遠足(1)

『だいじょうぶ3組』(乙武洋匡/著)

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「(青柳先生)『ええ、紺野先生のおっしゃることはわかります。
たしかに、『去年までと同じ』であることにこだわる必要はありません。
でも、変えるからにはそれなりの理由が必要なんです。
いつもは六号路なのに、今年だけ難易度の低い一号路を選ぶ理由――』

食いさがる二組の担任を、学年主任の青柳はあくまでも
論理的にはねのける。
だが、それでも紺野はあきらめなかった。

『理由はあります。それは――』

そこまで言うと、ななめ向かいにすわる赤尾に
ちらりと目をやった。

『赤尾先生です。
例年どおりの六号路では、どうしても車いすの赤尾先生は
登山することができません。
だけど、傾斜もゆるやかで、舗装されている部分の多い
一号路なら、赤尾先生の車いすでもなんとか行けると
思うんです』

『それはわたしも気になっていました。
六号路では、おそらく赤尾先生はむずかしいだろうなと。
だけど紺野先生、遠足という行事はいったいだれのための
ものですか。
主役は子どもたちでしょう。
教師というのは、あくまでもそのサポート役だと思うんです。
そのサポート役である教師の都合によって子どもたちの
ルートが変えられるなんて、本末転倒だとは思いませんか』

そのとおりかもしれない、と赤尾は思った。

子どもたちといっしょに遠足に行きたい――その思いは、
赤尾の胸にも強くある。
だが、青柳の言うとおり、優先されるべきは自分の
思いなどではなく、子どもたちの思い。
そう考えれば、自分は遠足に行くべきではないのかも
しれなかった。

『いずれにしても、この問題はわたしたちだけで
結論を出せることではないように思います。
来週にでも校長先生にお時間を取っていただいて、
あらためて相談しましょう』」

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by bunbun6610 | 2013-05-11 18:00 | だいじょうぶ3組
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ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610
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