が
耐えがたいことを表しているのかもしれません。」



この対比には、驚く人もいるかもしれません。

耳が聴こえないということだけではありませんが、
聴力が甦ることを夢と思っている彼は、
自分の宿命に誇りを持つことができているでしょうか。


中途失聴者になってもあえて手話を学ばず、
人工内耳装用を受け、長いリハビリに努力する
聴覚障害者もいます。


聴覚障害者=ろう者 とは限りません。

聴覚障害者の言語=手話 とは限りません。

聴覚障害=個性 とは限りません。


自分の個性は、その人自身が決めるものだと思う。
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by bunbun6610 | 2013-05-26 18:30 | だいじょうぶ3組


ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610

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