学級会を桜の下で

 『だいじょうぶ3組』(乙武洋匡/著)

http://www.amazon.co.jp/%E3%81%A0%E3%81%84%E3%81%98%E3%82%87%E3%81%86%E3%81%B63%E7%B5%84-%E4%B9%99%E6%AD%A6-%E6%B4%8B%E5%8C%A1/dp/4062162997


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「『いったい、あれは何のつもりですか?』

一日目をぶじに終え、職員室でぐったりしていた赤尾の耳に、
あきらかに怒気をふくんだ声が突きささる。
青柳だった。

『あれ、と言うと……』

『二時間目です。何か桜の下でやっていらしたでしょう』

『ああ、花見です。花見というか、桜の下での学級会。
クラス目標を決めたんです』

屈託なく答える赤尾に、青柳の表情はますます
険しさを増していく。

『それは教室ではなく、校庭でやる必要があったんですか。
学級会を桜の下でやることに、先生はどんな教育的意義が
あるとお考えに?』

『教育的、意義ですか。とくにそこまでは……。
ただ外を見ていたら桜がきれいだったんで、
教室でやるより、あの桜の下でやったほうが気持ちいい
だろうなあと』

あっけらかんと答える赤尾に、学年主任の青柳は
よりいっそう語気を強めた。

『そうやって勝手なことされると困るんですよ。
一組、二組はやっていないのに、三組だけが桜の下で
学級会なんて。
基本的に、学年というものは足なみをそろえて進んで
いかないと具合が悪いんです』

『具合が、悪い?』

『そう、学年でバラバラのことをやっていると、
すぐに保護者から『なぜあのクラスではそうやって、
うちのクラスではやらないのですか』などと問い合わせが
来てしまうんです。
そうした声に対応するのも、学年主任であるわたしの
仕事になってくるんですよ』

ここで、赤尾はとっておきの返答を取りだした。

『ああ、すみません。
でも、校長先生はOKだとおっしゃっていましたよ』

ふだんは青白い顔をしている学年主任の顔が、
みるみる紅潮していくのがわかる。

『とにかく、あまり勝手なことはなさらないでください。
フツーに考えてわかるでしょう。
お花見をしながら学級会だなんて』

靴音を響かせて職員室を出ていく青柳のうしろ姿を
見送ると、赤尾はとなりにいた白石と目くばせをし、
にやっと笑った。

『あはは。“フツー”はしないってさ』

『うん、“フツー”はね』」



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by bunbun6610 | 2013-03-28 18:30 | だいじょうぶ3組

ある聴覚障害者から見た世界


by bunbun6610