子どもたちに「気づき」を育むこと

 『だいじょうぶ3組』(乙武洋匡/著)

http://www.amazon.co.jp/%E3%81%A0%E3%81%84%E3%81%98%E3%82%87%E3%81%86%E3%81%B63%E7%B5%84-%E4%B9%99%E6%AD%A6-%E6%B4%8B%E5%8C%A1/dp/4062162997


==============================


「午後五時。
窓から射しこむ夕日に、二十八台の机がオレンジ色に
染められている。
数時間前にはあんなにもにぎやかだった教室に、
いまは赤尾と白石の声だけが響いている。

『あれはマズかったなあ』

赤尾はたしなめるような口調で、今日あった出来事を
振りかえった。
給食の時間、子どもたちから赤尾の食べる姿に拍手を
送った直後、白石は赤尾の席までそっと近づいて
牛乳キャップを開けると、何事もなかったかのように
また自分の席へもどっていった。

『え、マズかった? だって、むかしから――』

爪のない赤尾には、どうしたって牛乳びんのキャップは
開けられない。
小学生のときから、同じ班で給食を食べるときには、
いつも白石が赤尾のキャップを開けていた。

『もちろん、友達としてならそれでOK。
というか、感謝してるよ。
でも、いまは介助員という立場だろ』

『ああ、そういうことか』

勘のいい白石は、赤尾が何を言いたいのかをすぐに察した。

『子どもたちが手伝えないようなことは、ガンガン頼む。
でも、牛乳キャップを開けるなんて小学五年生だってできるだろ。
せっかく担任に手足がないんだ。
なるべく子どもたちに手伝わせようぜ。
そういう積み重ねが、だれかが困ってたら助けてやる、
そんな心情を育てていくと思うんだ』

軽く目を閉じながら話を聞いていた白石は、
『ふう』とあきらめたように息を吐きだした。

『慎ちゃん、変わってないな』

『何が?』

『始業式の翌日、学年主任に言われただろ。
子どもたちに『手伝ってほしい』なんて、何事だって。
なのに、慎ちゃん、クラスの子どもたちにも、
『昨日の始業式でも言ったけど、先生にはできないことが
いっぱいある。
そんなときは、みんな手伝ってくれ』って』

『そんなかんたんに自分の考えは変えられないだろ』

『まあ、そうなんだけどさ。
そうなんだけど……なかなかできないよ。
面と向かって、『わたし、認めてませんから』とまで
言われた直後に』

赤尾は、

『ワタシ、認めてませんから』

と、やけに嫌味っぽい青柳の口調をまねてみた。
思いのほか似ていて、つい白石も吹きだしてしまった。

『だからさ、慎ちゃん、変わっていないなと思って。
自分がこうだと思ったことは、ぜったいに曲げない。
むかしからね』

『それがまちがってたりもするんだけどな』」


==============================



このところを読んでいたら、私は電車のシルバーシートの
ことを思い出しました。
あそこに若者が座っていて、お年寄りや怪我をしている人が
目の前で立っているときもあります。
さりげなく座席を譲る方も勿論いますが、そうでない方もいます。

何も障害者に対してだけのことではないと思うのです。
困っている人を見かけたら、助けてあげるとかは。
それは、学校で先生が道徳の時間とかにだけ教えて、
覚えさせるわけではないでしょう。
学校生活、また社会生活のなかで、
自然に身につけていくのではないでしょうか。

それに、こういう気持ちがあれば、
聴覚障害者問題だってこんなに深刻には
ならなかったように思うのです。
[PR]
by bunbun6610 | 2013-03-29 18:00 | だいじょうぶ3組

ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610